第304話 警察と今起きていること



Side 森島由香


うちは司に、後始末を任されたことに驚いている間に家に博と一緒に入られてしまった。

いろいろ言いたいこととかあったんやけど、後にしよう。

今は、この死体を報告せな……。


そう思って警察に連絡、十分絶たんとパトカーが三台きよった。



「もう一度聞くけどええか?」

「はい……」

「この女の人は、若返りのポーション飲んだおばあさんで、知り合いの男の子に魅了ポーションというのを使って虜にし、その司っちゅう幼馴染に近づいた。

で、その時に、いきなり苦しみだして地面の倒れ、そのまま帰らぬ人になった、と」

「はい、間違いないです」

「……なるほど。

ということは、これもポーション絡みの事件っちゅうわけか」

「何かお巡りさん、ポーションとかうちの言ってること、信じてくれるんやね」

「……森島さん、もしかして、ニュースとか見とらんのか?」

「ニュース?」


うちは、テレビはお笑いがほとんどでニュースは基本見てない。

ネットも、動画配信サイトがほとんどでニュースサイト見ることもないな……。


「最近な? ダンジョンマスターがどうのっちゅう話題があったやろ?

その関連で、ポーションっちゅう薬が世の中に出回ってなぁ。

その中でも、若返りポーションっちゅうのが年寄り連中の間で取引されてんのや。

で、その若返りポーション飲んで、昔の若い時分に戻れた~っていろいろとやりたいことやってな、ポックリ逝くっちゅうことが増えとんのや……」

「それって……」

「せや、今回のことと同じや。

若い男魅了して、自分の言うこときかせようとしてポックリ逝ったちゅうことやろな~」

「……」

「いい年こいて、何考えとるんやか……」

「高田さん、防犯カメラの映像借りていたんですが……」

「どないしたん?」

「まずは、見てください」

「ん?」


若い警察官が、タブレットをうちに経緯を聞いていたベテラン警察官に見せる。

司の家の玄関に取り付けてあった、防犯カメラの映像だろう。

その映像を見ているうちに、ベテラン警察官の表情が険しくなる。


そして、見終わると若い警察官と頷き合った。


「森島さん、あんたの話してくれた経緯と防犯カメラに映っとった映像が同じやった。

これで、あんたの話してくれた内容が一致したから事件性はないやろう。

ただな、ここに映っとる女が問題や」

「女? ここで死んだ?」

「そや。ここで死んだ女な、指名手配されとる女やった」

「え?!」

「雨宮詩織、推定年齢二十代前半。

半グレ組織のリーダーの女で、死体遺棄と殺人の嫌疑がかかって指名手配されていました」

「それやったら、この女……」

「そうや、若返りポーション使った老婆っちゅうことになる。

……こんな婆さんが、若い連中を手玉に取るとはな……」


若い警察官とベテラン警察官は、担架に乗せられて運ばれていく老婆を見送る。

うちも、何のために司に使づいたんか分からんけど、きっと碌でもないことやったんやろうな……。


「しかし、若返りポーション、危険なものかもしれへんな……」

「違法薬物に指定されますかね?」

「う~ん、どうやろうな……。

若返りポーションは、政治家の先生たちも愛用しとるほど出回りすぎとるからな……」

「そうですね……。

出回ってくれているおかげで、人手不足が解消されているみたいですし……」

「……とりあえず、他のもんにも話して注意喚起するしかないなぁ」

「ですね……」


二人の警察官は、うちに挨拶すると困った表情で他の警察官の所へ行った。

いろいろ説明をして、引き揚げるらしい。


たぶん、これから上に報告して注意喚起してもらうんやろな……。

知らんけど。




▽    ▽    ▽




Side 川田浩


司に引っ張られて、家の中へ入り司の部屋に連れてこられた。

それから少しして、パトカーのサイレンが聞こえてきたから由香が呼んだのだろう。

事情聴取は、由香に任せよう。


「で、浩。何でお前は、あんな女連れてきたんや?」

「いや、知らなかったんだって。

初めて会ったときから、若い女の姿だったし、話するときも近づいてきたときもあの姿だったし……」


俺を椅子に座らせて、司は俺の目の前で尋問してきた。

じっと見られていたが、すぐにため息を吐いた。


「はぁ~、まあええわ。

魅了されとったみたいやし、浩責めてもしゃあないな……」

「それにしても、何で司には魅了が効かなかったんだ?

それに、あの女の正体も分かったみたいだし……」


司は、俺の前からベッドに腰かけて話始める。


「それは、所持しとるダンジョンコアの格の違いやからやな」

「格の違い?」

「せや、俺の持っとるダンジョンコアは異世界のダンジョンコアや。

魔素が充満する世界のダンジョンコアやから、能力も強さもちゃう」

「それじゃあ、俺が持っているダンジョンコアは……」

「浩が持っとるんは、俺が作ったダンジョンコアの劣化版や。

一つのダンジョンコアを、いくつもの欠片に分けて機能を制限させたものや。

浩が、いくつもの条件考えたやろ?

あれが、ダンジョンコアの制限になったんや」

「それじゃあ、別れた全部のダンジョンコアを集めて一つにしたら……」

「それでも、俺の持っとるダンジョンコアの劣化版に違いはないで。

DPで交換できる品物も、制限されるやろうな」


そうだったのか……。


「あ、そうだ。

あの死んだ女の持っていたダンジョンコアは、どうなったんだ?」

「そらぜ~んぶ、俺の元へ戻ってきたで。

ダンジョンコアも、あの女が集めとったDPも、ぜ~んぶ、な」


……そうか、それで司は俺のダンジョンマスターになりたいという話に乗り気だったのか。

俺の提案を利用して、自分に返ってくるような仕様にしていたのか。


司って、こんなに抜け目のないやつだったっけ?

前は、結構なお人好しだったと思ったけど……。


「司、もう一つ質問があるんだけど」

「ん? 何や?」

「若返りポーションでは、寿命を若返らせることはできないんだよな?」

「せや、できへんで」

「それじゃあ、寿命を若返らせるポーションはあるのか?」

「今、世の中に出回っとるダンジョンコアの交換リストにはないで。

俺のダンジョンコアの交換リストにはあるけどな」


てことは、格の違いで交換リストも違いがあるのか……。


俺は、何ともいえない感じでもやもやとした。

これは、嫉妬だろうか?







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