第303話 あっけない…



Side 森島由香


大阪の吹田駅に到着し、すぐに幼馴染の冴島司の実家を目指す。

中学を卒業するまでここで育ったんや、どこに何があるかなんてようわかっとる。


鞄とかの荷物は、アイテムボックスに入れてるから手ぶらで走る。

時たま、知り合いみたいな人に出会うが、今は急いでる。

頭下げて、声かけんと走り抜けた。


そして、ようやく司の実家にたどり着く。

すると、玄関とこで誰かが揉めてた……。


「司! その言い方はないだろ!」

「浩は、その女の正体が分かっとるんか?!」

「ふ、二人ともやめて……」


司と川田浩が言い争いになってて、その間に知らん女がいる。

誰や?!




▽    ▽    ▽




Side 川田浩


……俺の大事な人、詩織さんにお願いされ冴島司の実家に来た。

昨日連絡した時、実家にいるということは聞いていたから、案内したのだ。


詩織さんに抱き着かれ、彼女から香る匂いにフラフラになりながらも男を見せて、しっかりと案内できた……。


「ここが、冴島司君のいる場所なのね?」

「……はい、ここに俺の親友の司がいます」

「呼んでくれる?」

「はい……」


詩織さんにそう言われ、インターホンのスイッチを押した。

すると、すぐに返事が聞こえる。


『はい、どちら様?』

「あ、お久しぶりです。浩です。司君います?」

『浩君? ちょっと待ってね』


そして、五分ほど待つと玄関の扉が開いて、親友の司が出てきた。

上下のトレーナーに、ぼさぼさの髪。

詩織さんの前なんだから、ちゃんとして来ればいいのに……。


「よっ、司」

「なんや浩、女連れとは自慢でもしに来たんか?」

「違う違う、この人は「初めまして、冴島司君。私は、雨宮詩織といいます」……や」


詩織さんは、俺の腕に絡んだまま司に挨拶をする。

そして、にっこりと笑った。

ああ、かわいらしい笑顔だな……。


「……浩、何やこの女。気持ち悪いで」

「な?! 司、言って良いことと悪いことがあるぞ?

詩織さんのどこが、気持ち悪いんだよ」

「さ、冴島君、初対面の女性に、その言い方はないな~」

「何言うてるんや、気色悪い。

司、早うその女から離れたほうがええで!」


俺は、頭に血が上り司に掴みかかった。

だが、司はそれをいなしながら少しだけ距離をとる。


「司! その言い方はないだろう!」

「浩は、その女の正体が分かったるんか?!」


そこへ、詩織さんが間に入る。

ああ、そんな心配そうな表情もいいかも……。


「ふ、二人ともやめて……。

まずは落ち着いてから……」

「何やってんの?!」


そこへ、俺の後ろから声が聞こえた。

すぐに振り向くと、もう一人の幼馴染の森島由香がいた。


「ゆ、由香?」

「え? 浩君、その人は……」

「ゲッ?! 由香!」


俺は、久しぶりの森島由香に会えて少しホッとする。

詩織さんは、由香の登場に戸惑っている。

そして、司は汚物でも見たような表情で由香の登場に驚いていた。


「……浩君、こんなところで何してるん?」

「いや、詩織さんに司を紹介しようと思って……」

「詩織? ……その気持ち悪い女のこと?」

「な?!」

「由香まで詩織さんを、そんなふうに……」

「しょうがないでしょ?

魅了ポーションつけてる女なんて、気色悪いだけやない!」

「……え?」


由香の良い方に怒りを覚えたが、何か気になるワードが聞こえた。

魅了ポーション?

詩織さんが、魅了ポーションを付けている?


俺は、詩織さんに視線を向けると、焦っている感じの詩織さんがそこにいた。

え? え? どういうこと?


「詩織さん?」

「ち、違うのよ浩君。

さ、冴島君、ゆ、由香さん、私は……」

「それだけやない!

この女、他にもいろんな特殊ポーション、使っとる!」

「ああ、浩は騙せても、俺と由香はだませやせぇへんで」

「うちと司は、ほんもんのダンジョンコアを体に埋め込んでんのや。

せやから、あんたがダンジョンマスター何のも分かるし、特殊ポーション使っとるのも分かる」

「グッ?!」


詩織さんが、俺たちからゆっくり離れる。

司と由香を見ている目が、少し怯えているみたいだ。


その時、詩織さんが首を押さえて苦しみだした。


「グガッ! く、くる、し、い……。

ど、どう、いう、こ……と……」

「し、詩織さん!」


俺が詩織さんに近づこうとするところを、司と由香に止められる。

二人を見ると、二人とも顔を横に振る。

もう助からないってこと?


「そ、そんな……」

「う、うう……」


詩織さんが、口から泡を出してその場に倒れ、何度か地面をひっかいた後、動かなくなった。

いったい、詩織さんに何が起きたんだ?


すぐに、由香が詩織さんに近づいて脈をとる。

そして俺たちを見て、顔を横に振った。


「死んだ?」

「そや、もう死んどる………ふわ?!」


由香は、変な叫び声をあげて、詩織さんの遺体から飛び退くと、詩織さんの遺体がしわしわに干からびていく。

……いや、干からびるというより年をとっていく感じだ。


「……この女、若返りのポーションも使っとったんか」

「てことは、いきなり死んだんは寿命やな」

「司、どういうこと?」

「若返りポーションはな? 確かに若返ることはできるんやけど、寿命まで若返るわけやない」

「せやからこの女は、寿命で死んだっちゅうわけや」


寿命で死んだ?

俺は、しわしわのおばあさんの死体となった詩織さんを見て、フルフルと震える。

この人に、今までドキドキしていたのかと思うと、改めて魅了ポーションのせいだと思いたい……。


でも、俺は……。


「で、この死体、どないすん?」

「警察呼ぶわけにはいかんやろ?」

「司、別にうちらが殺したわけやないんやから警察に任せとけばいいんやで?」

「なら、由香に任せるわ。

俺は、浩と話があるから……」

「え? 俺?」


何だ? 司が俺にウインクしている。

俺が戸惑っていると、司が近づいて来て俺の腕を掴んで家に連れて行かれる。

その行動に、由香は驚いていた……。







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