第297話 怪しい尋ね人
Side 五十嵐颯太
コアルームで、俺たちはダンジョンコアの欠片から大元のダンジョンコアを見つけ出すことに成功していた。
「それでセーラ、大元のダンジョンコアはどこにあるんだ?」
「現在地は、大阪の吹田です。
そこまでは分かりましたが、詳しい住所までは分かりませんでした。
おそらく、ダンジョンの中に隠れている可能性があるのかと……」
「そうか……」
大阪吹田のどこかに大元のダンジョンがあって、世界中にばらまいたダンジョンコアのコピーコアを作りだしたダンジョンマスターがいるってことか。
で、そのダンジョンマスターはダンジョンに潜伏していると……。
これ以上は捜索不可能か。
「大阪に、虫ゴーレムを放ってくれ。
ダンジョンマスターになったという人たちを監視して、大元を見つけ出す」
「マスター、大阪だけでもかなりの数になりますが……」
「時間はかかるがダンジョンマスターを、一人一人調べていくしかないからな」
「では、大阪の吹田を中心に調べていきましょう」
「頼む、セーラ、ルナ。
とにかく大元を見つけ出して、コピーコアを何とかしないとな……」
これ以上、ダンジョンが増えてしまうとまずいことになるからな。
それに、ダンジョンの有用性がこれ以上世間に広がれば、我も我もとダンジョンマスターになりたがる人がとんでもない数になる。
そうなれば、コピーコアがとんでもない額で取引されるようになるだろうな……。
「どうしたものか……」
そう呟き、椅子に座ると俺の携帯が震えた。
「お」
俺は、ポケットからスマホを取り出し応答する。
「はい」
『もしもし、颯太?』
「その声は陸斗か?
どうしたんだ? 何かあったか?」
『今、駅前にいるんだけどな?
颯太を紹介してほしいって、女性がいるんだがどうする?』
「いや、どうするって……。
それに何で俺を?」
駅前で、俺を名指しで紹介してほしいってどういうこと?
滅茶苦茶怪しすぎるんだが……。
『え? ………』
「……何か、向こうで話しているみたいだけど……」
『ああ、颯太?
女性がな、相沢美咲です、覚えていますかって』
「え?」
『いや、だからな?
相沢美咲です、覚えていますかって言ってくれって……』
相沢美咲?
まさか、異世界に召喚された相沢美咲?
覚えているかって、思いっきり覚えていますとも!
「……陸斗」
『ん?』
「すぐに迎えに行く!」
『あ、ああ、駅前で待ってるから……』
陸斗が言い終わる前に通話を切って、急いでコアルームから自分の部屋に出た。
相沢美咲、彼女が向こうから会いたいと言ってきた。
しかも、陸斗を介して……?
え? なぜ陸斗を介して?
俺は服を着替えている途中で手を止め、冷静に考える。
確かに相沢美咲は、異世界でもいっしょだった。
同じ異世界人召喚で、召喚されたからな……。
ただ俺は、魔力がなかったためダンジョンコアを埋め込まれるという手術を施されて改造されたのだ。
しかし、相沢美咲は魔術適性があって魔術師になった。
まあ異世界生活の最後の何日間は、友達の新城奏と一緒に俺のダンジョンで手伝いをしてくれていたのだが……。
その相沢美咲が、俺を名指しで訪ねる?
異世界から帰って二年くらいたって、なぜ今……。
「これは、何かの罠かもしれないな……」
そう考えて、着替えを済ませるといろいろと魔道具を身につけ、家を出て駅に行く。
ここは、慎重に行動しないとな……。
▽ ▽ ▽
Side ???
「あの、五十嵐颯太君のお友達ですよね?」
「え?」
声をかけた男子高校生は、私を見て少しびっくりしていた。
「五十嵐颯太君、知っていますよね?」
「あ、ああ、知っているけど……」
「私、五十嵐君の友達なんです。
駅で見かけて、あなたと一緒にいることが多くてなかなか声をかけられなくて……」
「ああ~、なるほど……」
男子高校生は、納得といった感じで答えてくれる。
なかなか察しがいい男子のようだ。
「あの、今日、五十嵐君は?」
「ああ、颯太は今……」
そんな会話から、少し雑談をして五十嵐颯太を呼び出してもらうことに成功した。
なかなか友達思いの男子だ。
私に対して、今も警戒心を解いていない感じだ。
でも、五十嵐颯太を呼んでくれた。
……さて、ここからだ。
何とか、五十嵐颯太に私が教える情報を聞いてもらわないといけない。
あいつが、狂う前に……。
もう、五十嵐颯太しか止められるものはいないから……。
▽ ▽ ▽
Side ???
目の前に現れる画面に、あいつのもたらしたDPの数字が表示される。
「なんだよ?! 何だよ、この数字は!!」
俺は、笑顔で叫びながら喜んだ!
こんなに貰えるとは、めちゃくちゃご機嫌だ!!
「これで、俺のやりたいことができる!
ここから始まるんだ!
俺の、異世界帰りの英雄譚がな!!」
両手を広げ、俺しかいないコアルームで叫んだ!
そして響く、俺の笑い声……。
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