第312話 厄災?は現れた



Side ???


それは、北海道の北側に住むダンジョンマスターが、召喚したものだった。

苦労してダンジョンコアを集め、レベル七十七となった時、DPの交換リストに召喚術というのが現れたらしい。


そのダンジョンマスターは、疑うことなく召喚術を選びDPと交換。

そして、すぐに召喚術を使った。


……だが、目的もなく召喚術を使えばどんなものが呼び出されるか。

それは、燃える一軒家を前にニヤニヤしている女性だけが知っている……。


「フフフ、私を呼び出すなんてなんて運のない男なのかしら……」


その女性は、普通の日本人ではなかった。

髪は真紅の色をしていて、腰まで延びるほどの長さだ。

瞳は金色に輝いていて、時折、銀色にも見えた。


服は、雪が積もる冬の北海道にもかかわらず白いシーツを纏うだけだった。

そのため、大きな胸と形のいいお尻が主張する形となってしまっている。


ただ、人と違うところもあり、頭には黒い大きな角が左右にあり異様な形をしていた。

また、尻尾も生えており、その形はまるで悪魔そのものだった。


「それにしても、ここはどこなのかしら?

周りは雪だらけだから北の方なのでしょうが、私の知らない木が生えているわ……」


召喚された女性は、街灯を見て、知らない木だと認識した。


「まあ、いいわ。

んん~~……、久しぶりに太陽の下に出られたのだから……」


そう言って、頭上に輝く太陽を眩しく確認する。

この女性にとって、太陽の下も弱点にはならないようだ……。


「さて、まずは着る服とかを調達に行きましょうか。

それに、私を召喚した男は始末した。

今は、自由を満喫するときね!」


そう一人で宣言すると、魔法で空を飛び、人の多い場所を目指した。

ここに、地球に混乱を招くかもしれない厄災が召喚されたのだった……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


「で、その召喚術を使ったダンジョンマスターは?」

「焼死していました。

名前は、永戸英二郎、二十六歳。

ネットの攻略サイトで推奨していた、動物を使ってDPを稼ごうという配信動画をよく見ていたようです。

そして、実施してみたのでしょう。

焼け残った家の跡に、永戸さんのダンジョンが存在していました。

レベルも七十七と高く、収集力もあったと思われます」


日本の北海道で、悪魔の反応がいきなり出現した。

北海道の辺りは、さらに北にある国の影響で少し警戒していたので、今回の早い察知となったのだ。


しかし、悪魔を召喚するとは、何を考えていたのか……。


「マスター、召喚された悪魔はいかがいたしましょうか?」

「今は、どこを移動しているんだ?」

「現在は、南へゆっくり移動しています。

おそらく、歩いて移動していると思われます。

それと、襲われた商店ですが店員たちの無事が確認されました。

警察も動いていて、接触は時間の問題かと……」

「ん~、まずいな……」

「はい、警察で対処できるとは思えません」

「とりあえず、ダンジョン企画の父さんに連絡する。

警察には、存在を確認したら不用意に近づかずに、住民の避難を優先してほしい、と」

「分かりました。

では私どもは、虫ゴーレムを使って監視をしておきます」

「ああ、よろしく。

どんな力を持っているか分からないからね。

今はとにかく、近づかないように」

「分かりました」

「エレノアたちにも、連絡を入れといてくれ」

「了解です」


厄介な奴が、日本に現れたな。

でも、ダンジョンから出てきたとなると、他のダンジョンでも召喚されて出てきそうだな。

それに、悪魔を呼び出したということは、他にも呼び出せるということ。


この地球で、悪魔対天使の戦争なんて、冗談じゃないぞ?




▽    ▽    ▽




Side ???


「フン、フン、フン♪

なかなかいい素材の服が手に入ったわ。

この世界は、靴も軽いし魔素もある程度ある。

私のような悪魔にとっても、過ごしやすい世界かもしれないわね……」


私は、足取りも軽く、弾むように道を歩いていた。

時々、人間に見つかるが、目が合うとすぐに隠れてしまう。


……私、そんなに怖い姿をしているのかしら?

それとも、この美貌が原因か?


「フフフ、美しいことは罪なことなのね……」


まあいいわ、この世界の人間なんて敵にもならない。

魔力が無い者ばかりで、私に対抗できるとは思えないし……。


『パン!!』


いきなり何かの破裂音が、静かな雪道に響いた。

そして、私の左肩に痛みが走る。


私は、右手で左肩を押さえ、右手を見える位置に持ってくると赤い血がついていた。

私の血だ……。


「……く、熊かと思ったら、人じゃねぇか?!」

「な、何?!

源三!! 周辺を見て撃ったのか?!」

「見たぞ? ちゃんと周辺を確かめて、そしたら黒い影が……」


二人の男が、かなり焦った表情で言い争いをしている。

そして、手に持っている長い杖で攻撃したのだろう。


『あ、あなたたち……』

「す、すみません!! おい大吾! すぐに救急車だ!!」

「そ、そうだ!」


そう言うと、焦った手つきで服の下から小さい板を取り出し、何か操作している。

じっと男たちを見ていて気づいたが、この二人から魔力を感じない?

ならば、どうやってあの杖で攻撃を……。


それに私に対して、悪意を持って攻撃したわけではないようだ。


私は、右手に魔力を込めて回復魔法を使い、血が出ている左肩を治した。

その光景に、板にしゃべりかけていた男も私を心配していた男も、唖然と驚いている。


「あ、あんた、それは……」

『回復魔法よ? 珍しいものでもないでしょ?』

「あ、あぇ? その容姿から、日本人じゃないと思ったが言葉が通じてないか?」

『通じているわよ?』

「あ~、源三、何言っているか分かるか?」

「すまん、俺にも分からん。

英語じゃないみたいだし……」

『英語? 何を言っているの?』


二人の男は、私の言葉が分からないようだ。

でも私は分かる。


……どうなっているのかしら?







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