第278話 帰る条件



Side プリラベーラ


そうだわ、思い出した!


私は、アルテミスを見ていてようやく引っかかっていたものの正体を思い出した。

それは、浮遊島をブリーンガル王国の王都に落とした時に、アルテミスが出会った異世界人に作られたというホムンクルスだ。


その事を思い出し、ダンジョンマスター専用特殊スキルに繋がった。


「颯太、あなたを元の世界に帰す手がないわけじゃないのだけど……」

「あるの?! 颯太を、私たちと同じように元の世界に帰す方法が!」

「ええ、あるわ」

「それは、どんな方法なんですか?!

勇者召喚されていない、異世界人の颯太でもできることですよね?」

「……ええ、準備が大変そうですけど」

「構いません! どんなに困難なことでも、元の世界に帰れるなら……」


颯太の意志は確認しました。

そして、颯太のために勇者ショウコは協力する感じですね。


「それでは颯太、ダンジョンマスターになりなさい」

「……え?」

「へ?」

「……ダンジョン、マスター、ですか?」

「ええ、そうよ」


勇者たちや、颯太も黙ってしまったわ。

私、何かおかしいことを言ったかしら?


アルテミスを見ると、アルテミスも驚いた表情をしている。


「お、俺が、ダンジョンマスター?」

「プリラベーラ様、颯太様がダンジョンマスターになることと元の世界に帰ることが繋がるように思えないのですが……」

「あら、アルテミスは知らないのかしら?

ダンジョンマスター専用特殊スキルの存在を……」


「「「「ダンジョンマスター専用特殊スキル?!」」」」

「そ、それが、俺を元の世界に帰すことができるというのか?」


勇者たちが声をそろえて驚き、颯太が専用特殊スキルの存在をかみしめている。

アルテミスも驚いているということは、どうやら知らなかったようね。


アルテミスは、私がダンジョンマスターになってから作ったホムンクルスなのに……。


「説明するわね?

ダンジョンマスターには、専用の特殊スキルがあるわ。

それは、どんなダンジョンマスターであるかで使えるようになるの。

アルテミス、彼女を作りだしたのもダンジョンマスター専用特殊スキルで、作ることができたの」


そう言うと、勇者たちはアルテミスを見る。

執事服に身を包んでいるが、アルテミスは女性だ。

よく見れば、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるでしょ?


「あの羊が、ホムンクルス……」

「執事、な、勇者トモヤ。

そして、驚くところが違っているぞ?」

「そうそう、この場合驚くのは、アルテミスさんが女性だってところだ!」


男性勇者たちの驚くところは、そこなのね。

よく見れば、会った時から分かりそうなものなのだけれどねぇ?


「説明を続けるわよ?」

「お願いします、プリラベーラ」

「アルテミスを作ることができる、ダンジョンマスター専用特殊スキルに一つのスキルがあるわ。

それは、『異世界道』というスキルよ」

「『異世界道』?

それは、どんなスキルなんだ?」

「私のステータスの中にある、特殊スキル欄に説明があるわ。

異世界道とスキルは、行ったことのある異世界への道を開くことができるとあるわね」

「異世界への道?」

「それも、行ったことのある異世界への道ってことは、元の世界への道も開けるってことよ!

元の世界へ帰れるわよ、颯太!?」


勇者ショウコが、颯太に抱き着き喜んでいる。

颯太は、まだ信じられないという表情をしているわね。

召喚によって、異世界に来ていない颯太はどこかで諦めていたのかもしれないわね。


でも、元の世界に帰ることができるかもしれないと希望を持つことができた。

フフフ、じわじわと喜びに表情が変わりはじめたわ。


「そうだ! 条件! 条件は何だ?!」

「条件?! 条件って何よ、レンジ!」

「あのな、スキルを覚えるには何か条件があるってことだろ?

他のスキルでも、ある一定の条件がそろわないとどんなスキルでも覚えることはできなかっただろうが!」

「た、確かに!

プリラベーラ、その異世界道のスキルを覚える条件っていうのは何?!」


そう、この世界ではどんなスキルでも、一定の条件が必要になる。

無条件に覚えることができるスキルはないと思ったほうがいい。

一部の特殊な場合を除いては……。


「『異世界道』スキルを覚える条件は……」

「条件は……」

「ゴクリ……」


こういう時、もったいぶって発表するのがお約束というらしいわね。

この間、颯太に教えてもらったのよ。


「条件は……」

「条件は……」

「勿体ぶるな! 早く言え!」


おっと、勿体ぶり過ぎて叱られてしまいました。

早く、教えてあげましょう。


「ダンジョン内の人数を、百万人以上にすることよ」

「……へ?」

「ど、どういうこと?」


勇者たちは、混乱しているわね。

条件が、少し理解できていないようね……。


「いいかしら?

この条件は、自身がダンジョンマスターとして君臨するダンジョン内に、百万人以上の人を内包すること。

それは、ダンジョン内を攻略する人数が百万人以上とか、ダンジョン内に住んでいる人が百万人以上とか、ね?」


そう言うと、勇者たちと颯太は考え始めたわ。

条件から考えて、攻略人数が百万人以上ダンジョン内にいるというのは、まず無理!

そんな超巨大なダンジョンなんて、魔王のダンジョンを置いて他には考えられないでしょうね。


でも、ダンジョンは下層に行けば行くほど魔物は強く、罠は凶悪になる。

百万人を生かして、ダンジョン内に入れることは不可能ね。

それに、ダンジョン攻略者が百万人以上いるとは思えないし……。


となれば、自ずと条件は確定してくる。

ダンジョン内に、百万人以上の人を住まわせること……。


「……できるのか?」

「でも、やるしかないじゃない。

私たちだけ、元の世界に帰るなんて嫌よ!」

「ショウコ……」

「絶対、颯太も元の世界に帰るのよ!」

「ああ、そうだな」


二人して見つめ合っているわ……。

周りの勇者たちが、ニヤニヤしているのに気づいてないのかしら?







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