第343話 緊急速報



Side ???


北の大国の首都モルクワは、あちこちで黒い煙が立ち昇っていた。

いろいろな場所で、事故を起こしている自動車、店のガラスは割られ、店内も滅茶苦茶になっている。


そんな町中の通りを、銃を持った兵士たちが何人も走って行く。


『中尉! ドローンの映像はこの先か?!』

『そうであります!』

『よし! 全員、弾薬を確認しろ!

……いくぞ!』


ビルの影から、兵士たちが飛び出して銃を構える。

その先にいるのは、豚の化け物のオークの集団だ。

二足歩行で、二十体ほどのオークが獲物を探しながら歩いていた。


『撃てー!!』


パンパンという爆発音が連続で辺りに響くと、兵士に近い位置にいるオークから地面に倒れていく。

しかし、一発でオークを仕留めることは難しく、何発も当てなければならないようだ。


兵士の声を聞き、オークたちは勢いをつけて襲いかかる。

銃弾に倒れるオークもいるが、兵士に襲いかかったオークもいる。

十人の兵士の内、前で銃を撃っていた三人がオークの犠牲になりつつも、二十体のオークは兵士たちの攻撃に全滅する。



オークを仕留めた後の張り詰めた空気の中、弾倉の交換に手間取る。

手が震え、弾倉の交換がうまくいかない。


『ヤーニフ! 落ち着け!』

『?!』


大声とともに肩を叩かれ、視界が開けた。

そして、俺の肩に手を置く同じ隊のニルチェに気づいた。


『ニルチェ……』

『大丈夫か? かなり震えていたけど……』

『ロマノたちは……』

『……』


ニルチェは、視線をある場所に向ける。

それは、豚の化け物が襲ってきた前方。

そこには、三人の兵士の死体が転がっている。


『ロマノ……』

『あいつらは化け物に襲われた後、かなりの出血をしていた。

もっと化け物を早く全滅させていれば……』

『う、うぅ……』

『泣くなヤーニフ! 俺たちは、国を守るために戦わないといけないんだぞ!』


……そうだ、泣いてる暇なんてない。

今、モルクワは化け物の襲撃を受けているんだ!

俺たちが戦わないで、誰が国を守れるっていうんだ!!


『全員! 残りの弾丸を確認しろ!』

『『『『残弾、問題ありません!』』』』

『こちらも、残弾問題ありません!』

『同じく! 残弾問題ありません!』

『よし、行くぞ!』


俺たちの隊の前進は止まらない。

仲間の屍を乗り越えて、この町に現れた化け物たちを殲滅する……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


ニュースの映像を見て、すぐに虫ゴーレムを使い現場を確認する。

すると、北の大国の兵士たちは銃を持ち魔物たちと戦っていた。


「近代兵器で、魔物たちを倒すことができるんだな……」

「マスター、異世界物のラノベや漫画の影響を受け過ぎです。

近代兵器でも、魔物に効果はあります。

もし効果が無いとすれば、それは耐性スキルを持った魔物だけでしょう」

「耐性スキル?」

「はい、例えば物理耐性や魔法耐性などですね。

もちろん、すべて防げるわけではありませんからダメージが何パーセントか減るというだけでしょうが……」


なるほど、近代兵器でも倒すことはできるわけか。

そう言えば、核で魔物を殲滅していたな……。



『ああ! 兵士たちの後ろから、黒い狼のような化け物が!

宮地さん、兵士たちに知らせることはできないんですか?!』

『ここからじゃ無理だよ。

とりあえず、ここにいる軍関係者に話をしてくる!』


テレビの画面から、悲痛な声の中継アナウンサーの声が聞こえた。

何やら、兵士たちの後ろから黒いオオカミみたいな魔物が近づいているのを発見したらしい。

そして、危険が迫っていることを何とか知らせることはできないか、現地のスタッフと話し合っている。


スタッフの男は、携帯を取り出し、どこかに連絡しているようだ。

そして、ドローンで撮影されている兵士に連絡がいったらしい。

すぐに、後ろを警戒し狼の魔物をやり過ごそうとしたようだ。


『あ、戦いが始まりました!

今、前線の兵士たちが、町中で戦いをはじめました!』

『相模さん? 援軍はないんですか~?』

『……援軍は無いようです!

政府の話では、一つの隊の任されている範囲があるそうで、その範囲以外の化け物に対してのみ二つの隊で対処するようです!』

『ありがとうございました~』

『次のニュースは、政治家の……』


モルクワの様子や、戦いの様子も確認できた。

ニュースに出せる範囲ではあったが、町中の映像を見るかぎりスタンピードの恐ろしさは理解できる。


また、少しだけビルの上の方を映した映像があったが、ワイバーンの存在も確認した。

町中に攻め込んだ魔物の数が少ないように見えたのは、モルクワの町が大きいからだろう。


ビルの火災も見えたし、あちこちで戦いは行われている。


「何れ、町中に戦車などの大型兵器が入ってきて戦うことになるだろうな……」

「ワイバーンの姿を確認しましたから、北の大国は持ち込むでしょう。

そして、手に負えなくなったころ合いで……」

「核攻撃か?」

「はい、あの国にも核を使いましたから、躊躇する国ではないでしょう」


自国に向けて、核を撃つ国……。

本当に撃つかどうかは別にして、北の大国が撃たなくても周りにいる核を持つ国が撃つかもしれないな。


自国を守るために。

そんな大義名分で、躊躇なく撃つ、か……。



ピッピ、ピッピという音とともに、テレビ画面の上に速報が入る。

テレビ画面、接続しっぱなしだったな……。


「……マスター、この速報……」

「……ウクライナ東部に、モルクワを襲っている化け物と同じような化け物の集団が現れたぁ~?」


……スタンピードが、拡大している?

それとも、モルクワを襲った魔物たちとは別の魔物たちがウクライナに入ったのか?


クッ、情報が少ない!

すぐに、情報を収集して確認しないと……。






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