第9話 人間の子供

 どうも、小さいおじさんです。

 今日は人間の子供に私がどのように見えているのか確認に来ています。

 というのも、前にも説明しましたが私たち妖精の姿や形はその土地の人間の想像によって決まるのですが、いつからか私の姿は紺のスーツに人間の事に詳しい仲間が言うには四角いふちのメガネに髪型は波○ヘアというものらしいです。

 果たして我々の事をよく知らない子供にも私の姿は同じように見えているのか確かめてみようと思います。


 まずは赤ん坊です。

 早速、私は近場の赤ん坊がいる家に忍込み赤ん坊の前に出てみました。

 すると、私の姿を見た赤ん坊はじっと私の事を見つめてきたのですが反応はなくいまいちよくわかりませんでした。

 仕方なく私は渾身の踊りを赤ん坊に披露する事にしてみました。

「よっ!はっ!ほいっ!」

 すると、赤ん坊はハッキリ見えているようで「キャッ!キャッ!」笑って喜んびました。

 その笑顔に気を良くした私は更に気合を入れて踊り続けました。

「ふ~っ」

 私とした事が赤ん坊があまりに喜ぶものだから調子に乗り目的も忘れて長い事踊り続けてしまいました。


 次は幼児です。

 人間の事に詳しい仲間が言うには昼間の人間の幼い子供は好奇心旺盛で私たちの姿を見ると追いかけ回されたりして危険なんだとか。

 私は幼児たちが集う幼稚園という施設に忍込み砂場で遊ぶ子供たちに近づいてみました。

 すると砂場で遊んでた子供の一人が「あ~!」と私を見つけ叫びました。

 その子供はすぐに私を捕まえようと駆け足で私に近づいてきて手を伸ばしてきました。

「ほっ!」

 ですが、私はその手を華麗に躱し子供から離れました。

 仲間は危険と言っていましたがこんな子供に捕まるほどドジではありません。

 なんてドヤ顔をしているとなんという事でしょう。

 私はいつの間にか数人の子供たちに囲まれてしまいました。

「ひっ!」

 私は悲鳴を上げながら私を捕まえようとする子供たちから地べたを這いずり回りながら逃げ続けました。

「はぁはぁはぁ」

 最後には泥だらけになりながらなんとかその場を逃げ出しました。

 やはり仲間の忠告は素直に聞くものです。


 次は小学生です。

 先ほどの幼児たちの事もあるのでここは慎重に行動します。

 公園で花壇の陰に隠れながら危険はないかと遊具で遊ぶ子供たちを観察していました。

 しかし、すぐに背後に気配を感じ慌てて振り返ると。

「わ~!」

 なんと一人の少女がキラキラした目で私を見つめていました。

「あなたはだーれ?何してるの?お名前は?」

「……あっ、いや」

 いきなりの質問攻めに私がたじろぐと少女は私に向かって手を伸ばしてきました。

 そこで、また先ほどの幼児たちの事を思い出した私は脇目も振らず一目散に逃げました。


 私がどのように見えているのか確認する暇もありませんでした。

 やはり人間の子供は危険な生き物です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る