第290話 増え続ける
Side 五十嵐颯太
昼休み、昼食を食べようとした時陸斗がきて動画を見せてくれた。
朝の少女の動画かと思ったら、今度は大学生の男がダンジョンマスターになった動画だった。
「……何を驚いているんだ?
ダンジョンコアが破壊されれば、ダンジョンマスターは死ぬ。
これは、よくある話だろ?」
「いや、よくある設定だけど、実際そうなのかと言われれば、なぁ?」
「ええ、お話の中の設定なのかと思っていたわ」
「実際のダンジョンマスターも、その設定だぞ?」
「それじゃあ、颯太も?」
「ああ、俺もダンジョンコアが破壊されれば死んでしまうな」
「で、でも、颯太はダンジョンコアをちゃんと守っているんでしょ?」
「俺の場合は、ダンジョンコアとダンジョンマスターが一心同体だからな。
俺が死ぬときは、ダンジョンコアも死ぬ時だ」
「そ、そうなのか……」
「颯太、死なないでね?」
「まあ、その辺は大丈夫だ」
俺の体の中にダンジョンコアがあるからな。
俺のダンジョンコアを破壊することは、俺を殺さないとできない。
だから安心、というわけでもないが一応気を付けてはいる。
「それで、ダンジョンマスターの初心者が危ないってのはどういうことだ?」
「危ないじゃなくて、大変なことになって事だ」
「その大変って、どういうことなの?」
「初心者に与えられる、DPが少ないことは話したよな?」
「ああ」
「交換できる物が少なくて、大変なことになるんでしょ?」
「初心者ダンジョンマスターがしなくてはいけないこと。
それは、DPを集めることにある」
「うん」
「DPを集めるには、生命力をダンジョンが吸収することで集めることができるんだが、この地球で集めるには二種類しかない」
「二種類の集め方?」
「ああ、一つはダンジョンに生命体を招き入れて殺すこと。
もう一つは、ダンジョンに生命体を招き入れて生活させること。
この二種類しかない」
「……」
「ど、どっちが効率がいいんだ?」
「短期的なら、殺すこと。
長期的なら、住まわせて生活させることだな。
ちなみに俺は、住まわせて生活させた」
まあ、俺の場合は命令されてだからな。
王国の食糧事情をどうにかするために、奴隷を住まわせて畑を造りだんだんとダンジョンを広げて成果を上げていったからな。
王国の食糧事情を何とかするまで、三年ほどかかったが……。
それからも、無理難題を王国に求められて大変だったが、何とか乗り切って今のダンジョンパークのようになったからな。
結果オーライということかな……。
「初心者ダンジョンマスターが、どちらを選ぶか……」
「それは、ダンジョンマスターにどんな奴がなったかで決まるが、DP少なくて苦労するのは間違いない。
それに、ダンジョン同士で対決なんてのもありそうで怖いな」
「ダンジョンバトルか?
俺は、したことないが負けたダンジョンは吸収されるか、相当量のDPを支払うことになるな」
「犠牲になるダンジョンマスターが出そうだな……」
凛が、投稿された動画を見ながら質問してくる。
「ねぇ颯太、この人が言っている階層って最初はどれくらい造れるの?」
「最初に、DPがどれくらい貰えるかで決まるけど、階層を一階増やすごとに千DP使うことになる」
「え、せ、千?
それじゃあ、階層だけでDPを消費するかもしれないってこと?」
「最初にもらえるDPが、千ならば、ね」
「……この人、どれくらい貰えたのかな?」
「ダンジョンマスターになるっていうのは、そんなに甘いものじゃないんだよね」
「それなのに、こうして報告動画があがったということは……」
その時、陸斗が他にも投稿動画を見つけて騒ぎだした。
「お、おい、颯太!
他にもダンジョンマスターになった報告動画が投稿されたぞ……」
「……初心者ダンジョンマスターたちによる、DP争奪戦が始まる予感がするな……」
「こ、怖いこと言わないでよ……」
「もしかして、普通の人が巻き込まれる、か?」
「巻き込まれるだろうね。
俺のためにDPになってくれ、とか言われて……」
「……」
「け、警察に通報するか?」
「警察が止めれるとは思えないけど……」
俺たちは、スマホに映し出される投稿動画を神妙な面持ちで見つめた……。
▽ ▽ ▽
Side ミア
「どうなっているの、これ?!
ダンジョンマスターになったっていう投稿動画がどんどん増えているわ!」
「ダンジョンマスターによる、ダンジョン成長日記なるものがたちあがりました!」
「ソフィア! こっちはダンジョンマスターへの質問掲示板ができたわよ!」
「もおぉ! いきなり何でこんなに増えるのよぉ!!」
「これでは、最初に投稿された美百合さんが霞んでしまいますね……」
コアルームで、私とエレノアで調査していましたが、次々とダンジョンマスターになりましたという報告動画が増えてしまい、応援にソフィアを呼び出しました。
ですが、ダンジョンマスターになったという人たちはさらに増えていき、現在百人に迫る勢いです。
ですが、このままいけば、すぐに百人を超えてしまうでしょう。
「ダンジョンマスターになった人たちの居場所はどうですか?」
「こっちは終わったわ」
「こっちも終わりです。モニターに投影しますね」
ソフィアが操作して、目の前にあるモニターに日本地図と一緒に、ダンジョンマスター報告をした人がどこにいるのか赤い点で表示されます。
「……これを見ると、西日本が多いですね」
「特に、大阪が多いのは意外だわ……」
「ダンジョンは、洞窟のようにできるわけではありませんからね。
空間の穴ができ、その先にダンジョンができるから実態は入り口だけなのよね……」
「だからこそ、住宅街にできても問題にならないのでしょう。
空間の穴、アイテムボックスや空間魔法のようなものですからね……」
「でも、どうしてこんなにもダンジョンコアが増えたのかしら?」
「ダンジョンは、魔力溜りにできる。
そう言われていたけど、今回のものは違う気がするわね……」
「そうそう、なんか意図的に増えているような……」
エレノアの言うように、意図的にダンジョンコアを増やしているなら狙いは何かしら?
混乱? それとも、快楽的なもの?
……分からないわね。
でも、とにかく今はダンジョンの把握に努めないとダンジョンパークにも影響が出てきそうね……。
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