第402話 終わりの一撃
Side ???
町の東側の破壊された城壁近くに、敵の兵士たちがなだれこんできたとの報告が入った。
私たちは、北の城壁の上で待機していた。
「ウリベロ、この町放棄するって、本当?」
「ああ、さっき連絡がきてな。
残っている天使や悪魔にも、町から退避するようにとのことだ」
「連絡って、これ?」
私は、腰に付けているポーチからスマホを取り出し、天使のウリベロに見せる。
それを見たウリベロは、そうだと頷く。
「異世界なのに、電波が届くってどうなっているのか分からないが、天使と悪魔全員に持たされたそのスマホに連絡がきた」
「へぇ~、確かに不思議だよね。
通話もできるしメールもできる。地球にいるものとの連絡もできるしねぇ~」
「まあとにかく、俺たちも退避するぞ」
「ちょっと待って……」
「ん? 何だ?」
私は、避難のために向かうもう一つの町の方を見ると、空から飛んでくる物体を発見する。
退避する町の方角ではあるが、何かがおかしい……。
「あれは……」
「……ミサイルだな、あれは。
だが、俺たちが退避する町には、ミサイルを発射するような施設はないしそんな武器はない。
それに、俺たち天使や悪魔がミサイルなんて使わないしな……」
私たち天使や悪魔は、地球の現代武器を使わない。
何故なら、私たち天使や悪魔は直接武器が一番威力を発揮するからだし、魔法を使うことができるからだ。
ならば、あのミサイルは……。
「いやな予感がするな……。
スマホの緊急通報を使って、まだ町にいる天使や悪魔に知らせておこう」
「知らせたら、すぐ逃げるわよ」
「おう!」
ウリベロがスマホを操作すると、すぐに私のスマホから警報が鳴った。
これで、天使や悪魔の持つスマホ全部に届いたはずだ。
そして、すぐに私たちは城壁の上から飛んで退避する。
ミサイルが着弾する前に、町から距離を取るために……。
▽ ▽ ▽
Side ???
――――ビーーーッ! ビーーーッ!!
「シンリル! 警報だ! すぐに町から退避だ!!」
「ディスバーン、分かった!
カーベス、そいつらの相手はもういい! すぐに町から退避だ!!」
「チッ、了解だっ!!」
カーベスは、手に持っていた兵士の頭をほおり投げると、翼を広げて上空へ飛ぶ。
カーベスと同じように、俺もディスバーンも翼を広げて飛び上がった。
「逃げるなッ!!」
「構えろ! 撃て撃てーっ!!」
俺たちに狙いを定めて飛んでくる銃弾を、難なく躱して町から退避していく。
周りを見れば、俺たちと同じように町から退避する天使や悪魔が見えた。
だが、緊急警報とは何があったんだ?
そんな俺の疑問も、町から退避していく俺たちの横を飛んで行くミサイルを見て納得する。
ミサイルの側面に記された、あるマークを見つけたのだ……。
「おい! 振り返るなよー!!」
「とにかく退避を急げ!!」
一緒に飛んで退避する連中は、あのミサイルが何か分かったようだ……。
しかし、どこから飛んできたんだ?
異世界で、あんなものを使用するとは……。
▽ ▽ ▽
Side ???
町に攻め寄せていた、機械化部隊の装甲車両とかいうものに拾われ、姫様と俺たち侵入部隊を乗せて町を後にしている。
侵入部隊は人数がいたため、装甲車両を三台ほど使って運ばれていく。
「隊長殿、町への侵入作戦、お疲れ様です」
「いえ、こちらこそ。
我々の隊が町へ侵入するための陽動作戦、ありがとうございました。
かなりの被害が出たと思いますが……」
「何、機械化部隊保有の戦車と人型ゴーレムが全滅しただけだよ」
「全滅……」
機械化部隊の隊員の報告を聞き、姫様が引いている。
確かに戦車と人型ゴーレムが全滅と聞けばかなりの被害なのだと思われるが、今回の作戦で全滅は、想定内なのだ。
偵察隊の報告で、あの町に何がいるのか分かっていたから被害を無視して作戦を立てた。
とにかく姫様を無事、救出するために、だ。
「ご安心ください、姫様。
今回の被害は、想定の範囲内です。
偵察隊の報告で、こうなることは予想していましたから……」
「三カ国の機械化部隊が、ですか?」
「はい」
そう聞くと、姫様は黙って俯かれてしまわれた。
シルディナ様が、心を痛める必要などないのだ。
王族の救出となれば、これぐらいのこと当たり前なのだが……。
それに責められるは、無謀な後継者争いをして暗殺されたり殺されたりした王子や王女たちを責めるべきなのだ。
王子や王女たちがバカなことをしなければ、シルディナ様が表舞台に出ることもなかった。
……まあ、シルディナ様をあんな場所から助け出すことになった、その事だけは王子や王女たちに感謝してもいいかな。
そんなことを考えていた時、大きな衝撃が装甲車両に襲いかかった。
そのおかげで俺や姫様は、車両の中でもみくちゃにされてしまった。
……いったい何が起きた?!
▽ ▽ ▽
その日、天使や悪魔たちが退避した町の中心で、太陽が光輝いた。
その太陽の光と熱で、町の中心から城壁までの建物すべてが破壊され、瓦礫と化す。
また、城壁近くで戦い終わって負傷者を手当てしていた兵士たちは、光に照らされ熱に焼かれ、爆発の衝撃波で城壁の外に吹き飛ばされ絶命した。
城壁の外にいた兵士たちも、爆風によって崩れた城壁に押しつぶされたり、爆風そのものによって吹き飛ばされたり、熱風によって全身に大やけどを負うことになる。
太陽が消えた後には、崩れた城壁の外で兵士の生き残りが呻き声をあげていた……。
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