第348話 暴走天使たちの末路
Side ???
暗い洞窟に突入すると、すぐに視界は開けて眼下に町を確認する。
こちらを確認して驚いている人たちが確認できたが、町にしては少し人が少ないように感じる。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
町の向こう、森を抜けた先の草原に二つの大きな扉を視認した。
あれは、天界の門と魔界の門だ。
それが斜めに向かい合って立っていた。
扉の大きさは、五十メートルは超えているようだ。
そして、その大きくふちに装飾された彫刻が立派な門の上に、それぞれ誰かいる……。
『ミニラエル! あれは天界の門と魔界の門じゃないのか?』
『そうよ! そして、魔界の門の上を見て!』
『門の上? ……あれは……誰だ?』
『天界の門の上にいるのは、大天使ガブリエルよ!
私たちを、門の中に閉じ込めた張本人!!』
ミニラエルたちは、天界の門と魔界の門の中間まで来ると空中で止まり、そのまま浮遊する。
そして、天界の門の上に座っていた大天使ガブリエルを睨んだ。
『……あら~、あなたは悪魔たちと戦おうとしていた天使だったかしら~?』
『私の名はミニラエル! 大天使ガブリエル、何故私たちを天界の門に閉じ込めた!!』
『フフフ、天使が私を睨むなんて、おかしいわね~』
『?!』
本来であれば、天使のミニラエルたちが大天使であるガブリエルに対して睨みつけるといった行為はできないのだが、そのことに気づいていなかった。
そのため、ガブリエルから指摘されてようやく気付いたのだ……。
『今の、あなたたちの翼や容姿を確認しなさい~。
その姿は到底、天使とは言えないわねぇ~』
ミニラエルたちは、自身の姿や翼を確認し、周りの仲間たちの姿を確認した。
すると、全員の翼が灰色に染まり、中には姿が変わっている者もいた。
『なっ、何で……』
『お、俺の姿が?!』
『私の翼が?!』
『フフフ、アハハハっ!
どいつもこいつも、天使から堕ちるとはなァ!
ガブリエル! 天使とはこうも脆いものなのかァ?!』
魔界の門の上にいる女が、天界の門の上にいるガブリエルに対して笑いながら声をかけた。
それを聞いたミニラエルたちは、魔界の門の上で仁王立ちしている女を睨んだ。
『……貴様、何者だ!?』
『ククク、無理をしなくてもよいぞ?』
『な、何だと?』
『今も、私に対して頭を垂れたい衝動に駆られているのだろう?』
『な、何を……』
『ククク、あーっはっはっは!
我が名はルシファー! こんな姿をしているが、正真正銘の魔王様だっ!』
『『『『な、何っ?!!』』』』
ミニラエルたちは驚いて、少し後ろに下がる。
ルシファーが名乗った時、六枚の黒い翼を大きく広げたためだ。
『く、黒い翼……』
『本物だ。……本物のルシファーだ』
『さぁ、堕ちた天使ども!
お前たちにふさわしい場所へ、招待だぁ!!』
ルシファーがそう叫ぶと同時に、魔界の門が勢いよく開く。
そして、無数の黒い手が噴き出して来て、ミニラエルたちを掴んで引き摺りこもうとした。
『また、私たちを引きずり込む気かぁ!!』
『抵抗するな! 今のお前たちは、魔界こそふさわしい!』
『クッ! 思い通りに行くと……』
ミニラエルたちは、必死に抵抗して引きずり込まれないようにする。
だが、扉から噴出した無数の黒い手の力は強く、徐々に扉の中へと引きずり込まれていく。
『ク、クソぉ……』
『あらぁ~、何を抵抗することがあるのかしらぁ~?』
『ガ、ガブリ、エ、ル……』
ミニラエルは、必死に抵抗しながらガブリエルを睨む。
この大天使さえいなければ、私たちの味方だったらと、都合のいいことを考え憎み始めていた。
『あなたたちは、悪魔たちと戦いたいのでしょう~?
魔界へ行って、好きなだけ悪魔と戦えばいいじゃなぁ~い』
『ふ、ふざけて、いるの、か?
魔界などに行けば……、天使の私たちの力は、半減するのだぞ……』
『フフフ……』
『な、何が、可笑しい!!』
ミニラエルの言葉を聞いて、ガブリエルが笑う。
その事が気に入らず、ミニラエルはガブリエルに怒りを覚えた。
黒い手に抵抗しながら……。
『可笑しいわよ~。
だって、あなたたち、もう天使じゃないじゃな~い』
『なっ?!』
『今だっ!!』
ガブリエルの指摘に、驚いたミニラエルたち。
その一瞬のスキを見逃さずに、ルシファーは黒い手に指示を出した!
『『『『『ああああああああああぁぁぁ~………』』』』』
そして、無数の黒い手に引っ張られるようにミニラエルたちは魔界の門に引き込まれた。
そして、勢いよく扉が閉じられ堕ちた天使たちは、魔界へと封印される。
『クックック、また魔界の住人が増えてくれた。
しかも、堕ちた天使とはなぁ~』
『あらルシファー、もう一つの魔界の門のこと、忘れているの?』
『忘れてねぇよ。
でも、そっちはマスターが何とかするってよ』
『フフフ、さすがマスターねぇ~。
頼りになるわぁ~』
『……なぁ、ガブリエル』
『なぁに~?』
『もしかして、狙ってんのか? マスターのこと』
『ええ、狙っているわよぉ~』
恥じらいもなく、妖艶な笑みを浮かべて答えるガブリエル。
大天使でありながら、こんな笑みを浮かべて答えるとは……。
『……まぁいいけど、欲望に負けて堕ちるなよ?』
『心配してくれるの?
大丈夫よぉ~。清く正しい交際を望むからぁ~』
『……いや、その表情で清く正しい交際っていってもなぁ……』
妖艶な笑みで答えるガブリエルに、ルシファーは不安しかなかった。
でもまあ、堕ちたとしても色欲が行き過ぎてだからいいか、と構わないことにした。
もうすぐ地球の騒動も終わるだろうし、そうなったらまた、天使と悪魔狩りに行くか……。
▽ ▽ ▽
Side 五十嵐颯太
コアルームで、魔物との戦いの様子を観察していると、急に寒気がした。
何だろうと、周りを見るも隙間風など起きない場所だ。
「?」
寒気の正体が分からないまま、観察作業を続けた。
ほとんどの国での戦いも、終わりが見えてきた。
各国にある原因の場所に、それぞれの国の軍隊が近づいていたのだ……。
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