第296話 悪女?



Side ???


男は立ち上がり、目の前の女に怒りをぶつけた。

半グレ組織のリーダーだった男は、目の前の女にベタぼれだった。

だがそれも、女の真の顔を知るまでだ。


「ふざけるなっ! あのニュースはどういうことだ!

俺の仲間を逃がすために、任せてくれって詩織は言ったよな!

だが、あのニュースは何だよ?!

直也の遺体?

蓮も、圭介も、聡も遺体となって発見されたって!

詩織は、俺の仲間に何をしたんだ!!」


怒鳴り散らすと、詩織は不敵な笑みを浮かべてリーダーの男を見た。

その顔は、今まで見せたこともない不気味な笑みだった。


「フフフ、アハハハ!

……バカな男。

今まで私の依頼を受けて、詐欺を働いてくれてありがとう」


そう言うと、懐から銃のベレッタを取り出しリーダーの男に銃口を向ける。

よく見れば、その銃にはサイレンサーが取り付けられていた。


「?! な、何だよそれ……」

「何って、銃よ?

あなたの自殺用に、手に入れてきたの」

「自殺?」

「ええ、あなたはこれから仲間割れの末、自殺して終わるのよ。

そして、私は性別を変えて別の町へ移動するわ」

「!! ……お前、何者だ?」

「知っているでしょ?

雨宮詩織、自称二十二歳、あなたの恋人だった女よ?」

「……」

「フフフ、その表情いいわ~。

すべてに絶望したその表情……。私、ゾクゾクしちゃう!」


男は、その言葉にキレて女に向かって飛びかかった!

が、女は冷静に引き金を引き、男の額を撃ち抜き絶命させる……。


床に倒れる男。

そしてそのまま、ピクリとも動かなくなった……。


「これで、半グレ組織も終わりね。

あなたからもらったダンジョンコアとDP、私が有効に使わせてもらうわ」


そう死体となった男に言うと、手に一つのポーションを出現させる。

女は、出現させた白いポーションを一気に飲む。

すると、女の身体が光り、目の前で死んでいる男の姿になった。


「これが変身ポーション。

考えた姿に変身できる、DP二ポイントと交換することができるポーション。

これさえあれば……フフフ。

まあ欠点は、服は変身できないってところね……」


そう言って、自分の今の姿を見る。

女装した男というのは、いろいろと目立ちそうで逃走には向かないな、改めて認識する女だった。




都内某所の住宅街の一軒の家の玄関から、男が一人出てきた。

現在、深夜三時。

辺りに人影はなく、明かりのついた住宅も確認できなかった。


「さて、行くとしたら北かしら?

日本では、逃亡するなら北と決まっているみたいだしね……」


そう女のような口調で、家を後にして歩いていく。

そして、近くの駅から電車に乗り、北へ逃亡していった。

駅のトイレで、再び姿を変えて……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


「……何この女」


コアルームで、例のロザリー・ホーバーの捜索を行い、ようやく発見した。

そして、警察へ連絡しようとしたときにあの場面を見てしまったのだ。


ロザリーが銃を構えて、男を撃ち殺すシーンを……。

もちろん、その後の行動も確認してしまった。


撃ち殺した男に変身して、服を奪い死体を裸にしてリビングに運び、銃を握らせて放置。

もちろん、下半身にバスタオルを巻いて大事な部分を隠した。


風呂から上がり、寛いでいるとこに何者かに侵入され銃で撃ち殺された。

そういう偽装を施した。

そして、女は死んだ男として家を出て駅まで行き、トイレで解呪ポーションを使って元の姿に戻り、今度は性別変更ポーションで男になっていた。


そして、何食わぬ顔で駅から始発電車に乗っていった……。


「……思わず、見入ってしまいました。

マスター、今からでも警察に連絡しますか?」

「……そうだな、連絡してくれ。

ただし、俺たちのことは分からないようにな」

「了解です」


しかし、とんでもない女だな。

DPと交換できるポーションも熟知しているみたいだし、どうなっているんだ?


ダンジョンマスターに向けての運営サイトなるものを見てみたが、そんなことは書かれていなかった。

DPと交換できる物のリストも載っていたが、特殊ポーションの種類もそんなになかったはずだ。


では、どこでそんな知識を仕入れたんだ?

ロザリー・ホーバーは、本当に謎の多い女だ。


最初にロザリーに騙された男がいたらしいのだが、今も見つかっていない。

ソフィアに協力を要請したのだが、見つけられていないのだ。

ダンジョン巫女の能力を使っても、捜索できないなんてどこにいるんだ?



「マスター、例のダンジョンコアの解析が終わりました」

「ありがとう、セーラ。

悪いな、テイマーたちの監視をお願いしていたのに」

「構いませんよ。

いい加減、テイマーたちの行動には飽き飽きしていたので……」

「……」


九州ダンジョンにいるテイマーたちの監視をお願いしていた、セーラとルナを呼んで協力してもらっている。

新しくホムンクルスをと思っていたら、ミアからセーラとルナを使ってくださいとお願いされた。


どうやら、テイマーの監視に飽き飽きしていてミアに泣きついていたらしい。

この件がなかったら、俺に別の仕事をお願いするつもりだったようだ。

セーラとルナに任せっぱなしだったことが、悪かったようだ。


これは反省しないとな。


「それで、例のダンジョンコアの大元は分かったのか?」

「はい、崩れたとはいえダンジョンコアの欠片でしたから、繋がっていた魔素の行方を調べました」


例のダンジョンコアは、大元のダンジョンコアのコピーだったのだが、コピーコア同士が魔素の糸で繋がっていたのだ。

そして、その魔素の糸を流れていたのが、DPだった。


それも、コピーコアが獲得したDPの一パーセントほどのポイントだ。

それが、コピーコア同士をつなぐ魔素の糸を流れて、大元のダンジョンコアへ注がれていたらしい。


だから、大元を探すのは簡単と軽い気持ちで探し始めたのだが、これがものすごく大変だった。

言うなれば、現在のネットの繋がった世界から一台のパソコンを見つけるようなもの。


それを、三日ほどで見つけたセーラとルナは優秀だな……。






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