第404話 王との謁見
Side 五十嵐颯太
『ふざけるなーっ!!
我が陸戦隊が、全滅だと!!』
コアルームのモニターに、怒り狂って辺りの物にあたる老人が映し出されている。
核を撃ち込まれて、町一つが瓦礫と化した。
そのため、町に攻め込んでいたアーラガブ王国、ダンデリィ王国、ボルカクス王国の三国の機械化部隊を含む陸軍は、多数の死者を出して全滅したのだ。
「まあ、怒り狂うよね……。
それでミア、核を撃ち込んだ国は分かったの?」
「はい。虫ゴーレムなどを使って調べたところ、アーラガブ王国と因縁のあるニシード王国だと分かりました」
「ニシード王国?」
「場所は、今のアーラガブ王国の東側で一部領土が接している王国です。
過去に、アーラガブ王国と揉めた経緯があるようです」
「揉めた?
何か、問題でもあったの?」
そう俺が質問すると、ミアの表情が少し曇る。
何かあったのか……。
そして俺は、ニシード王国とアーラガブ王国との間にあった第二王妃事件の話を聞く。
アーラガブ王国で起きた、次期国王を巡る継承権問題による王子王女による暗殺事件。
それに巻き込まれた、ニシード王国の第二王妃の殺害。
さらに、その後のアーラガブ王国の対応と頭が痛くなる内容だった。
これは多分、アーラガブ王国がニシード王国を格下として扱っていたことが原因だろう。
いくら格下としていても、巻き添えで亡くなった他国の王妃を隠蔽しようとするとは……。
「……でも、格下として扱っていたニシード王国に核攻撃を食らうとはな……。
で、その核ミサイルなんだが、どうやって手に入れたんだ?
ニシード王国は、地球のどこかの国と取引があるのか?」
「いいえ、ニシード王国に異世界の地球と繋がった道はありません。
ただ、ニシード王国の隣の旧バルリブト王国に地球と繋がった場所がありました。
おそらくは……」
「その繋がっていた場所から、武器商人がニシード王国と手を組んだ……。
ありえる話だな……」
「詳しく調べてみますか?」
「いや、調べなくてもいいだろう。
それよりも、ニシード王国の核ミサイルの残りを調べてくれ」
「分かりました」
はぁ~、もう一つの異世界も戦争の足音が聞こえ始めたというのに、こっちの異世界では核戦争の真最中とはな……。
その分、地球は好景気の国がたくさんあり、戦争もなく平和だ。
ソフィアの話では、地球の武器商人のほとんどが異世界の国と取引をしているらしい。
それで、武器が売れて売れてしょうがないとか。
まあ、それでも売れない武器は売れないんだがな……。
皮肉なものだな、一つの世界の犠牲のおかげで地球が平和だなんて……。
▽ ▽ ▽
Side ???
アーラガブ王国の機械化部隊が全滅したとの報告から、二週間後の王城の謁見の間。
そこには、玉座に座るアーラガブ王国の国王と側に控える二人の男。
ケネスト宰相と、ホールズ将軍だ。
そして、謁見の間の壁に騎士団の騎士たちが何人も立っていた。
『シルディナ・アーラガブ王女様! 入場!!』
大声で宣言され、謁見の間にある観音開きの大きな扉がゆっくり開く。
そして、そこから一人の美しい女性がゆっくり歩いて王の前まで進む。
王の前まで進むと、その場で挨拶をした。
「初めまして陛下、シルディナと申します。
この度は、捕らわれていた場所からの救出にご尽力くださりありがとうございます」
「うむ。
其方にはこれから、帝王学を学んでもらう。
次期アーラガブ王国女王として、しっかり学ぶように」
「はい、畏まりました……」
「以上だ!」
そう言うと、王は玉座から立ち上がりその場を後にした。
王がいなくなると、宰相と将軍もシルディナに一礼して、王と同じように玉座の後ろにある扉から出ていった。
唖然として立ちつくすシルディナに、後ろから一人の女性が近づいてきた。
男装をした女性で、声を掛けてくる。
「シルディナ様」
「は、はい!」
いきなり後ろから声をかけられたため、シルディナは驚いて大声で返事をしてしまう。
そして、振り返ってまた驚いた。
そこには、男装というよりも男物の服を着た女性が立っていたからだ。
「初めまして、シルディナ様。
あなた様の教師となった、ニレーナと申します」
「シ、シルディナ・アーラガブです。
これから、よろしくお願いいたします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。
では、こちらへ。
シルディナ様のお部屋へと、ご案内させてもらいます」
「は、はい」
そう言うと、ニレーナはシルディナの前を歩いて案内する。
これで顔合わせが終わり、シルディナはアーラガブ王国の時期女王として教育を受けることになる。
だが、この世界は核戦争をしている。
もちろん、ポンポン核ミサイルを撃っているわけではないが、戦いの勝敗を覆すためには使わざるを得ない状況でもある。
そういうことでは、颯太の言っていた通り核戦争をしているといえるだろう。
それにアーラガブ王国は、今の王が周辺諸国へ戦争を仕掛けて領土を広げていた。
つまり、周辺国からは恨まれてもいるのだ。
このまま、アーラガブ王国の勝利が続くとは思えない出来事が、今回の機械化部隊全滅という結果だろう
シルディナがアーラガブ王国を継いだ時、世界は、そして王国がどうなっているか。
今はまだ、予測することも難しかった……。
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