第401話 脱出と避難



Side ???


町の中央の屋敷に到着し、すぐに中へ入る。

そして、地下へ通じる階段を下りて少し進んだところにある部屋へと入った。


「! ステート!」

「七海! この町から避難するよ、準備して」


部屋の中に人たちの中で、一人の女性が俺の姿を見て飛び出してきた。

この女性こそ、俺のパートナーの七海だ。

ダンジョンマスターになって、天使の俺を召喚した女性。


俺と契約して、パートナーとなったが簡単に死なせたりはしない。


「あの、他の天使様たちも避難を開始しているのですか?」

「ああ、敵はかなりの数で攻め込んできたようでね。

抵抗している天使や悪魔だけでは、押し返そうにもないんだ」

「……分かりました。

すぐに準備して、避難を開始します」

「頼むよ」


そう言って俺は部屋を出ようとすると、パートナーの七海に止められる。


「ステート、どこへ行くの?」

「この地下の奥に、捕らえられている人物がいるんだ。

その人も一緒に、避難させようと思ってね」

「私も行くわ!」

「なら、一緒に迎えに行こう」


俺は七海に手を差し出すと、その手を取って俺たちは一緒に廊下の奥へ進む。

だが、廊下の奥にある隠し扉が開いていた。


「開いている……」

「誰か来たのかな?」

「七海は、俺の後ろに」


頷く七海を俺の後ろにかばい、隠し扉を抜けて奥へと進む。

少しの廊下を進むと、壊された鉄格子の部屋を見つける。


「……壊されているわ」

「ああ、それに牢の中には誰もいない……」

「誰かが連れ出したのかも」

「……」


誰が連れ出したのか分からなかったが、このままここで考えているのも問題だ。

みんなを連れて、早く非難しなければならない。

攻めてきた戦車やゴーレムは叩き潰したが、町にかなりの被害が出ることになってしまった。


さらに、城壁は東西南と破壊されてしまい、敵兵がなだれ込んでいるところだ。


「時間もない。

いなくなったものは仕方がない。七海、俺たちも避難しよう」

「ええ、行きましょう!」


とりあえず、いなくなってしまった者のことは後回しにして、今は避難を優先する。

このままグズグズしていたら、避難できるものもできなくなる。


俺たちはその場を後にして、みんなと合流して避難を開始する。




▽    ▽    ▽




Side ???


町の中央の屋敷から脱出し、町を東へ向けて移動する。

町の外側に向けて進み、城壁に近づくと、破壊された戦車や潰された人型ゴーレムがあちらこちらに見受けられる。


こんな場所でも、戦いがあったのだろう。

いまだ、町のあちこちから銃撃音や魔法の衝撃音などが聞こえてくる。

また、何の光りか分からないが、町の上を飛び交っていた。


「隊長、少し休みましょう」

「交代か?」

「はい。それに、負ぶさっている姫様にも疲労の色が……」

「……分かった。

あそこに見える、喫茶店のような店で休憩だ」

「了解」


隊員たちが、交代で牢にいた姫様を負ぶって脱出を図っていたが、負ぶさっていた姫様が疲労されているとは思わなかった。

どうやら、負ぶさっている者も疲れるようだ……。


見つからないように移動する我が隊だが、目の前に見つけた喫茶店に入って休憩する。



「フゥ~」

「姫様、お疲れ様です」

「いえ、皆様の方が疲れていると思いますので……」


シルディナ様が、椅子に座って一息つく。

俺は労いの言葉をかけたが、姫様は隊員たちのことを労われた。


その隊員たちは、床に直に座りこんで休憩している。

どうやら、誰にも見つからないように移動するということがこれだけ疲労させているようだ。

だが、我々は見つかることなく、この町から脱出しなければならない。


それに、ここで姫様を死なせるようなことになれば、アーガレフ王国がどうなるか……。




▽    ▽    ▽




Side ???


崩れた南側の城壁で、一人の男が兵士たちに命令している。


「崩れた場所から、町の中へ突っ込め!!

機械化部隊が切り開いてくれた道だ!

一気に攻め込めーー!!!」

『『『『『おおおお!!!!』』』』』


気持ちを奮い立たせるために、周りの連中と同じように大声をあげて崩れた城壁の間から、町の中へ侵入する。

侵入後は、自動小銃を構えながら町の中を慎重に進んで行く。


『侵入者、発見!!』

「上だーーー!!」


俺たちの上から声が聞こえて上を向くと、翼を広げた女性が降りてくる光景が見える。

驚く俺たちに、敵だと兵士の一人が叫んで銃を構えるが、時すでに遅く、俺の意識はここでなくなった……。




▽    ▽    ▽




Side ???


上空から襲い掛かってきた天使が風の魔法を使うと、侵入して警戒している兵士たちが上に向かって銃を構えるが間に合わず、八つ裂きにされ大量の血が地面に叩きつけられる。


「油断するな!!」


俺は仲間の兵士たちに叫ぶが、その惨殺された光景が仲間を恐怖させ、ただ逃げ惑うだけになってしまった。


「逃げるな!! 反撃しろ!!」


ただ逃げるだけでは、襲われて殺されるぞ!

そう叫びたかったが、叫ぶ前に次々と殺されていく。


「ク、クソ!!」


俺は持っていた自動小銃を構えて、襲いかかってきた天使に向けて乱射する。

だが、当たらない!

敵は、自由に空中を飛ぶ天使だ。


本来なら、敬うような存在のはずなんだが、今は俺たちに襲いかかってくる悪魔だ。

ニヤニヤと笑いながら、軽々と躱していく。


そうこうしているうちに、本物の悪魔が現れた……。







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