第2話 ダンジョン挑戦は、自己責任でお願いします。

 俺の名前はカイン・バークレー。一昔ひとむかし前は冒険者をやっていたんだが、結婚を機に引退。今は生まれ故郷のヨット村で美しい妻と五歳の娘、家族三人で暮らしている。

 村の周辺に出没する魔物を退治してその素材を売ったり、隣町の冒険者ギルドに寄せられるクエストをこなしたりしながら生活費を稼いでいたが、あるとき村を訪れていた冒険者から「野良ダンジョンじゃない、人工ダンジョンはここら辺にないのか」という言葉を聞いてひらめいたんだ。


「近くの野良ダンジョンを攻略して、人工ダンジョンに改造すれば面白い、やりがいのある仕事になるんじゃないか(ついでに今よりは稼げるんじゃないか)」って。


 そこからの俺の行動は早かった。村からそう遠くない場所に野良ダンジョンを発見すると、そこを改装することに決めた。幸いまだ魔物が住み着いていなかったし、結構な広さと深さがあったので、立派なものが作れそうだった。


 んで、いろいろあって完成したのが俺の人工ダンジョン「深淵しんえんの迷宮」だ。全7階層(と第8層を特別階層として準備)で、最大探索人数は200人程度。大体1パーティ4人編成だから50組ほどが同時に冒険できるようになっている。っていっても本当に広いから、パーティ同士が出会うことは滅多にない。っていうか、最初にダンジョンに入る時点で、他のパーティと離れた場所にテレポートしてスタートするように設定しているからな。ここらへんは俺のダンジョンのといったところだろうか。


 「深淵の迷宮」は結構人気があるんだぜ。おっ、ちょうど今、新しい冒険者がやってきたみたいだ。「受付嬢」アナスタシアが応対するから、彼女の声を聞いてくれよ。これがまた上品で素敵なんだ。


「ようこそ深淵の迷宮へ。挑戦ですか?」

「ああ、4人なんだが……第3層に挑戦したい」

 という冒険者たちは、出で立ちからするに……戦士二人に弓使いと魔法使い、攻撃重視のパーティかな。治癒師がいないのが気になるが……まぁどうでもいいけど。大事なのは冒険者ランクだ。国から発行されている冒険者証にはランクが刻まれていて、それが本人の強さを表している。ただ力が強いだけじゃなくて、探索能力とか、魔力とか、いろいろと総合力を判断されて判定される。今回のメンバーは……。


「B級3人とC級1人ですね。基準はクリアしているから大丈夫です。では第3層からのスタートということで。えっと、こちらのダンジョンは……」

「初めてだ」

 だよね。見たことない顔だもん。

「では、こちらの帳簿に記入をお願いします。万が一ということもありますので、その承諾書をよくお読みになり、そちらにもサインをお願いします」

 当然のことだけど、ダンジョン内で起きる事象については全て自己責任だ。アイテムをゲットするのも、途中で魔物に敗れて命を落としてしまうのも、全て自己責任。一応、各階層とも冒険者ランクに合わせた難易度調整にしてあるんだけどね、たまに事故が起きてしまうこともある。だから、この承諾書は超重要だ。

「入場料一人当たり3000ゴールドいただきます。……はい、確かに。それでは、いってらっしゃいませ。女神の御加護がありますように!」


 こんな感じで「深淵の迷宮」にはいろいろな冒険者が訪れるんだ。どうだい、「受付嬢」アナスタシア、素敵だろう?

 おっと、このことを妻には言わないでくれよ。家に帰れなくなっちまうからさ!

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