第341話 一応の解決と



Side 五十嵐颯太


都内にある、大型スーパーの駐車場の一角の物陰に俺たちは隠れている。

ここは、神田さんが盗んだものを受け渡した目に浸かっている場所だそうだ。

そして今、神田さんは黒い革製の鞄を持って、目印となる赤いマフラーをして待ち合わせ場所に来ていた。


「……来ないね?」

「……あと、五分ほどで指定の時間です」


相手が来ないことに、俺が焦っていたようだ。

側にいたミアが、スマホの時間を見て教えてくれた。


「しかし、こんな場所を受け渡し場所にするなんて……」


大型スーパーの駐車場は、結構利用者が多く目立つ気がするんだけどね……。


「だからこそ、このような時間に指定しているのでしょう。

深夜の駐車場は、たとえ二十四時間営業であろうとガラガラですから……」

「確かに」


俺は、駐車場を見渡しながらミアの意見に納得した。

確かに、こんな隅の駐車スペースに車をとめに来る者はいないよな……。


そんなことをミアと話していると、指定の時間となり白いバンが近づいてきた。

俺たちは、見つからないようにさらに物陰に隠れた。


ヘッドライトに照らされる神田さん。

白いバンは、神田さんを確認してゆっくりと横付けした。

そして、後ろのスライドドアが開く。


「お待たせ、彩ちゃん。

今回もうまく依頼をこなしてくれたようで、ありがとさん」


金髪の男が姿を見せて、神田さんに声をかける。

だが、神田さんは嫌悪感のある表情になって少しだけ離れた。


「おいおい、そんな顔をするなよ。

俺は、彩ちゃんを愛しているんだからよ~。

傷つくじゃねぇか」

「フンッ!」


神田さんは、有無を言わせず鞄を突き出し、すぐに取引を終わらせようとする。

だが、突き出された鞄を見て金髪の男がニヤリと笑った。


「盗んだものが入った鞄か?」

「ええ……」

「……中身を確認する、ちょっと待て」


そう言って鞄を受け取り、チャックを開けて中身を確認する。

ごそごそと鞄の中を探り、何かを掴んで外に出した。

すると出てきたのは、依頼された宝石のルビーではなくただの石だった。


「……彩ちゃん? 何これ」

「……」

「てめぇ! ふざけてんじゃねぇぞ?

てめぇの家族がどうなってもいいのか? あぁん?」


ものすごい怒りの表情で、神田さんを睨む金髪の男。

そこに、いろいろな場所からライトの光が照らされた!


『そこまでだっ!!』

「?!!」

「な、何だ?!」

「慧さん! これって!」

「クソッ! おい出せ! 車を出せ!」

「は、はい!」


金髪の男は、すぐにスライドドアを閉めようとすると、何か黒いものが車内に投げ込まれた。


「何だ?!」


何が投げ込まれたのか確認しようとして探そうとしたとき、投げ込まれたものが爆発する。

強い閃光が、車内を照らした。


「?!! 閃光弾かッ!」


そして、すぐに白いバンが動き出し、駐車場の壁に激突した。

金髪の男は、白いバンが急に走り出したため車外に落ちる。


「う、うう~」

『確保ぉー!!』


そこに、十人ほどの警察官がなだれこみ、白いバンに乗っていた男たちは捕まっていく。

もちろん、車から落ちた金髪の男も捕まり、神田さんは保護された。


俺たちは、神田さんを助けようと知恵を振り絞り話し合った結果、警察を利用することにした。

もちろん、ダンジョン巫女としてミアが協力するということで、ダンジョン企画から話を警察にもっていき今回の逮捕劇となった。


神田さんにも、事前に詳細を説明しており協力してもらった。


神田さんは、以前から盗みの件で何度も警察に出頭しようとしていたことから自首扱いということにしてもらえた。

また、神田さんの家族の件も警察と協力して動いていて、連中を逮捕した時点で無事保護している。


警察に逮捕され、連行されていく連中と保護されて連れて行かれる神田さんを見て、事件解決と俺は安堵した。


「これで、事件は解決といっていいのかな?」

「いえ、まだすべて解決したわけではありません。

こちらで最後の仕上げをしておきませんと……」

「……そうだね」


ルシファーからすでに、組織のトップが出頭することは聞いている

また、イシュタルの方もルシファーの協力で解決に向かっていると報告を受けている。


最後の仕上げとしては、金髪の男たちに催眠をかけて、今までの罪を告白させれば完了だ。

罪を償わせて、後は世間が裁いてくれるだろう。

まあ、何かあれば、こっちで始末すればいいんだし……。


事故を起こした白いバンを、レッカー車を呼んでかたずけようとしている警察官たちの様子を見ていると、エレノアが近づいてくる。


「マスター、すぐにコアルームに戻ってくれる?」

「ん? 何かあったのか?」

「コアルームで、説明するわ……」


そう言って、俺たちに移動するように促してくる。

ここでは、話しにくいことなのか?

そんなことを思いながら、ミアと一緒に駐車場の一角から移動しコアルームへの扉を出現させる。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


コアルームへ移動して来て、いつも座っている椅子に座る。

そして、エレノアを見た。


「マスター、ダンジョンパークの七階にある天界の門と魔界の門のことなんだけど……」

「天界の門と魔界の門?

その二つの門が、どうかしたの?」


大天使ガブリエルが、地球に現れた天使と悪魔を封印するために使っている二つの門だ。

俺が、DPとの交換で出現させて使ってもらっている。

普段は、ファンタジーダンジョンパークの七階に置いてあるのだけど……。


「実は、その二つの門が異世界にある二つの門と繋がったみたいなのよ……」

「……は?」







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