ダンジョンパニックの章

第288話 驚きの投稿動画



Side 五十嵐颯太


ハロウィンが終わり町がクリスマスに向かっている十一月の中頃、学校に登校すると陸斗からある動画を見せられた。


「颯太?! この動画、どうなってんだ?」

「動画?」

「知らねぇのか?

今、この動画が滅茶苦茶バズってんだよ!」

「え、どれ?」


そう言って、陸斗の持っていたスマホを見るとある動画が流れていた。



『見える? この大きな宝石!

今朝、家の庭に現れた洞窟に潜ったら、こんな大きな宝石を発見しました!

でも、これに触った時から私、ダンジョンマスターになったの?!』


高校生か中学生と思しき少女が、後ろにある二メートルぐらいの透明な宝石を触りながらいろいろと説明している動画だ。


「……何、コレ」

「俺も見つけたときは、そう思ったよ。

でもな?

……これって、ダンジョンマスターになったとか話しているからさ、颯太が何か知っているんじゃないかって聞きに来たんだけど……。

どうやら、お前も知らないみたいだな……」

「ああ、今初めて知った……」


俺は、動画を見ながら混乱していた。

画面の中の少女がダンジョンマスターになったというなら、後ろに映し出されているのはダンジョンコアということになる。


だが、この地球にダンジョンコアが存在するダンジョンが生まれている?


確か、ある国の方で野良ダンジョンが生まれた話はミアから聞いたが、あれはミアたちの活躍で消滅したはずだ。

ダンジョンは跡形もなく、なくなったと報告された。


では、画面の中の彼女が触っている宝石は何だ?

俺自身、自分に埋め込まれているダンジョンコアは見たことないから分からないが、別のダンジョンコアは見たことある。


だが、そのダンジョンコアは球体の水晶のようだったはず。

少女の後ろに映し出された、あんな巨大な宝石ではなかった……。


「ねぇねぇ、噂の動画見た?」

「凛、遅かったな。

今颯太に、その噂の動画を見せたところだ」

「……その様子だと」

「ああ、颯太は関係がないようだ。

颯太も動画を見て、今ビックリしている……」

「そうなんだ……」


俺が動画を見ながら混乱している時に、凛が登校して来て声をかけたらしい。

噂の動画の真意を、俺に訪ねるつもりだったようだ。

だが、俺は何も知らない……。


俺はすぐに、自分の携帯を取り出しミアにメールをした。

動画で、ダンジョンマスターになった少女のことが映っていた。

至急、調査されたし、と。


すると、すぐに了解という返事が返ってくる。

さすがダンジョン巫女のミア、返事が早い。


「それにしても、この少女ってどこに住んでいるんだ?」

「お、気になるか? 颯太」

「颯太? この子って、私たちより年下よね?」

「……女の子に興味があるんじゃないよ。

この子のがダンジョンマスターになったということは、ダンジョンが存在しているってことだろ?」

「あ、そうか?!」

「この子が日本人なら……」

「日本に、ダンジョンが存在するってことか!

……颯太? 日本にダンジョンなら、二つもあるだろ?」

「俺以外の、ってこと」

「そりゃ、そうか。

ダンジョンパーク以外のダンジョンが、この日本に存在するとか気になるもんな」

「でもこの動画、背景とか映ってないんだよね……」

「ああ、いきなりダンジョンコアと一緒に映っているし……」


動画を投稿した女の子が、どんなダンジョンを造るのか気になるところだが、この子だけがダンジョンマスターになったのだろうか?


俺は、胸の奥を締め付けるような不安にさいなまれていた……。




▽    ▽    ▽




Side エレノア


ミアから、マスターからのメールに関して連絡が来た。

何でも、日本でダンジョンマスターになった女の子の動画が投稿され話題になっているというもの。

しかも、そのダンジョンマスターというのが、本当のダンジョンマスターになったらしい。


すぐに私はコアルームに行き、ミアと合流すると話題の動画を探した。


「あったわ、これね……」

「かなり話題になっているようですね。

こんなにも早く見つかるなんて……」

「見て、ミア!」


私の言葉に、ミアが私の見ている画面を見る。

そこには、アワアワしている女の子の動画が映し出されている。


「……確かに、後ろの宝石はダンジョンコアのようです」

「そうね、私にも分かる。

何故本物だと分かるのか、説明しづらいけど……」

「エレノア、それは私たちがダンジョンコアを通じて生み出されたホムンクルスだからです。

だからこそ、本物か偽物かは分かります」

「だけど……」

「ええ、これはまずいことになっているのかもしれません。

すぐに現在の魔素の分布図を!」

「待って……」


私は、コアルームにある操作盤を色々と操作して、今の地球における魔素の分布図を画面に表示した。


「出たわ!」

「これは……」


世界地図に魔素の分布図が表示されるが、かなりの広範囲に魔素が広がっていた。

北は北極点、南は赤道付近まで広がっている。

東はドイツに到達し、西は太平洋を渡りハワイにまで到達している。


また、アメリカダンジョンが解放された影響で、フロリダを中心に少し歪ではあるが円形状に広がっていることが分かった。


「……どうやら、ダンジョンパークの影響で魔素がかなり漏れているようですね」

「やっぱり、ダンジョン内でシャットアウトできなかったのね……」

「あとは、実験ダンジョンの影響もあるようですね」

「実験ダンジョン?」

「ここです。

あの国で、実験という名のダンジョンを設置して魔素の広がりや、付近に与える影響を調べました。

その影響で、この辺りが一番濃く表れているようです……」


ミアの言う通り、世界地図の魔素分布でも濃く表示されていた。


それじゃあ、例の少女は日本のどこに住んでいるのか……。







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