第305話 おかしくなる親友



Side 森島由香


警察官と別れた後、司の家の玄関へ行こうとすると携帯が鳴った。

誰や? と思いながらスマホの画面を見ると、知らない番号やった。


「誰や? この番号……」


普段は知らん番号にはでぇへんのやけど、表示されてる番号からは出たほうがええような気がしたんで出てみる。


「もしもし?」

『お、出てくれた。

もしもし? 森島由香さんの携帯ですか?』

「……ええ、そうやけど、おたく誰?」

『あ~、オレオレ』

「今時オレオレ詐欺やなんて、古いで!」

『いや、詐欺じゃなくて、俺だよ、五十嵐颯太』

「……五十嵐君?」

『そうそう、繋がるかどうか分からなかったけど、繋がってよかった』

「……うち、携帯の番号教えてたっけ?」

『いや、教えてもらってないぞ』

「じゃあ、何で知ってんねん?!」

『ふっふっふ、実はな、知り合いの携帯番号を知る方法があるんだよ。

しかも、ダンジョンマスターだけができる裏ワザがな』

「ダンジョンマスターだけが……って、DP使って調べたんやろ!」

『残念、DP使うのは当たっているけど、調べたわけじゃないんだよな』


調べてない?

なら、どんな方法でうちの携帯番号を調べたんや?


『ダンジョンマスターが、DPを使って交換できるリストに人物鑑定っていう魔道具があるんだよ。

タブレットぐらいの大きさでな?

で、それに調べたい人の写真を取り込むといろいろと出てくるんだ。

その中には、携帯の番号まで表示されるからそれで分かったんだ」


人物鑑定?

うちはすぐに、ダンジョンと繋がっているタブレットを取り出しDPの交換リストを調べる。

すると、リストの下の方に人物鑑定というんがあった。


これか? とその人物鑑定をタップすると、2510万DPと表示される。

高っ?!

うちの持っとるDPで、交換できんこともないけど無駄遣いはできへん。

やっぱり五十嵐君は、DP持っとるんやな……。


「人物鑑定、高すぎるやろ?!」

『まあ、個人情報のことを考えればそのくらいになるんじゃないのか。

ああ、それより、喫茶店での話なんだけど……』

「そういえば、司の事お願いしとったな……」

『それなんだけどね?

その司君が取り込んだダンジョンコアを、破棄させれば元に戻るそうだ』

「はぁ?!」

『確か司君、ダンジョンコアを九つ取り込んでいるんだよね?』

「せや」

『その取り込んだ九つのダンジョンコアを、排出させて破棄させれば元の性格に戻るらしい。

破棄させるのが難しいなら、森島さんが取り込むっていう手もあるけど九つというのは多すぎる。

だから取り込めても、三つまでだろうね』


三つ……。

うちが、三つもダンジョンコアをとりこんだら性格変わるんちゃうの?

今の司のように……。


『他にも手はあるんだけど……』

「他の手?」

『でもこれには、もう一人必要になる。

それも、司君のために犠牲になる覚悟のある人が……。

そんな人、いるかな?』

「……おる! おるで! 覚悟は無いけど、責任取らせなあかん奴が!」


せや! 今起こっとるダンジョン騒動の関係者の一人!

絶対、責任取らせなあかん奴!

川田浩!


司にダンジョンマスターになりたいとお願いし、まんまとダンジョンマスターになってやらかした奴や!


『それなら……』




▽    ▽    ▽




Side 川田浩


「なあ司」

「ん? 何や浩」

「司は……、何で俺の願いを叶えてくれたんだ?」

「願い? ああ、ダンジョンマスターになりたいっちゅう願いか。

そら、親友やからやろ?

中学の頃からの友達やんか……」

「そ、そうだよな……」

「って、言うた方がうれしいんやろ?」

「え?」

「アハハハ、何や浩、気づいてもうたんか!」


司が、表情を歪めて笑い出した。

……こんな司、今まで見たことない!


「司?」

「浩、もう気づいとるんやろ?

浩を利用して、DP集めしとったことに……」

「……やっぱり、俺を利用してたんだ……」

「せや、浩がダンジョンマスターなりたい言うてきたときに、俺の利益になる作戦を考えたんや。

浩を喜ばせて、なおかつ俺の利益になる作戦をな?」

「司……」

「浩、ダンジョンマスターになってどやった?

いろいろ条件出して、制限かけてゲームみたいでおもろかったやろ?」

「……」


確かに、面白かった。

レベル制限や、交換できるリスト制限、普通の地球人は魔力を持たないからだんだんと魔力に慣れて、本物のダンジョンマスターになるように制限をかけたんだ。


ダンジョンコアを集め、他のダンジョンマスターと交渉や戦闘をしてどんどん集めてレベルを上げる。

そして、ダンジョンレベルが上がればDPの交換リストや、DPの獲得能力も上がるといったものだった。


「でも、制限設けてくれて助かったでぇ。

その制限のおかげで、DPの交換リストに仕掛けを施せたんやからな……」

「仕掛け?」


司の表情がおかしい。

悪魔のような笑みを浮かべて、俺を見ている。

……司って、こんな顔で笑うやつだったか?


「せや、おかしいと思えへんかったか?

DPの交換リストに、最初の方から若返りポーションとか、魅了ポーションとかあるんが……」

「……」


そう言えば、よく考えたらおしいよな。

若返りポーションなんて、世間に出ればパニックになるほどの話題になるはずだし、大金出しても欲しい連中はいる。


でも交換リストは、司が決めていたよな……。


「若返りポーションにはな、ある仕掛けが施されてんのや」

「仕掛け?」

「せや、それが制限時間や!」

「?! 制限時間て……」

「おもろいやろ?

若返った肉体に、制限時間を設けることで寿命が決まる。

くふふ……。

それに、若返りポーション使った奴からもDPを回収できるようにしといたんや」


まさか?!

ダンジョンに関係のない、一般人からDPを回収?

そんなことができるのか?


「まさか……」

「仕組みが分からんやろ?

これ考えるの、苦労したんやで……」

「司……」


おかしい。

司が、おかしくなっている……。







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