第345話 アメリカの混乱
Side ???
『大統領、化け物どもがニューヨークにまで到達しました!
ブロンクスから、マンハッタンにまで侵攻しています!』
『人々の避難はどうなの?』
『すでに、七十%が避難完了しています。
しかし、まだ残っている者たちもいて……』
『とにかく、避難が完了するまで迎撃をさせて!
幸い、西海岸は化け物が現れていない。そっちに避難を急がせて!』
『了解しました!』
アメリカのどこかにある地下施設で、私は指示を出している。
大統領として、国民の命を守ることは使命なのだ。
しかし、カナダとの国境付近にあるキングストンの東側からあの化け物たちが溢れるように出現し、放射線状に広がるように侵攻してきた。
最初に襲われたと報告のあったキングストンなどは、かなりの被害が出たそうだが詳しい情報がここまで来ない。
情報がほしい思っていたところへ、一人の女性が入ってきた。
報道官のアニーだ。
『大統領! 今、このような情報が私の元に!』
『?』
一枚の紙を私に渡してきた。
そこには化けの物と対峙している軍からの報告で、化け物の正体はダンジョンパークで出現している魔物と酷似している。
ゴブリン、オーク、ダンジョンオオカミ、グレイトボア、他にもいろんなゲームに出てくるような魔物の名前が記されていた。
『……アニー、一報道官のあなたにどうしてこんな情報が?』
『分かりません。
国民に知らせてくれとだけ……』
そう言って、アニーは執務室にいて私と一緒に仕事をしている国務長官のフレングを見る。
『フレング! この報告は何?!』
私の怒号で、こちらを向くとアニーに気づいて驚いている。
どうやら、この男がアニーに指示したことで間違いないようだ。
私たちに近づき、私の持っていた紙を手に取って見ると口を開く。
『大統領、国民には何が起きているのか知る権利があります』
『だからといって、避難場所になっているダンジョンパークが危険な場所のような報道は控えるべきでしょう!』
『ですが! ……すでにネット上では、その話題で持ちきりです。
現場の兵士たちも、ネットに状況を上げているのです。
政府としても、国民に情報はきちんと開示するべきです』
『……ならば、ダンジョンパークは危険ではないことを証明しないといけないわね』
『それは……』
『チャーリー! すぐに、日本のダンジョン企画へ情報開示するように要請をしなさい!』
『は?! 情報開示って、何の情報を……』
『ダンジョンパークのことに決まっているでしょ!
安全か安全じゃないかだけでも、確認しないさい!』
『は、はい!』
三人の男たちと話し合っていたチャーリーは、すぐに会話を切り上げ走り去っていった。
私のいつもと違う怒号に、驚いたのだろう。
いつもの私は、お淑やかなイメージを前面に出していたからな……。
それにしても、避難場所として利用させてもらっているダンジョンパークに出現する魔物と酷似しているなんて、気づかなかったわ。
前線からは、化け物としか報告がないからね……。
▽ ▽ ▽
Side 五十嵐颯太
はぁ~、とうとうアメリカにまで魔物が出現した。
魔物が湧き出た場所は、カナダとアメリカの国境付近。
野良のダンジョンがあったわけではないが、魔物は噴き出るように出現したそうだ。
次から次へと魔物が現れて、人々を襲っていったとか。
中には抵抗した人達もいたようだが、数の暴力にはかなわず押し込まれていったらしい。
警察からすぐに政府へと報告が行き、軍の出動までは早かった。
だが、犠牲者は多く、数多くの町中が今や戦場となっている。
「で、ニューヨークの町にも押し寄せたってわけか……」
「主に、ワイバーンが多く飛び交っているようですね。
避難が遅れて、かなりの犠牲者が出たとか……」
「銃社会のアメリカといえど、魔物相手には苦戦するか」
まあ、誰でも彼でも銃を持っているわけじゃないし、戦う選択肢は最後の手段だろうな。
まずは、逃げる。
人の行動というのは、どの国でも同じだと思う。
「それと、ロスの方には魔物の目撃情報はないんだね」
「どういうわけか、東側に集中して魔物が出現しているようです。
アメリカのダンジョンパークも、今のままの状態で避難場所となりました」
「そうか……」
アメリカのダンジョンパークは、空いている階層があったはずだからそこを避難場所としたんだ。
また、最初の階層にあるダンジョン都市も解放しているから、そこも避難場所になるだろう。
後は、日本のダンジョンパークと繋がる街道を設置して、食糧事情の手助けを……。
でも西側は、魔物が出現してないから大丈夫だと思うんだよね。
SNSの書き込みの中には、ダンジョンパークは危険だという投稿があるから避難場所をダンジョンパーク以外にする人も出ているようだし……。
「マスター、地上にあふれ出た魔物はどう対処しますか?」
「今のところ、俺たちが手を出すことはできない。
何故なら、こちらから送り込む戦士たちが魔物に間違えられそうだからな……」
「……そういえば、こちらの戦士はゴーレムが主でしたね」
「ああ。だから、出て行ったら魔物に間違えられて撃たれるぞ?」
「……儘、なりませんね」
「それが、現実の世の中だ」
助けに来たのに、間違って撃たれてしまう。
現実にも、そんなことが起きるんだからヒーローたちは大変だな……。
コアルームで、ミアと一緒に日本のテレビ映像に映るニュースを見ながら、報告を聞いていたがやるせなくなってしまった。
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