第8話 眠り

母もまた悩んだのだろう……。


誰にも言えず、一人で悩み、相談する相手にさえ産むことを拒絶され、

病院へも行けず、それでも私は母の胎内でどんどん大きく成長していた。


だから、隠れて産むしかなかったのだ。


もしも、母が中絶していたなら、私はこの世に出てくることもなかった。


早かれ遅かれ私は死ぬ運命にあるーー。


「それ手作りか」

低い声が聞こえてきた。

「母心でも芽生えたか」

雑音と似た声だ。多分、同じ声の持ち主だろう。

「ああ…別に。家庭科の授業、暇だったからね。作ってみただけよ」

「ふーん」

愛想のない冷めた口調で話す声の主が私の父となる人だろうか。


父は一度も私を抱くことはなかった――ーー。


「じゃ、いってきます」


私が寝かされたかごは母の手によって持ち上げられた。


「ああ…」


不愛想な低い声がした後、『パタン―ー』と、何かが閉まる音が聞こえた。


どこかへ向かっているみたいだ。どこへ行くのだろうか……。


揺れるかごと温まった体は、ほどよく私を睡りの渦へと誘い込んでいった。


今日はなんだか疲れたみたいだ。


少し眠ろうーーー。


私はゆっくりと瞼を閉じる――ーー。




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