第294話 犠牲者
Side 五十嵐颯太
『今日27日の深夜2時ごろ、○○港の堤防付近で見つかった遺体は、都内在住の無職、波多野直也さん25歳であることが分かりました。
波多野さんは、半グレ組織のメンバーだったようで警察からマークされていましたが、遺体で発見されました。
また、組織の他のメンバーの木下蓮さん、浜田圭介さん、岡本聡さんの3人も○○の河川敷で遺体となって発見されていることから、他の半グレ組織との間に何か揉め事があったのではないかとリーダーの鈴木幸二郎さん26歳を捜索しています。
また……』
コアルームでテレビのニュースを見せられた後、ミアに理由を聞いた。
「それで、ミア。
このニュースがどうかしたの?」
「今月初めごろから、ダンジョンマスターになったという報告動画が投稿されているのはご存じと思います」
「ああ、そのことでミアにメールしたよね……」
「はい、そのメールを受けて私たちは情報収集と調査をはじめました。
調査中、ダンジョンマスターになったという報告動画が次々と投稿される中、政府がダンジョンマスターを保護しようという動きを見せました」
「ああ、ダンジョン企画の父さんたちが動いたらしい。
幼馴染の総理を動かして、ダンジョンマスターとして狙われないように政府主導で保護しようとしたらしい」
「へぇ~、さすがマスターのお父さん。
珍しく政府の動きが早いから、感心していたけど裏でそんなことがあったんだ」
コアルームに一緒にいるエレノアが褒めた。
そんなに珍しいのか?
「マスターは、ダンジョン詐欺はご存じですか?」
「確か、政府の人間を装って、ダンジョンマスターたちからダンジョンの権限を高額のお金を提示して譲渡してもらうってやつだろ?
全国で何件か発生していて問題になっていたよな……」
「政府の動きも利用され、今現在で約三百件近く起きています。
ダンジョンを取られたと、訴えた人もいたとか」
「訴えてもどうなんだろ……。
というか、ダンジョンマスターになったっていう人、だいぶ増えたんじゃないか?」
「こちらをご覧ください」
そう言うと、空中に日本地図の画面を表示する。
そして、操作盤を操作して地図に赤い点が次々と表示された。
「こ、これは……」
「今日の時点で、日本国内だけで六百二十七人です。
詐欺のおかげで何人か減りましたが、それでもこの人数なのです」
「いうなれば、これだけダンジョンが存在しているってことなのよね……」
「マスター、異常事態です」
日本だけで六百人以上。
世界に波及しているから、全体で何千人になるか想像もつかないな。
「先ほど見てもらったニュースに出てきた遺体の人物たちですが……」
「ああ、それが?」
「彼らが、ダンジョン詐欺をしていた人物たちということが分かりました」
「彼らが?
でも、遺体となって発見されたって……」
「はい、依頼者が雇った者に始末されたと思われます。
捜索中のリーダーの人物も、おそらくは……」
「……その依頼者というのは?」
「こちらです」
そう言って、操作盤を操作して画面に映し出す。
映しだされた映像には、金髪の外国人女性が映し出されていた。
「日本人じゃないのか?」
「はい。名前はロザリー・ホーバー、89歳」
「89歳?! どう見ても、十代後半か二十代前半だろ?」
「いえ、89歳で間違いありません。
ダンジョンマスターとなり、若返りと金塊にDPを使い、詐欺を思いつき日本で実行したようです。
最初に騙されたダンジョンマスターから、かなりの抗議と暴力を振るわれたようで、他人を使うことを画策。
さらに、半グレ組織のリーダーの女となることで、メンバーを使ってさらに詐欺をさせていたようです」
「……その、抗議と暴力をふるっていた人は……」
「半グレ組織のリーダーによって、黙られたようですね」
「……ある意味、すごいな」
「それで、この女は今どこに?」
「どうやら、名前を変えて日本に潜伏しているようです。
今の名前は、雨宮詩織というそうです」
「ミア、エレノア、その女の捜索をお願い。
それで、見つけ次第警察へ」
「了解です」
「分かりました」
ミアとエレノアが返事をして、すぐに捜索に入った。
でも、こんなにダンジョンマスターがいるとはな……。
「あ、そうそう。
マスター、ダンジョンコアのサンプルがダンジョン企画より届いています。
後で、吸収してもらえますか?」
「世界中に広がっているダンジョンコア?」
「はい、ダンジョン企画の社員の一人がダンジョンコアを発見し、ダンジョン企画に知らせて確保したそうです」
「ダンジョンマスターにならずに、よく運び出せたな……」
「どうやら、直接触れなければダンジョンマスターにはならないようで、ホークリフトを使って運び出したそうです」
「なるほど、機械には反応しなかったってことか……」
「で、今そのコアはどこに?」
「ダンジョンパークの駐車場に、仮設のテントを張ってそこに置いてあるそうです」
「了解。これから向かってみるよ」
「よろしくお願いします」
世間を騒がせているダンジョンコア、それがどんなものかこれで分かるだろう。
あんなにも数があること自体、不思議でしょうがない。
しかも、魔素溜りでダンジョンコアが生まれているわけでもなく、ある日突然黒い洞窟のような穴が現れて、その奥に人を招き入れて大きな宝石に触るとダンジョンマスターとなる。
異世界でも、そんなやり方聞いたことがない。
今、世界中に広がっているダンジョンコアは、俺の知っているダンジョンコアとは別のものなのかもしれない。
ダンジョンマスターの俺が触れることで、何か分かるかもしれない。
そして、もし俺の知らないダンジョンコアだった場合は、誰がこんなことをしているのか調べないと……。
すでに、この大量のダンジョンコアのおかげで大変なことが起き始めている気がする。
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