第399話 町の中央の建物



Side ???


「せいッ!!」


ハンマーを振りぬき、人型ゴーレムの頭を撃ち抜く。

頭の砕けた人型ゴーレムが壁にぶち当たるが、すぐにゆっくりと立ち上がり側に落ちていた銃を手に取り構えてくる。


天使の俺に狙いを定めて、引き金を引き撃ってくる。

いくら人型と言えど、こいつらはゴーレム。

やはり、コアを破壊しないと倒すことはできないようだ……。


「サリチル! コアを壊せ!

こいつらは、人型でもゴーレムだ!」

「分かっている!」


俺にアドバイスしてきた仲間の天使シンリルに言い返すと、銃弾を避けながら頭の無い人型ゴーレムに近づき、コアがある胸にハンマーを強打させた。

すると、人型ゴーレムの背中が爆発して、埋め込まれていた核の宝石が砕け散った。


それと同時に、人型ゴーレムは砂のようになって崩れ落ちた。


「フゥ……」

「休んでいる暇はないぞ!

人型ゴーレムは数いるんだ! 次々壊さねぇと詰んじまうぜ!!」

「チッ、悪魔のロディーヌが五月蠅いな……」

「いいから、サッサと戦え!」

「分かったよ!!」


砲塔が二本ある戦車を破壊し、次々と戦車を破壊していく悪魔のロディーヌ。

一応この戦いで、実績は稼いでいる。

俺も頑張らないと、すぐにこの町が落ちてしまうからな……。


俺はハンマーを肩に担ぐと、次の人型ゴーレムの所へと飛んで行った。


「まったく、なんて日だよ!」


悪魔に、こき使われてるなんてな……。




▽    ▽    ▽




Side ???


「こちらスネーク。目的の建物まで近づいた」

『……建物に印があるはずだ。確認してくれ』

「了解」


本隊に通信を入れると、目的の町の中心にある建物には印があるらしい。

俺たちは、その印を探すため建物の周りを調べる。


すると、正面の門の門柱に簡易的に書かれた鷲のマークがあった。


「これだな……。

こちらスネーク、門柱に鷲のマークを発見した」

『……それだ。その建物で間違いない。

中に潜入し、捕らえられている人物に会え』

「了解」


マークを発見して、すぐに通信魔道具で連絡をとる。

すると、中に侵入して捉えられている人物に会えとの命令。

……捕らえられた人物、か。


建物の中を見渡すが、全員出払っているようだ。

まあ、城壁から敵が侵入しようと攻撃を仕掛けているんだ。迎撃するために出ていったんだろうな……。


「……隊長、見張りも護衛もいないようです」

「よし、今のうちに侵入するぞ……」


俺たちの隊は、正面の鉄の門を静かに開け中へ侵入する。

芝生の上を静かに素早く進み、裏口へと近づく。


裏口の扉を静かに少しだけ開けて、中の様子をうかがう……。


「……人の気配なし」

「裏口の周りも、人の気配なし」

「入るぞ」


裏口の扉を開け、静かに潜入。

そのまま廊下を静かに移動し、部屋を一つ一つ確認していく。

すると、玄関近くに地下への階段を発見。


俺は何も言わずに、指だけで他の隊員に合図を送る。

静かに下へ降りるぞ、と。

その合図を受けた隊員たちは頷き、俺たちは静かに階段を下りていく……。




▽    ▽    ▽




Side ???


町の中央にある建物の地下にある一室。

ここには、天使たちの連れと呼ばれる人々が待機していた。

悪魔たちに言わせれば、天使の生贄と呼ばれているが……。


天使たちのもう一つの命という、ある意味犠牲となったダンジョンマスターたちだ。


ここにいる者たちは、地球でダンジョンマスターとなって天使召喚を行い、召喚された天使たちに魅了され生贄となった。

召喚した天使が殺されるなどされたとき、この者たちの命を使って天使がよみがえるのだ。


天使の生贄と言われるのも、分かるというものだ。

そんな人たちが、集められてこの部屋に待機させられていた。


「……戦いは、もう始まっているのか」

「地響きが聞こえるからな。

始まっているんだろう……」

「どっちが勝つと思う?」

「さあな。

最近は、異世界の連中も機械化部隊なんてものを編成しているらしい」

「機械化部隊?

機械って、銃とか使うのか?」

「銃だけじゃなくて、戦車もあるらしい。

私の天使からの情報だと、ミサイルを使う連中もいるとか」

「……まあ、核兵器が使われたなんて情報もあったからな。

機械化部隊が存在するなんて、当たり前か……」


部屋の中央で、不安を紛らわす会話が続く中、部屋の端で壁に向かってブツブツと呟く女性がいる。


「……大丈夫、大丈夫。

ミラシェール様は死なない。ミラシェール様は大丈夫。大丈夫……」


自分の召喚した天使が無事なことを言い聞かせるように、何度も何度も繰り返していた。

その様子を見守る二人の女性。


「ローナ、彼女は……」

「おそらく、天使の魅了による依存症ね。

彼女の天使ミラシェールは、かなりの愛情をもって彼女と接しているのでしょうね。

彼女が依存してしまうほどに……」

「それは……」


ブツブツと呟く女性を、気の毒に見守る二人の女性。

自分たちも、天使を呼び出している身としては変わらないのだが、彼女のように天使に依存はしていない。

それどころか、自分たちの召喚行為を反省しているほどだ。


自身の命を、天使に握られてしまったのだから……。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る