第287話 その後の動き



Side シスターミリア


教会による魔王のダンジョン攻略失敗から一週間、私たちは忙しかった。

それは、ダンジョンで犠牲になった神殿騎士や神殿兵士、さらに魔物使い隊の人たちの弔いがおこなわれたからだ。


遺体は、ダンジョンに吸収されて棺の中にはない。

それでも、葬儀は行われ悲しみに暮れる人たちが大勢いた。


私たち教会関係者は、忙しすぎて故人を偲ぶどころではなかった。

それでも、知っている人がいなくなるのは悲しいことなのだろう。

葬儀を手伝いながら、泣いていたシスターを何人か見ることがあった……。


「ハァ、辛いわね……」

「シスターミリア、ため息をついている暇があるならこっちを手伝ってくれない?」

「は~い、シスターギュナ」

「はいを伸ばさない!」

「ごめんなさ~い」

「もう!」


私の先輩シスターに怒られながら、今日も葬儀の手伝いに忙しい。

これも、枢機卿たちによるダンジョン進攻を推し進めた結果だ。


あれから教皇様により、残っていた枢機卿たち六人は破門された。

魔王のダンジョンへ無理な侵攻計画を立案、実行した責任をとらされたからだ。

また、この計画にのった司祭様などの教会関係者も破門、捕縛されている。


今後は、裁判にかけられ処刑される予定らしい。


枢機卿たちが薦めていた計画などを暴露するための裁判になると、教皇様は仰っていたが弁明をする気力が元枢機卿たちにあるかどうか……。


捕縛された者たちは、取り調べという名の拷問に掛けられるらしいから公に行われる裁判では、そんな気力もなく罪を認めるだろうと、先輩シスターが説明してくれた。



それにしても、教皇様と魔王が繋がっているとはだれも想像すらしていないだろう。

さらに、天界の門を守る天使族とも繋がりがあるとかないとか。

どうやら、魔王繋がりで紹介されたらしいがその天使族は教会を憎んでいるとかで、話すことはできなかったらしい。


はぁ~、こんなこと誰にも話せないよ……。


そう言えば教皇様、最後に変なことを言っていたわ。

異世界に通じるダンジョンのマスターと今度会うとか……。


どういうことなんだろう?




▽    ▽    ▽




Side ???


修復の終わった浮遊帆船に乗り、勇者様たちが戻ってきた。

何でも、浮遊大陸の唯一の港町ガランが壊滅したらしい。


ガランとの航路があるこの町の代表は大騒ぎをしていたが、そのうちガランは復活するだろう。

それよりも、勇者様たちが戻ってきてからおかしいのだ。


教会へ報告に戻らず、魔王のダンジョン以外のダンジョンへ全員で出発していった。

何でも、ダンジョンコアを入手するためだとか……。


何かに使うのか、それとも浮遊大陸で何かあったのか……。


「コレン! 手を動かせ!」

「へ~い、親方!」

「はっきり返事しろ! ゆるい返事なぞ、するんじゃねぇ!」

「へい! 申し訳ございません!」

「よし!」


今、俺たち浮遊帆船を造っている大工が一番忙しい。

何故なら、浮遊大陸にある港町ガランの復興のために人を送り込む浮遊帆船がいるからだ。

まあ、俺たちは儲かるからいいけど、浮遊石の数は大丈夫か?


在庫の数が気になってきたな……。




▽    ▽    ▽




Side ???


浮遊帆船で、次の町へ進んでいる。

各町のギルドで扱われているダンジョンの情報を得て、私たち勇者一行はダンジョンに挑んでいる。


そしてそのメンバーには一人、異世界人が混ざっていた。

一条颯太、勇者ショウコの恋人だ。

再会した当初は、恋人ではなかったがいろいろあるうちに恋人となった。


……羨ましい!


そんな一条颯太を元の世界への帰すために、勇者たちは勇者ショウコの命令で動いていた。

まあ、颯太がいい奴で勇者ショウコのフォローをしてくれていたが……。


「それにしても教会の連中、地上に戻って混乱していたな……」

「まあ、枢機卿たちが捕縛されたとか聞けばそうなるだろう」

「そういえば、魔王のダンジョンへの攻略、失敗したらしいな」

「それはそうだろう。

俺たちも何度か攻略に参加したが、あのダンジョンを普通に攻略して踏破できるとは思えないぞ」

「そうそう、神殿騎士や神殿兵士の実力なんて、高ランク冒険者たちよりも下だからな……」

「それを言うなら、王国に仕えている騎士団とどっこいどっこいだっけ?」

「どの王国の騎士団かによるけどな……。

でも、大して強いというわけでもないということだけは分かる」

「ちょっと、かなりの犠牲が出ているんだから、そんなの話題にしないでよ……」

「す、すまない……」


男性勇者たちが、甲板で話をしているところに勇者ミサキが注意する。

教会のダンジョン攻略の無謀さを言いたかったのだが、いつの間にか神殿騎士や神殿兵士の強さに話が変わっていた。


どちらにしても、無謀な攻略だったのは分かっていた。


「それで、何でこんなに急に出発したの?」

「そういえば、必要な物を乗せたらすぐに出発したな……。

何でだ?」

「おいおい、プリラベーラの話を聞いていたのか?

俺たち勇者は、召喚した魔術師を殺せば元の世界に帰れるけど迷い人の颯太は違うだろ?

俺たち勇者が帰れるということは、ショウコも帰ってしまうってこと。

ショウコは、颯太も帰らせるために急いでいるんだよ」

「それに、教会で枢機卿たちが捕縛されたって話があっただろ?

あれで裁判が行われるらしい」

「へぇ、裁判なんてあるのか……」

「その裁判で、俺たち勇者を召喚した魔術師も裁かれるそうだ」

「マジで?!」

「マジで。教会の牧師さんが教えてくれたよ。

これで、教会もスッキリするとか安堵していたけど……」

「なるほど、それで魔術師が裁かれて処刑となれば……」

「そ、俺たち勇者は元の世界へ帰還。

一条颯太はそのまま、この世界に置き去りというわけだ」


話をしていた勇者たちは、浮遊帆船の中へ通じる階段を見る。

その奥には、船長室があり勇者ショウコと一条颯太が航路を確認していた。


「それは、焦るよな~」

「とにかく、俺たちは力を合わせてダンジョン攻略して、一条颯太をダンジョンマスターにする。

で、それからどうするんだっけ?」

「その後はダンジョンを改造して、人が住めるようにするんだってよ。

で、勇者の名前を使って人々を集めるそうだ。

颯太がダンジョンマスターになれば、俺たち勇者が元の世界に帰ったとしても何とかやれるだろうって言っていたが……」

「勇者ショウコは、最後まで何とか側にいたいよな……」


とにかく、俺たちは協力する。

ただ問題は、一条颯太をダンジョンマスターにするまで、時間があればいいが……。







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