第268話 浮遊大陸の敵



Side 五十嵐颯太


京都、奈良、大阪への修学旅行が終わった。

三泊四日で三つの県を回ったわけだが、まぁ~いろいろなことがあった。


その中でも印象に残っているのは、大阪で迷子になったことか。

俺たちの班は食い倒れを実感するぞ、とか言っていた陸斗がスマホ片手に迷子になっていたのには驚いた。


そして、陸斗に道案内を任せていた俺たちも同じように迷子になったのだ。

その時の陸斗の混乱ぶりは、すごかったな……。


まあ、無事にみんなと合流できたし、帰ってきた今では笑い話だ。



家に帰ってきて、まず家族にただいまと挨拶をした後、お土産を渡す。

父さん、母さん、妹の麗奈にお土産を渡すと喜んでくれた。

悩みに悩んで、結局各県の食べ物にしたからな……。


まあ、それが無難だろう。


その後、自分の部屋からダンジョンパークのコアルームへ行くと、ミアたちが出迎えてくれた。

ミア、エレノア、ソフィア、セーラ、ルナと五人にお土産を渡して、俺が旅行中の報告を教えてもらう。


「へ? 地球にダンジョンが出現した?

それで、ミアたちで攻略してダンジョンコアを破壊しダンジョンを消滅させた、か」

「はい、マスターが旅行の間に対処しようとしました。

……いけませんでしたか?」

「いや、よく対処してくれた。

地球にダンジョンが出現したのは、魔素の実験のせいだろう。

ただ、地球のダンジョンが死霊系のダンジョンになるのは、ある意味収穫だったな」

「収穫、ですか?」

「ああ、地球にダンジョンを出現させるには自然に任せてはいけないということが分かったんだ。

これは、収穫といっていいだろう。

今後、地球にダンジョンを出現させるにはダンジョンマスターを、こちらで用意する必要があるということだな……」

「……もしかして、マスターは地球にダンジョンを出現させるおつもりですか?」

「ああ、そのつもりだ。

ただし! ただし、今じゃあない。

今後の地球の在り方を見て、考えようと思ってな……」


ミアとエレノア、ソフィアはお互いの顔を見た後、俺を見る。

セーラとルナは、困惑した表情をしている。


「今後、地球環境はどうなるか分からない。

だが、ダンジョン内であれば、快適に生活できるんだ。

しかも、言葉の壁も無くなりそのうち魔法が使える人類が出現してもおかしくないだろう。

もちろん、何世代も後の話だろうが……」

「マスターは、地球の今後を考えて、ダンジョンを世界中に?」

「テレビなどのニュースを見ていると、地球の未来が心配になるんだよ。

だから、今はこのままでいいけど、今後を考えるとな……」

「……」


人類は、地球を卒業し、何れ宇宙へ進出する。

だが今の地球の状況を見ていれば、宇宙に進出する前に人類は滅んでしまいそうだ。


だから、ダンジョンを使って助けることができれば……。




▽    ▽    ▽




Side ???


「スフィット、新たな浮遊帆船が港に到着したと、ボスに知らせてくれ」

「了解!」


浮遊大陸にある町、ガランが見渡せる場所の木の上にいたオルレンが、同じく見張りでこの場所にいるスフィットに伝言を頼む。

スフィットは、返事をするとスルスルと木を降りていき、木の下に繋いでいたユニコーンに乗り走って行った。


「……あれは、連絡のあった勇者たちの乗る浮遊帆船だな。

ガランの町の状況を見て、帆船からたくさんの人が降りて走って行った……」


望遠鏡で覗くオルレンは、見たままを口にした。

誰に聞かせることもなく……。



少しして、ユニコーンに乗ってスフィットが帰ってきた。

見張りの木の下に着くと、すぐにユニコーンを木に繋いでスルスルと昇ってきた。


「オルレン、ボスに知らせてきた。

浮遊戦闘艦を出すから、見張りを続けてくれってさ」

「浮遊戦闘艦を?

あの浮遊帆船は、情報にあった勇者たちが乗った船だぞ?

大丈夫なのか?」

「ん~、分からない」

「……」

「で、でも、ボスが決めたことだから、たぶん大丈夫だよ。うん」

「……まあ今、浮遊帆船に人はいないと思うから、反撃にあうことはないと思うけど……」

「あ! ボスの浮遊戦闘艦が来た!」


ゴウンゴウンと低い音を出しながら、浮遊戦闘艦が姿を現した。


浮遊戦闘艦は、帆船という姿ではなく戦艦に近い姿をしていた。

まさに、空中に浮かぶ戦艦だ。

搭載している大砲も、三門搭載されていて帆船を襲うには十分な火力を持っている。


また、相手の帆船に打ち込むアンカーも搭載されていて、狙った獲物は逃がさないつもりだ。


「さすが、浮遊戦闘艦は違うな~」

「向こうの浮遊帆船の甲板に、人が集まってきた。

こちらの浮遊戦闘艦を発見したんだ」

「じゃあ、俺たちも指定の場所へ移動しよう!」

「了解!」


オルレンとスフィットは、偵察のために登っていた木から降りると、繋いでいるユニコーンに乗り、どこかへ走って行ってしまう。

その行き先は、ガランの町からは遠ざかるように走って行った。




▽    ▽    ▽




Side ???


浮遊戦闘艦のブリッジでは、目の吊り上がった美人が艦長席から指示を出している。


「停泊している帆船に、攻撃開始!

破壊する必要はないよ! 動けなくするだけでいいんだからねぇ!」

「了解。右舷砲塔用意!

目標! 空中桟橋に停泊する浮遊帆船!」

「停泊中の浮遊帆船! 了解!」

「……砲撃準備良し! いつでも撃てます!」

「では、てぇー!!」


右舷に搭載していたの大砲が火を噴く!

爆炎がブリッジからも見えたが、大きな音はしなかった。

ブリッジは、防音がしっかりしているようだ。


そして少し時間を置いて、停泊していた勇者たちを乗せてきた浮遊帆船の甲板が爆発した。

さらに、帆船の側面にも、大穴が開いた。


甲板に集まっていた船員は、助からなかっただろう……。

そして、浮遊戦闘艦からの攻撃は続く……。






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