第11話 新しい家族

「うー、寒い、寒い」

多江が体を丸くして肩を震わせながら玄関に入ってきた。

多江の頭と肩には白い雪がのっかっている。


廊下をうるさくドタバタと多江がいる玄関に向かって走ってくる

足音は三奈子と音葉だ。


「外は粉雪が舞ってて、冷えるわの」

「もう、おばあちゃん、出し汁作ってる途中でどこに行ってたのよ」

「ごめん、ごめん。それで、三奈ちゃんできたかの?」

「んー、一応ね。でも、途中でなんかよくわかんなくなった」

「そうかい。ありがとね」

「早くー、おばあちゃん、年越しそばたべようよ。音はもうお腹

ペコペコ」

「はいはい。わかったから、音ちゃん、あんまり引っ張らんといてくれるかの」

「あれ? ねぇ、おばあちゃんのお腹、なんか膨れてない?」

「あ、ほんとだ」

キョトンとした目で三奈子と音葉が覗き込んでいる。

「あ、その前に 三奈ちゃん、先にお湯を沸かしてくれる?」

「え?」

「音ちゃんはお風呂場に行って、たらいとバスタオルとタオルも数枚 持って

きてくれるかい」

「いいけど、なんで?」

「今日は新しい家族が増えたさ。早く、お風呂に入れてあげんと可哀想さ」

多江は半纏はんてんを少し開けて、その内側に抱きかかえているかご

三奈子と音葉に見せる。

「うわあああ…赤ちゃんだあ…」


だけど、赤子は衰弱していて青ざめた顔で眠っている。


「うん。わかった」

「お部屋も暖めとくね」

「ありがとうね 三奈ちゃん、音ちゃん」

三奈子と音葉はまた慌ただしく走って行った。


「もう、大丈夫さ。あったかいお風呂に入ろうね」

そう言って多江はゆっくりと玄関を上がっていく。



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