第398話 城壁突破



Side ???


町の東側にある城門が今、爆発する。

その衝撃により、俺たちは吹き飛ばされ瓦礫の下にじきになった。


「い、たたた……」


まあ、俺は天使で鎧を着けていたから衝撃だけだったけど、瓦礫と化した住居にいた人はただでは済まないだろう。

避難せずにいたら、だが。


町の人たちには、この戦いが始まる前に避難するように通達している。

そのおかげで今、町に人が残っている場所は少ない。

いろいろと処理やら作業やらがあって、町に留まっている人がこの戦闘している今も動いていた。


「ちょっと! 何よ今の!!」

「悪魔のロディーヌか。

今のは、城壁の外からの攻撃だ」

「城壁の外?!

結界魔法やシールドが、効いているんじゃないの?」

「至近距離からの攻撃みたいだな……」

「ふ、ふざけんじゃないわよっ!!」


そう叫ぶと、黒い翼を勢い良く広げて瓦礫を飛ばし、上空へ飛んで行く。

飛ばされた瓦礫が、俺にも飛んできたがシールドで防御。

そして、俺も翼を広げて上空へ上がる。


上空から見ると、城壁の一部が破壊されて崩れている。

そこから、戦車が何台もうねりをあげて侵入してきた。


「何よあの戦車!

砲塔が二つもあるじゃない?!

どこのバカが造ったのよ!」

「……アレ、たぶん日本製だな」

「日本? クレイジーすぎるでしょ!!」

「いや、日本であの戦車を見たことがある。

確か、何かのロボットアニメで見たな……」

「何? 日本は、アニメを実現できる国なの?!」

「いや、実現できるんじゃない。

実現してしまう国なんだ」

「……何よ、それ~?!」


悪魔のロディーヌが、頭を抱えてイライラしている。

しかし、本当に日本という国はクールだな。

そのうち、二足歩行のロボットも投入しそうな気がするぞ……。


「ロディーヌ! サリチル!

そこで戦力分析してないで、侵入してきた敵を倒せ!!」

「りょ、了解!」

「分かってるわよ!!」


俺たちは武器を構え、侵入してきた戦車に突撃する。

結界やシールドは魔法防御の一種だから、実弾攻撃には、防御力が少し落ちたようだ。

これは今後、改良の余地ありだな。


それはともかく、俺たちは侵入してきた戦車に近づくと持っているハンマーで、まずは足を壊す!

そして動けなくなったところを、かち上げてひっくり返すのだ。


後は戦車の底に、重力魔法を撃ちこんで潰す!

すると、大きな音と衝撃とともに爆発した。


「まずは一台!」

「サリチル! あのおかしな戦車は私が叩く!」

「了解!」


例の砲塔が二本ある戦車はロディーヌに任せて、他の侵入してきた戦車に俺は突撃していった。

これ以上、町に侵入させてなるものか……。




▽    ▽    ▽




Side ???


「隊長、東側の城壁が崩れました!」

「よし、俺たちはこれより侵入を開始する!

侵入後は、町の中心を目指せ! いいな!!」

「「「「ハイ!!」」」」


東側にすぐに移動し、崩れている城壁を確認後、町の中への侵入を試みる。

崩れた城壁では、戦車部隊と人型ゴーレム部隊が戦いを繰りひろげていた。


人の形をした翼の生えた連中と、人型ゴーレムが戦い、戦車部隊がその重厚な姿そのままに強引に前進していく。

だが、戦車一台一台も翼の生えた者たちからすれば敵とはいえず、簡単に破壊されたり、ひっくり返されたりしている。


「た、隊長……」

「大丈夫だ。すぐに……今だ!」


侵入できるすきを窺い、俺たちの部隊は町への侵入に成功した。

侵入後は、すぐに戦場を離れ町の中心部を目指していく。



町の中心に向かうついでに、あちこちの建物に爆弾を仕掛けていく。

これが時間差で爆発していけば、時間稼ぎになるはずだ……。


「隊長、時間はどうしますか?」

「ここは、十分だ」

「了解」


タイマーを十分後にセットして、町の中心を目指していく。

時折、巡回している兵士らしきものたちがいたが、建物の影や中に入ってやり過ごす。

俺たちは、戦うために侵入しているわけではないのだ。


戦いはできるだけ避けて、町の中心を目指していく……。


その時、大きな爆発が近くの建物で起きた。

俺たちは身を屈めて、堕ちてくる瓦礫などに対処する。


「た、隊長……」


部隊の仲間が怯えながら、身を屈めていた。

敵に、見つかったと思ったんだろうな。

だがこの爆発は、戦車隊からの攻撃が、近くの建物に命中しただけだ。


「大丈夫だ。これは味方の攻撃が、たまたま近くの建物に命中しただけだ」

「味方の攻撃?」

「ああ。どうやら、西側の城壁も崩すことができたらしい」

「おお~」

「とりあえず、すぐに移動するぞ。

巡回していた兵士が集まり始めている。このままでは見つかってしまうぞ」

「りょ、了解」


崩れた建物の側で、叫ぶ兵士たちに見つからないように逃げていく。

幸い大きな建物だったようで、俺たちの部隊が移動する様子は建物の影で見えなかったようだ。


このまま、町の中心を目指していく。

そして、そこにある建物の地下に捕まっている人物に接触するのだ。


この町の中心の地下に、何故捕まっている人がいるのか分からない。

なぜ、それを依頼者の王国関係者が知っているのかもわからない。

だが、仕事はしっかりする。


それが、俺たち侵入部隊なのだ……。







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