第346話 異世界の混乱
Side 魔王ディスティミーア
魔王のダンジョンの最下層にある町の中にある、私の屋敷の執務室。
私はその部屋にある椅子に座って足を組み、機嫌悪く報告書を読んでいる。
「ヴァラク、この報告書にあることは事実なの?」
「はい、間違いございません。
魔界に住まわれている、他の魔王様方からも報告を受けております」
ヴァラクの持ってきた報告書の内容に、私は混乱している。
その内容とは、現在魔界では、正体不明の悪魔たちが暴れているというものだ。
確かに、魔界に悪魔は存在している。
本来魔界には、魔族が住み着き、その主として魔王がいる。
魔王は、それぞれでまとめている場所がありそこに住む魔族たちを守っているということだ。
悪魔は、神殿にいる魔神様の側に仕える存在としている。
数もそう多くなかったはずだが……。
「悪魔が暴れるなど、魔神様が復活なされたのか?」
「いえ、魔神アルデバラン様は天魔戦争の時に、女神たちによって封印されたままでございます。
あの時から、一度も封印が解けたという報告は受けておりません。
それに封印が解けたとしたら、魔界は大変なことになりますので……」
「そうでしょうね……。
なら、何故悪魔たちが暴れていると?」
「神殿近くの魔王様の報告なのですが、どうも新しく出現した悪魔が暴れているとか。
そして、古参の悪魔たちに対して戦いを挑んでいるとか……」
「……どうして、そんなことに」
新しい悪魔の出現?
そんな悪魔が生まれたという報告はない。
それに、魔界にはこの場所と繋がった門があるが、外部から悪魔が入ったという報告もなかった。
ならば、どこから悪魔が出現したのだ?
「魔王様、こちらの報告書が原因究明になるのではないかと……」
そう言って、ヴァラクが差し出した報告書は、魔界側の門の管理をしている魔王の報告だ。
そこには、魔界の門がもう一つ出現したとある。
「魔界の門が、増えた?!」
「……」
驚く私に、ヴァラクはすました顔で控えている。
おそらく、事前に読んでいたのだろう。
だが、魔界の門が増えたとはどういうことだ?
「ヴァラク、魔界の門が増えたとはどういうことだ?」
「分かりません。
その魔王様の報告では、ある日突然出現したとだけ……」
「……で、この新しく出現した門から悪魔が出現したと?」
「おそらくは……」
「すぐに、どこと繋がっているのか調べろ!」
「ハッ!」
そう返事をして一礼すると、執務室を出ていった。
それにしても、新しい魔界の門だと?
誰がこんなことを……。
▽ ▽ ▽
Side プリラベーラ
私は、浮遊大陸にある自分の屋敷の自分の部屋で、本を読んでいました。
そこへ、アルテミスが慌てて部屋に入って来ます。
「プ、プリラベーラ様! 大変です!」
「アルテミス、部屋に入るときはノックを忘れてはダメでしょう?」
「も、申し訳ございません!
ですが、今はそれどころではございません!!」
何やらいつも冷静なアルテミスが、かなり慌てています。
何かあったのでしょうか?
すでに、ここへ乗り込んできていた勇者たちは、自分たちの目的をもってこの浮遊大陸から旅立ったというのに……。
「何があったの、アルテミス」
「外を! 外をご覧くださいませ!!」
「外?」
私は、読みかけの本をテーブルに置くと、席を立ち窓へと近づく。
すると、何かがサッと横切るのが見えた。
私の部屋は三階にある。
横切れるものといえば、鳥しかいないがここは浮遊大陸。
この浮遊大陸に、動物の鳥はいない。
魔物でも、空を飛ぶものはいない。
では、何が横切ったのか……。
私は急いで、窓に近寄り窓を開ける。
すると、浮遊大陸の空を飛び回る、天使の姿を見てしまった。
「天使……?」
「はい、天使様でございます!
天使様が、天界の門より出現したのです!
それも、こんなにもたくさん……」
アルテミスの言うように、天使がいっぱい空を飛んでいた。
だが、何やら怒っている天使が多いみたい。
『ふざけるなよ、あの悪魔ども!!
いや、大天使ガブリエル!!』
『ミニラエル、これからどうする。
ここがどこだか分からないが、地球に繋がっている場所ならわかるぞ』
『ならそこを目指しましょう。
今度は邪魔が入らないようにして、あの悪魔どもを根絶やしにするのよ!!』
『『『『おお!!!!』』』』
天使たちの会話から、悪魔との戦いをするらしい。
天界で、何かあったのだろうか?
天界の門から出現した天使たちは、翼を大きく広げて飛び去って行く。
かなりの数だが、私の目がおかしくなったのだろうか?
天使たちの中に、翼の色が変わり始めている天使が何体かいたような……。
「アルテミス、天使たちの中に翼の色がおかしかったものがいませんでしたか?」
「プリラベーラ様も見ましたか?
私も、天使様の中に翼の色が、白から灰色に変わり始めている天使様を見ました。
どこかお悪いのでしょうか……」
天使の翼の色が変わる。
確かそれは、堕天といって堕ちるという意味だったと思います。
つまり、神々の側から地に落ちるという……。
いえ、私たちの見間違いでしょう。
それにしても、天使たちはどこへ向かったのか……。
▽ ▽ ▽
Side ???
天界の門が二つですか……。
なぜ、繋がったのかは分かりませんがこれは好機でしょう。
『女神様、地球にご挨拶に行かれては?』
『そうですね、近頃はいろいろとご迷惑をおかけしているようですし』
『では、最高神様に地球の神とのアポを取ってもらっておきます』
『よろしく。
さて、他の女神にも声をかけてみんなで行ってきますわね~』
『分かりました』
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