第394話 機械化部隊



Side ???


元帝国から独立した貴族が興した国、ホーガスト王国の王都ケレネイにある王城。

その謁見の間の玉座に、国王ブレイネット・ホーガストが顔を青くして項垂れていた。


「陛下……」


項垂れる国王を心配するのは、長年ホーガスト家に仕えていた執事で、現在は宰相を務めるリブンだ。


「リブンか。いかがした?」

「いかがしたではありません。

気分がお悪いなら、奥で休まれたほうが……」

「リブンは、昔から心配性だな。

なに、大丈夫だ」

「しかし……」


項垂れていた頭を起き上がらせ、背筋を伸ばして玉座に座り直す。

これで、今まで出していた雰囲気は払しょくされる。


「……それでは、ご報告の続きを」

「始めてくれ」

「では『失礼します!!』 ……何だ?!」


宰相が、王に対して報告を行おうとした時、兵士の一人が謁見の間に飛び込んできた。


「申し訳ございません!

ですが、急ぎ陛下の裁可が必要なのです!」

「……何だ?!」


王と宰相が顔を見合わせて頷き合うと、兵士の報告を言うように命令する。


「隣国、バルリブトが滅亡したとの報告が入りました!」

「それは真実か?!」

「はい! バルリブトの国境にアーラガブ王国の機械化部隊の戦車を多数目撃しました!」

「へ、陛下……」


国王は玉座から立ち上がり、わなわなと震えている。

宰相は、そんな国王を心配して手を差し伸べる。


「隣国の王、イーリスとは、帝国貴族時代からの仲だ。

それに、イーリスは元帝国騎士団団長だった男! 

そのイーリスの国が、滅亡だと……」

「すぐに国境を固めるように騎士団長に通達!

それと、平民からも兵士を徴収するのだ!!」

「ハ、ハハッ!」


報告に来た兵士は、宰相の命令を聞き、走って謁見の間を出ていく。


「陛下、いかがいたしますか……」

「……我が国も、機械化部隊を投入する」

「陛下! まだ早すぎます!」

「ここで投入しないで、いつ投入するというのだ!

宰相、すぐに機械化部隊を国境へ投入せよ!」

「……ハハッ!」


宰相は、苦虫をかみつぶしたような表情で頭を下げた。

国王も、目を瞑り天を仰いだ。


どちらも分かっているのだ。

ここで、敵と同じ機械化部隊を投入したとしても、練度の勝っている敵側に分があると……。

だが、万が一、億が一の奇跡を信じて投入を決める。


元帝国貴族たちによる戦いは、機械化部隊をどれだけ投入できるかに戦場での勝敗が傾き始めていた。

異世界との貿易の中で、武器商人からどれだけ地球の武器を購入して揃えられるか……。


国は疲弊していっても、武器商人から地球の武器をかって戦争をする。

もはや、そこに安息はなかった……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


今日もコアルームで、異世界の戦況をミアから報告してもらう。

元帝国内での戦争は、かなり地球の兵器が活躍をしていた。


「ん~、機械化部隊?」

「はい、戦車を中心とした地球の兵器の部隊です。

この機械化部隊が、最前線へ投入されて突破口になっているようです」

「……戦車で、戦場を蹂躙でもするのか?」

「その考えで、概ね正解です。

後は、銃を装備した人型ゴーレム部隊を投入して無力化したところへ、従来の騎士団や兵士たちを投入しているようですね」

「……酷い戦いだな」

「ですが、これが騎士や兵士たちの安全策となっているようです」

「……」


俺は、何とも言えなかった。

確かに、騎士や兵士の命を考えれば最善の策かもしれないが、何だか納得いかない。

魔術師部隊はどうした?


「そうだ、魔術師部隊は?」

「魔法使いたちですか?

魔法使いたちは、町の防衛などに回されているようです。

城壁強化や、防御強化などで役に立つと……」

「そっちか……」


戦場での攻撃の主体が、魔法から砲弾へと変わってしまったな。

しかも、人型ゴーレムまで投入しているし……。


まあ戦争が始まってから、人々は難民となって旧帝国領から逃げ出しているからな。

人手不足、兵士不足を補うために導入したんだろうが……。

問題は、どこで調達しているかなんだよな……。


実は、人型ゴーレムは異世界にはない。

というよりも、魔物のゴーレムはいるが人工のゴーレムはいないのだ。

錬金術が、そんなに発達しているわけではないからというのが理由なんだが……。


では、どこから調達しているのか。

答えは、地球から、ということになる。


おそらく、どこかのダンジョンマスターが協力か売り出しているのだろう。


「マスター、こちらを……」

「これは?」

「異世界側の地図です。

そして、これが旧帝国領。

さらに、現在の勢力図となります」


ミアは、操作盤を操作して、空中に異世界の地図を表示させ、分布など分かりやすく表示してくれた。


「旧帝国領での戦争は、このアーラガブ王国がかなり広げているな……」

「それと、これが旧帝国領の外の勢力図となります」

「ん~、群雄割拠としか言いようがないな……」


ざっと見渡していた俺は、地図の一部に空白の領地を発見した。


「ここは?」

「実は、この空白地帯にある町に、地球から逃れた天使と悪魔が発見されました」

「何っ?!」

「でも、何故空白に?」

「虫ゴーレムなどで調査をしたのですが、すべて通信などが途絶し虫ゴーレム自体も戻らなかったため、詳細が分からないままなのです」

「天使か悪魔が邪魔をしている?」

「かもしれませんし、違う何かがいるのかも……」


異世界に逃れた天使や悪魔が、これからどう動くのか気になるな……。

何とか調べる方法を考えないと……。






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