第313話 俺も召喚しました



Side ???


『私は今、札幌市から少し北に行った場所に来ています。

周りの景色を見てもらえれば分かると思いますが、ここは雪がかなり積もっていて冬の間は通行が規制されている場所になります』


そう説明すると、雪の中を歩いて女性レポーターが歩いていた。

朝起きて、何気なくテレビのスイッチを入れると、情報番組を放送していた。


『カメラさん、あそこを映せますか?

今、私たちは警察から情報のあった女性をかなり離れたところから撮っています。

分かりますでしょうか?』


テレビに映る映像が、ブレながらもだんだんとレポーターの言っていた女性に焦点が合うと、俺は全身に電気が走った。


「う、美しい……」


頭の角や尻尾が気になるが、それでも女性としての美しさが勝っている。

あんな女性を、恋人に持つことができれば……。

そんなことを考えて、ふと気づいた。


「……この女性って、もしかして?」


見た目は悪魔、だがその美しさは天使のようだ。

コスプレをした女性のように見えて、本物のような感じをしている。

となれば、こんな女性を呼び出すのは召喚術だろう。


もしかして、ダンジョンマスターのDP交換リストにあった召喚術を使って呼び出したとか?

それなら俺も、召喚することができるのではないだろうか?


考えれば考えるほど、うまくいくような気がしてくる。

あんな美しい女性に、かしずかれてあ~んなことや、こ~んなことを……。


「うっ?!」


想像だけで、前屈みになってしまった。

これはすぐに、実行しなければ!



俺は、テレビを切ると自分の部屋に設置しているダンジョンに入る。

ダンジョンアプリを使って、レベル四十まで上げたダンジョンのDP交換リストに召喚術が載っていた。


すぐに交換して、召喚術を使う。

もちろん、あのテレビに映っていた美しい悪魔のような天使を思い浮かべて召喚した。


「おお?!」


ダンジョンの地面に、召喚魔法陣が出現し眩しく光っている。

そして、何かが魔法陣から出現する……。


「クッ、眩しくてシルエットしか分からない……。

でも、あのシルエットは女性のようだ……」


長い髪に大きな胸、そして形のいい腰……。

俺の理想の女性が、魔法陣の上に現れた。


「お、おお……」


何もつけていない、真っ裸の女性が仁王立ちして俺を見ている。

その美しさ、そして……。


「あ、ああ……」

『……貴様が、我を呼び出したのか?』

「へ?」

『なんじゃ、言葉が通じておらんのか?』

「な、何を言っているんだ?」


怪訝な表情をして、俺を上から下へ、下から上へとジロジロと見ている。

その目に、俺はなぜか興奮してしまう。


『フム、魔力のない人間じゃな。

なぜこのような人間が、我を呼び出せたのじゃ?』

「あ、ああ」


俺はゆっくり近づく。

この召喚した女性に、触れてみたい。

そして、俺のものに……。


そんな考えが、俺の頭の中を支配し始める。

そして、他の考えが思い付かなくなってくる……。


『……どうやら、我の魅了に罹ってしまったようじゃな。

目の色が、だんだんと変わり始めておる。

……このままだと、本能のままに動くゾンビみたいになってしまうな……』

「あ、ああ……」

『この世界がどんなところか分からぬ今は、下僕は必要よな……【×××××!】』


召喚した女性が何か叫んだ。

その瞬間、俺の意識が元に戻る。


「……あれ?」

『さぁ! 我と契約せよ!!』

「え?」


召喚した女性は、背中から白い大きな四枚の翼を広げると俺とキスをした。


「んむっ?!」

『……』


ゆっくりと、余韻を楽しむように唇を離す。

そして、ぺろりと女性は自分の唇をなめた……。


「あ、え……」

「これで、お主は我の下僕となった。

どうじゃ? 我の言葉が分かるようになったであろう?」

「あ、わ、分かる。

あなたが、何を話しているか分かる……」

「よしよし、では其方の名は?」

飯田和義いいだかずよし

「では和義、我の名はガルスリール。

上位天使のガルスリールじゃ。呼び方はお主に任せるが、まずは着る服を用意せよ」

「は、はい!」


……なぜか、ガルスリール様の言うことを聴かなくてはいけない気になる。

さらに、女性の裸を前にして疾しい気持ちが全く湧かない。

俺、女好きだったのにどうなっているんだ?




▽    ▽    ▽




Side ???


テレビの情報番組を見ていると、世の中がファンタジーな世界に変わっていっているのを感じる。


「時雨さん、こんなところで油を売ってていいんですか?」

「いいのいいの、今日は有休をとっているから、ね」

「だからって、私の所に来なくても……」

「陽子、良いじゃないの。

今日は、お祝いなんだから」

「お祝い、ですか」

「そう、私のダンジョンが、ついにレベル百になったお祝いだよ?!」


今日、朝からシャンパンなどを持ち込んで、こうして一日中お祝いをしている。

時雨さんも、普段はアプリを開発する会社の真面目な社員のはずなのに、いつの間にかファンタジーに染まってしまった。


ダンジョンコアを手に入れてダンジョンマスターに成った時は、泣きながら私の所に来たのに今ではダンジョンマスターに成れたことを喜んでいる。


DP変換で、生活に余裕ができたからだろうか?


「時雨さん、もうすぐクリスマスですけどいいんですか?」

「ん~? 陽子がいるから、だいじょう~ぶ~」


……これは、酔ってるな……。







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