第397話 進軍開始



Side ???


「歩兵隊、出ぱーつ!!」


三つの傭兵部隊が集まった本隊が、いよいよ出発する。

俺は、今回が初めての参加だが緊張して、ドキドキしている。

アーラガブ王国で、傭兵としてこの戦いに参加するという仕事を貰って参戦したのだ。


最近は、そんな仕事が町中にあふれていた。

まあ、報酬がいいからな。

一回参戦するだけで、二年は遊んで暮らせる額が払われるらしい。


そのため、参加者が多数いる。

……まあその分、帰ってこない者がいるのは確かだ。

危険な仕事な分、報酬がいいということなんだろう。


「おい、武器の使い方は理解してるか?」

「ん? 大丈夫だよ」

「ちゃんと点検しとけよ?

いざってとき、撃てないやつがいるからな」

「分かったって」


隣を歩く兵士に、注意される。

傭兵団から支給された武器というのが、この今持っている自動小銃という魔道具だ。

握りと言われる持つ所の前にある、このマガジンを交換することでいつまでも鉄の弾を撃つことができるらしい。


俺は、村でも魔力が無い方だったのだが、そんな俺でも使うことができる魔道具だ。

今時の傭兵は、こんな武器で依頼を受けているんだな……。


――――ゴオオオォォォォ………。


轟音が聞こえたかと思うと、俺たちの上空をミサイルという槍の魔道具が飛んで行った。

あれで、町の城壁を破壊するらしい。

さっきから、何回も飛んで行っているがそんなに城壁というのは頑丈なのだろうか?


俺の村にも魔物除けの塀はあるが、そんな丈夫なものじゃなかったな……。



「第一班は、右へ進めー!!」

「第二班は左へー!!」


街道をしばらく進んでいると、前を進む傭兵の隊長さんが叫ぶ。

俺たち歩兵を何班かに分けて、町を攻めるようだ。


「おい、お前は何班か覚えているのか?」

「え? ああ、俺は十一班ですよ」

「なら俺と一緒だな。

移動するときは、俺について来いよ?」

「あ、はい、分かりました」


隣を歩いていた人は、俺と同じ班の人か。

格好から見て、傭兵団の人らしい。

俺たち雇われ兵と違って、身につけている物が違うな……。


「十一班! 右に進めー!!」

「おい、行くぞ」

「は、はい!」


前方に攻め込む町の城壁が見えてきた頃、俺たちの班に右に進むように命令が来た。

ここまでずっと歩いていたが、今度は右へ進めということだ。


もしかして、正面からは攻め込まないのかな?

そう思っていると、上空をミサイルという槍が飛んできた。


――――ゴオオオォォォォォ……。


轟音を出しながら飛んで行き、少し間があって爆発音が聞こえた。


……ドゴオオオォォォォォ…。


大きな炎と煙が上がっているが、城壁は顕在していた。

ミサイルという槍では、城壁を破壊できなかったのか?


「……あれはシールド魔法だな。

それに、結界魔法も展開してやがる……」

「向こうには、そんな魔法使いがいるのか?」

「いるらしいな。

だが、こっちには銃がある。

それに、いつまでも魔力がもつわけないしな」

「だな……」


同じ十一班の兵士たちが、ミサイルで破壊できなかった城壁を分析していた。

彼らも、どうやら傭兵団の人みたいだ。

身につけている物が俺たち雇われ兵士とは違うが、隣の傭兵とも装備が違うみたい。


たぶん、違う傭兵団の人なんだろう。


「十一班! 走れっ!!」

「?!」


いきなりそう言われて、周りの兵士たちが走り出す。

俺たち雇われ兵士たちは、驚くものの少し遅れて同じように走り出した。

何かあったのか?




▽    ▽    ▽




Side ???


戦いは始まった。

町に向けて、複数の飛翔体を確認し、町の城壁と正面にシールド魔法を展開する。

すると、そのシールドに飛翔体が衝突、そして爆発した。

その爆発は、連続で三回ほど続いた。


「ミサイルが飛んできたわよ!」

「私のシールドで、防いだわ!」

「俺のシールド魔法で、防いだんだよ!」

「いいえ、僕のシールドですよ!」

「誰でもいいから、戦闘は始まっているのよ!!」

「チッ、とにかく結界を展開して、防衛にまわれ!!」


天使や悪魔が、城壁の上で我が我がと魔法を使って防御している。

だが、誰が使った、俺が使ったとケンカをはじめそうな雰囲気だったので、それぞれで別れて防衛するように指図した。


天使と悪魔は渋々、それぞれ分かれていった。


「まったく……」

「まあ、そう怒るな」


城壁の上で、別れていく天使と悪魔を見送っていると天使の一体が近づいてきた。

フルプレートアーマーというのか、全身鎧を着ている天使だ。


「あなたも、自分のできることをして町を守って」

「もちろん俺も向かうつもりだが、ここはあんたに任せていいのか?」

「ええ、防御するだけなら心配いらないわ。

それに、さっき掛けたシールドや結界魔法がまだ持続しているようだしね」

「……そうか、ならここは任せた」

「ええ」


そう言うと、天使は頭の鎧をかぶって飛んでいった。

私はその天使も見送ると、城壁の外に視線を移す。


「さあ、正面は何としても守るわよ!

おそらく、一番攻撃される場所でしょうからね!!」


私は、何もない空間から大きな杖を取り出すと、正面に向けて構えた。







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