第349話 原因判明



Side ???


一時間ほど前、陸自のある部隊が、日本にある化け物たちが溢れてきた場所の中心に到達した。

そこは崖の麓にある洞窟のようなトンネルで、昔、防空壕として使われていた場所らしい。


この周りにいた化け物は、ほぼ殲滅が完了した。

後は、逃げ散っていった化け物だが、チームを編成して見回りをしている。

そのうち、全滅させることもできるだろう。


だが今は、目の前にある化け物が溢れてきたトンネルだ。


「第二小隊、準備完了!」

「よし。これより我々は、中へ入る!

中で何があるか分からないが、命大事に探索を行う!」

「「「はい!」」」

「では、前進!」


陸自の第二小隊が、防空壕として使われていた洞窟型のトンネルへ突入する。

そして、トンネルを十メートルほど進むと地面が石でできた床が現れる。


隊長の合図で、第二小隊は停止する。

そして、床を調べ始めた……。


「……隊長、石でできた丈夫な床です」

「罠などの設置物は、見受けられませんでした」

「化け物の姿も、確認できません」

「よし、前進を再開する」


隊長の指示で、再び前進する第二小隊。

小銃を構えて、いつでも撃てる態勢で前進する。

また、周りを警戒しながら進んでいるので、ある程度進むまで時間がかかる……。


「隊長、扉を発見しました」

「……こちらでも確認した。

ここまで、人が二人ほど横に並んで通れるほどの通路だったが、ここに来て扉か……」

「隊長、これってもしかして……」

「何だ、小島二尉。

これが何か、分かるのか?」

「隊長、これは扉で間違いないでしょう。

そうではなく、ここってもしかして、ダンジョンと呼ばれる場所ではないでしょうか?」

「ダンジョン?」


小隊の隊員である小島に指摘され、他のメンバーも周りを見て納得してしまう。

そして、隊長も周りを見直して言われてみれば、と納得していた。


「ということは、あの化け物たちは魔物か?」

「え? なら、あの現象ってスタンピードだったってことか?」

「何だ、そのスタンピードって……」

「隊長、ダンジョンを知っていてスタンピードを知らないんですか?」

「知らん!」


部下にバカにされたように言われ、隊長はムッとして答える。

それを宥めるように、小島二尉が優しく教えた。


「隊長、スタンピードとは、ダンジョン内での魔物の数が増えすぎたため、ダンジョンが自己防衛のために外へ魔物を排出する現象のことですよ。

これは、ダンジョン内の魔物を間引いていれば防げる現象だそうです」

「ほう~、そんなことがあるのか……」

「でもそうだとすると、この扉の向こうは、魔物が出現するダンジョンということに……」

「「「……」」」


第二小隊の面々は、扉をじっと見てこの先がどうなっているのか考えて震える。

ここはいったん外に出て、報告を行い、準備を整えて再度挑戦するべきだ。

隊長はそう考え、第二小隊に退却を指示するのだった……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


コアルームで、世界各国で地表に出てきた魔物の討伐に成功したという報告を見ている。

そして、日本をはじめとして各国魔物の出現場所まで到達し、ダンジョンの入り口を発見、その後、各国で調査を繰り返している。


そんな中、ダンジョン企画に調査が入った。


魔物が溢れ出てきた場所が、ダンジョンであったことがその調査の理由だ。

ダンジョン企画が、今回の事件に関与しているのではないかという政治家がいたらしく、そのために総理が内閣調査室を動かしたらしい。


でもまあ、今の総理大臣は父さんの知り合いだし仲は悪くない。

その辺は、忖度を働かしてくれるだろう。

それに、ダンジョン企画を調査しようと、何も出てくることはない。


あくまでダンジョン企画は、ダンジョンパークの運営代行でしかないのだ。

すべての黒幕は俺なのである。


……まあ、今回の魔物のスタンピードは俺のせいではないが。

そんな計画をした覚えもないし、ミアたちも関わっていない。

本当に、自然に野良ダンジョンが生まれ、スタンピードが発生したのだ。


これは、防ぎようのない事故なのだ……。


それはともかく、今後世界各国は野良ダンジョンをどうするんだろうな……。

民間に開放して、探索者を募集するか?

それとも、国で管理して自衛隊を使って、ダンジョンを掌握するか?


「ん~、どうするんだろうな~」

「野良ダンジョンのことですか? マスター」

「ああ、野良ダンジョンのある国は、どうすると思う?」

「そうですね……。

ダンジョンから産出する物は、価値あるものだけとは限りません。

それに、魔素の影響を受けるとはいえ、今の地球人は魔法が使えませんから、今は無用の長物といったところでしょう」


そう言えば、魔法が使える地球人が誕生したって言っていたな。

ダンジョンの恩恵を受けるのは、次世代ってことか……。


「でも、使い方次第で恩恵を受けることもあるんじゃないか?」

「それには、私たちを利用しなければならないでしょう。

後、マスターは今後、ダンジョンパークをどういたしますか?」

「ダンジョンパークを?」

「はい。

地球は、魔素に覆われました。

魔法が使える人間が生まれ、魔素の影響で姿を変えた動植物や人間も現れています。

もう少し混乱は続くでしょう。

そうなれば、ダンジョンパークを開園する意味がなくなるのではないですか?」


ダンジョンパークを開園している意味か。

最初は、ファンタジーを体験する目的で開園したはずなのに、いつの間にか地球の方が変わっていってしまった。


まあ、原因は俺やその関係者にあるわけなんだが……。


それに、地球が魔素で覆われたということは、ダンジョンパーク内の異世界人たちが地球に出て行っても問題ないということ。

現に、陸斗が連れていたし、他にも連れて行っているみたいだしな。


まあ、テイムモンスターで人殺しが起きるとは思わなかったが……。


「……どうするかな~」


椅子の背凭れに体を預けて、上を見ながら考える。

すぐのすぐ閉園することはないだろうが、今後どうするか考えないといけない時期に来たのかもしれないな……。







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