第274話 勇者との会合



Side 勇者ミサキ


ガランの町を出発して二日、鬱蒼と茂る木々をかき分けながら森を進みようやく開けた場所に出たとき、目の前に巨大な白い門が姿を現した。

……どうやら、これが教会が探していた『天界の門』みたいだ。


門自体が淡く光っているのは、聖なる光だと思える。

私たちが、こんなにも心安らぐ光は、聖なる光以外ないだろうし……。


「……ねぇミサキ、これがもしかして『天界の門』なのかな?」

「おそらくそうでしょうね。

こんなにも、聖なる光で門自体が光っているし、間違いないでしょう」

「でも、あの森に入る前は何も見えなかったよな?」

「そ、そうだ!

トモヤの言うように、森に入る前はなかったぞ!」

「ということは、何か見えなくする結界みたいなもので覆われていたってことだな。

エルフの里のように、な」

「そういえば、エルフの里は認識疎外の結界が施されていたな……」


だが、この聖なる光も遮断していたようだから、かなり高度な結界なのでしょうね。


こうして門を見ていると、門の下に貴族の住む屋敷のような建物が確認できた。

どうやら、門の大きさに驚いて上ばかり見ていたから気づかなかった……。


「ねぇカナデ、あそこ。

屋敷があるから、誰かいるのかもしれない」

「あ、本当。

貴族の屋敷みたいに立派ね。誰が住んでいるのかしら?」

「ミサキ、カナデ、確認に行くぞ」

「分かったわ」

「了解」


ここまで来た勇者たちで、屋敷へ向かって歩き出す。

森から出て、草原を歩く。

ここまで来ると、天界の門の聖なる光のおかげで魔物の姿を見ることはなかった。


「魔物が、いないわね……」

「森の中には、かなり強い魔物がいたんだけどね」

「おそらく、この聖なる光のおかげでしょうね」


勇者トモヤが、手を上にかざして天界の門から出る光を浴びる。

すると、トモヤの全身が淡く光り出し、みんな驚いた。


「ト、トモヤ! 大丈夫?!」

「……心配いらないよ、ショウコ。

この光、回復魔法の光りと同じ感じがする……」

「ええ、ホントに?!」


トモヤの発言で、ショウコやアキラ、レンジにカナデも手を上にかざした。

すると、みんなの身体が淡く光る。

そして、みんなの身体も回復される……。


「すごい、本当に回復されたわ……」

「ああ、天界の門ってこんな効果があるのか」

「それは、魔物も近づかないよな……」

「ねぇ、屋敷の門の所に人がいるみたいなんだけど……」

「え? 人がいたのか?」


門の前にある貴族の屋敷の門の所をよく見れば、執事服に身を包んだ人が立っていた。

そして、こちらを確認して一礼する。


私たちは、その完璧な仕草に驚いた。

まさに、ザ・執事そのものだったからだ。

物語などで語られる執事とは、こういう人のことを言うのだろうな……。



「ようこそ、おいでくださいました。勇者様方」


執事の男性は、私たちのことを勇者だと分かっているようだ。


「……俺たちが来ることが、分かっていたんですか?」

「屋敷の中へどうぞ。私の主がお待ちです」

「主?」

「はい、こちらです」


そう言うと、執事さんは私たちを案内するために歩き出した。

私たちは、お互いの顔を見渡すと、執事さんについて行くように歩きだした。

どんな主か分からないが、何か話があるのだろうか?


それとも、天界の門のことで何か注意事項でもあるのだろうか?




▽    ▽    ▽




Side プリラベーラ


執事のアルテミスが、勇者たちを屋敷の中にある謁見の間に連れてきた。

そして、椅子に座る私の姿を見て勇者たちは絶句しているようだ。


今の私の姿を見れば、誰もがこういう反応になる……。


「ようこそ、教会に召喚された勇者たち。

私はプリラベーラ、こんな姿をしているけど天使族よ」

「! は、初めまして、勇者アキラです。

こちらから、勇者トモヤ、勇者レンジ、勇者シンタロウ、勇者ショウコ、勇者ミサキ、勇者カナデです。

それで、その、私たちに何か用があるとか……」

「執事のアルテミスが、そう言ったのかしら?」

「いえ、執事さんは主がお待ちですとだけ」

「でもこういう時、待っているとしたら何かあるものじゃないの?」

「ショウコ!

す、すみません、礼儀が成っていなくて……」

「構いませんわ。

私がなぜ、皆様を屋敷に招待したか。

それは、教会の言うことを鵜呑みにしないように忠告するためです」

「……忠告、ですか?

それはありがたいことですが、俺は教会の言いなりになるつもりはありませんよ」

「アキラの言う通りです。

私もカナデも、教会を全面的に信じているわけではありません」

「な~んだ、アキラやミサキ、カナデも私と同じようなこと考えてたんだ。

教会の言いなりになるなんて、そんな奴いるの?」


そう言うとショウコは、トモヤやレンジ、シンタロウをチラリと見る。

それに気づいたシンタロウが声を上げた。


「ぼ、僕だって教会の言いなりなんて御免だね!」

「俺もシンタロウと同じだ。レンジはどうなんだ?」

「俺も教会の言いなりになった覚えはないよ。

教会の依頼する魔道具は、俺が作りたかったから作っただけだし!」

「フフフ、皆様は聡明な方たちなのですね。

良かったですわ、教会の言いなりになる勇者様方がいなくて……」


良かった、これなら私の話も聞いてくれるだろう。

だけど、その前に紹介しないといけません。


「アルテミス、颯太を呼んできてくれる?」

「プリラベーラ様、すでに颯太様は廊下で待たせております」

「さすが優秀ね。中に入ってもらって」

「はい」


そう返事をした後、謁見の間の扉を開けて颯太を中へ入れた。

そして、颯太の姿を見た勇者ショウコが、声を上げた。


「颯太?! ……何で颯太ここに」

「久しぶりだな、ショウコ。

これには、いろいろと訳があるんだよ……」

「へぇ~」


そう言って、勇者ショウコは私をチラリと見る。

その表情は笑顔ですが、何やら勘違いをしているようですね……。







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