第405話 王国との商売



Side ???


謁見の間にある玉座の後ろにある扉から中に入った部屋で、ニシード王国の国王とケネフト宰相とホールズ将軍は、それぞれでソファに座る。


「これでいいのか? 宰相」

「はい、今はシルディナを次期女王とすると公言すればいいのです」

「今は、か」

「はい、今は、です」


側で、陛下と宰相の会話を聞いていて、ホールズ将軍はシルディナが少しかわいそうになる。

現在、第三王妃様と第四王妃様が妊娠されている。

生まれてくる子が男子であれば、すぐにでも継承権はその男子に移るだろう。


つまり、シルディナはそれまでのつなぎでしかないのだ。

陛下も宰相も、本気でシルディナを次期ニシード王国の女王として迎えたわけではなかった……。


「それで、リリーやシューレの出産日はいつごろになる?」

「このまま順調にいけば、半年後にはお生まれになると思われます」

「半年か。

この国が、無事であるといいがな……」

「陛下……」


国王の言い方に、宰相は困った表情で言った。

ホールズ将軍も、責めるような視線で国王を見ていた。


「分かっている。

分かっているから、そんな目で見るな……。

すべては、ワシが次の国王を指名しなかったせいなのだ……」

「そうですね……。

陛下が決められていれば、ニグルス王子様やカービン王子様、レリナ王女様にコーネリア王女様、そしてマリー王女様の継承争いはなかったかもしれませんね……」

「宰相!」

「……申し訳ございません、陛下」

「いや、いい……」


陛下は平等に、お子様たちと接せられていた。

だからこそだろう、自分こそが次期国王だと陛下にアピールしていたのは。


王子王女の誰かが戦で手柄をあげれば、外交でアピールする者もいる。

さらに、他の王子王女を躓かせようと考えるものもいれば、暗殺をもくろんだ者もいた。

そして、お互いに疑心暗鬼になったころ、この戦争が始まる。


戦争が始まれば、手柄を立てようと最前線へ。

そして、自身が手柄を立てるだけではなく、相手の足を引っ張ることをする。

それが、相手の暗殺へ……。


ホールズ将軍は、今回の件を考えていてしまう。

もし陛下が次期国王を指名していれば、と……。



――――コンコン。


三人で話をしていると、ドアがノックされた。


「誰だ?」

『バステンでございます、陛下』

「入れ、バステン」


ガチャッと扉が開く。

唯一の出入り口である、玉座の後ろにある扉だ。


「リオール様が、いらしております。

どうなされますか、陛下」

「異世界人のリオールか。

今回使用した核ミサイルの件、だろうな……」

「おそらくは」

「はぁ~。分かった、すぐに行く」

「では、謁見の間にお通しいたします」


そう言って一礼して、部屋から出ていく。

それを確認して、国王と宰相に将軍は立ち上がった。

面倒な相手だが、会わないわけにはいかないだろう……。


そう思いながら、三人は黙って部屋を出ていった。




▽    ▽    ▽




Side 地球の武器商人 リオール


私は今、赤いじゅうたんの引かれた長い長い廊下を歩いている。

この先にある、謁見の間に案内されているためだ。


王族の、それも国王陛下と会うためには、謁見の間でのみ会うことができる。

執務室などで会うことができる商人になるには、もっと信用がいるらしい。


今案内されている執事さんに聞いて、こんな答えが返ってきた。

ファンタジー世界は、面倒くさいね~。


『地球の商人、リオール様! 入場!』


そう謁見の間に通じる扉の前で、兵士が叫んだ。

これで中の国王たちに聞こえて、謁見の間に入ることが許される。


ゆっくりと観音開きの大きな扉が開き、私は中へ入っていく。

真っ直ぐ進み、執事さんの合図で絨毯の上に跪く。


「ご機嫌麗しゅうございます陛下。

異世界は地球の商人、リオールでございます」

「うむ、よく来た。

今回の訪問は、使用した核ミサイルなるものの感想などか?」

「はい、その通りでございます。

もし使い勝手が良かった場合は、今後も我が商会にご注文いただければと……」

「うむ。それについては、ホールズ将軍が答えよう」

「ハッ!」


宰相の横にいた将軍が返事をして、一歩前へ出る。


「今回のミサイルの威力は、町一つを吹き飛ばすものだった。

そのおかげで、町にいたアーラガブ王国をはじめとした三国の機械化部隊に陸戦隊を葬ることができた。

やはり、地球の兵器は威力が違う」

「ということは、満足いく威力だったというわけですね?」

「その通りだ」


そう言うと将軍は、国王の方へ向きを変える。


「陛下、追加の核ミサイルの購入を我々は具申いたします」

「あい分かった。

リオール殿、核ミサイルの追加発注をお願いしたい」

「畏まりました。

我が商会の総力を挙げて、追加の核ミサイルをご提供いたしましょう」

「いいのか?

提供するということは、利益にはならないということだが?」

「構いません。

その代わりと言っては何ですが……」


ニヤリと笑うリオール。

その意味を知っている国王は、少し辟易とした気分になる。


「分かっている。

例の物を用意しろというのだろう? バステン!」


国王は、リオールの後ろで控えている執事のバステンに声をかけた。


「はい、すぐにご用意させます」

「うむ。ではリオール、納品後に交換ということでよいな?」

「はい、私どもはそれで構いません」


こうして、謁見は終わり商談も成立した。

核ミサイルを何発納めればいいかは、この後ホールズ将軍が教えてくれる。

そして、ミサイルを納めれば……グフフ。


異世界人の奴隷は、地球で高く売れるのだよ……。







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