第420話 難民用のダンジョンパーク



Side ???


アメリカとメキシコの国境にたどり着いた。

ここには、元大統領の命で大きな杭が多数突き刺さっていて、不法入国をする人たちを防いでいた。


だが、実際は不法入国する人が後を絶たない。

不法入国しようとする者たちは、どんな手段を用いても入国しようとする者たちばかりだからな……。


難民対策のダンジョンパーク設置場所に到着すると、車を泊めて魔法少女を降ろす。

しかし、魔法少女は名前を教えてくれなかったな。

私の護衛はここまでだ。


案内役の高官の男とともに、魔法少女は歩いていった。

私をそれを見送り、高官の男が戻るまで待機か……。


『コールマン、行かせていいのか?』

『ああ、俺たちの護衛はここまでだ。

この先は、関係者以外立ち入り禁止だと』

『関係者って、例のダンジョンパーク反対派が脅迫状をよこしていたんだろ?

大丈夫なのか?』

『さあな。だが、契約はここまでだ。

これ以上は、契約に入っていないんだよ……』

『……』


ここまで一緒の車に乗ってきた護衛のSPすら、同行することを断っている。

いったいこの先、何があるっていうんだ?




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


俺はコアルームから、魔法少女の目線でモニター画面を見ている。

案内の高官の背中が移っていることから、魔法少女の前を歩いて案内しているということだな。


だが、しばらく歩いたところで高官が振り返った。

到着したか? と思ったら、高官の手には銃が握られている。


『えっと?』

『フフフ、すまないな魔法少女。

これが、アメリカの意思なのだよ』


そう言うと、パンパンと何発も撃ってきた。

しかも至近距離だ、絶対命中すると確信して何発も撃ってきている。


そして、銃弾を受けた魔法少女の目線は、高官の顔から空の映像に変わった。

どうやら、仰向けに倒れたようだ。


「マスター!」

「大丈夫だ! 俺が撃たれたわけじゃない。

それに、こんな時のために人型ゴーレムの魔法少女を用意したんだろ?!」

「……そ、そうでした」


俺がコアルームにいるのにもかかわらず、ミアは叫ぶ。

それぐらい、衝撃を受けたのだろうが、俺はここにいる。


「ミア、落ち着け。

エレノア、人型ゴーレムはまだ動けるか?」

「……大丈夫よ。まだ動けるわ」


エレノアも、ショックを受けたのか。

とりあえず、人型ゴーレムを操作してこの高官を何とかしないとな。


画面の中に映し出されている高官は、銃からマガジンを抜き、腰から新たなマガジンを出してきた。

自動拳銃で撃ってきたとはいえ、至近距離から撃たれると衝撃が酷いな。


人型ゴーレムを立ち上がらせ、高官を驚かせる。


『何っ?!』


そしてすぐに高官の足を蹴り、その場に転ばせる。


『うおっ!』


高官は転んだ拍子に、持っていた銃を落とし魔法少女を見た。

そして、震えるほど驚いている……。


『そ、そんな……、バカな……』

「フッ!」


俺が操る魔法少女は、思いっきり高官の首めがけて蹴りを放ち圧し折った。

曲がってはいけない首の曲がり方をした高官は、その場に崩れ落ちた。


「サイレンサーで音を消して、魔法少女を暗殺しようとするとは……。

狙撃で暗殺しようとしていたし、とんでもないな……」


魔法少女はそう呟き、一人で歩いていく。

設置場所は、ある程度話し合って決めてあるから多分大丈夫だ……。


しかし、穴だらけの服で移動しなければならないとは……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


銃で撃たれたままの魔法少女ゴーレムは、ダンジョンパーク設置場所にたどり着いた。

そこにはコンクリートの大きな壁が建てられていて、国境も目と鼻の先だ。


一分ほど歩けば、国境の杭を越えることも可能だろう。


「ここが設置場所だな……」


コアルームで、魔法少女が見た映像を確認して、俺は魔法少女の側に魔法少女の姿で転移する。

もし、アメリカの魔法少女を目撃していたら、いきなり二人に増えて驚いただろう。


「ご苦労様、魔法少女」

「いえ、マスターの身代わりができて光栄です」

「身代わり……」


俺は魔法少女の体を見て、銃弾の後を見つける。

何発も撃たれた跡があり、それが同じような場所に集中していることから、一カ所に何発も撃ち込まれたということか。


「帰ったら、すぐに治してやるから……」

「ありがとうございます。

それより、ダンジョンパークの設置を」

「ああ、そうだな……」


俺は、コンクリートの壁の前に立つと、呪文を唱えながらダンジョンパークの入り口を設置した。

縦五メートル、横二十メートルの大きなダンジョンパークへの入り口だ。


「……設置完了」

「この後は、どうしますか?」

「日本に帰るぞ。

設置した後は、案内してくれた高官に知らせて終わりだったんだが……」


そう言って、離れた場所で死んでいる高官の死体を見る。

そして俺は、顔を二回ほど左右に振る。


「あれでは知らせようがないな。

日本に帰ったら、アメリカ政府に連絡しておこう。

それと、案内してくれた高官に殺されそうになったこともな」

「了解です」


魔法少女二人は手を繋ぎ、転移魔法でその場所から消える。

後は、アメリカ政府に任せればいいだろう。


アメリカに設置したダンジョンパークは、難民専用に調整してあるし、日本のダンジョンパークとは繋げていないから大丈夫だろう。


もし何かあれば、こっちから繋げて対処すればいいわけだし……。






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現代でダンジョンマスターになった男の物語 光晴さん @ki2275

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