第260話 召喚勇者勢ぞろい



Side ???


レストゥール聖王国の聖都にある大聖堂。

その大聖堂の中にある会議室では、教会が集めた勇者たちがそろっていた。

魔王のダンジョン攻略後、すぐに行動するための会議を行うためだ……。


「それで今、レンジが開発した『従魔の卵』を使って魔王のダンジョンに挑んでいるってことか?」

「はい、その通りです。勇者トモヤ様」

「僕の開発した魔道具を、そんなことに使うなんて……」

「勇者レンジ様の魔道具は、教会が使用するという契約を結ばれたはずです。

それに、次の魔道具を開発されているとか?」

「……」


勇者トモヤは、高校三年生の眼鏡をかけた秀才といった男の子だ。

学校からの帰りに召喚され、勇者として活躍している。


勇者レンジは、中学一年生の男の子だ。

まだあか抜けていない、声変わりもしていないので子供と間違われることがあるとか。

本が大好きで、召喚された後は勇者として活躍するより、サポート用の魔道具などを開発している。


今回は、教会に無断で魔道具が使われたことに納得いっていない。


「あのさ~、こんな会議してないで、みんなで魔王倒しに行った方が早いんじゃないの~?

これだけ勇者がいるんだしさ~」

「勇者ショウコ様、魔王のダンジョンは二百階層以上の大ダンジョンです。

最深部まで行くには、何日もかかると思われますので……」

「そうだぜ、ショウコ。

魔王のダンジョンへ入ったのは昨日だ。まだ、そんなに進軍してないだろうよ」

「それに、僕たちが集められたのは最深部に到達する前に、天界門の捜索のためですよね?」

「はい、勇者シンタロウ様の仰る通り、天界門の捜索のための話し合いのために集められたのです」

「天界門ね~」


勇者ショウコは、大学一年の女性だ。

おしゃれに気を使っており、この会議中も爪の手入れに余念がない。

おじ様との食事中に召喚され、お金がもらえなかったと召喚直後は文句を言っていたらしい。


勇者シンタロウは、中学三年生の男の子だ。

将来は俳優を目指しているらしく、芸能事務所に所属している。

また、テレビのドラマや映画にもちょい役で出演したことがあるらしく、年齢の割には大人びていた。


召喚されたときは、ちょうどマネージャーと一緒に移動中だったようで、帰ったらどう言い訳しようか今から悩んでいるらしい。


そして、もう一人名前は出てこなかったが、チャラい勇者のアキラがいる。

脳筋の気があり、頭を使わない言動が多い。

勇者の中では一番の力持ちだが、一応年長者としてふるまっている。


ちなみに、社会人で年齢は二十七歳らしい。


「勇者なら、まずは魔王討伐でしょ?

魔王のダンジョンに進軍した連中の応援に行けるように、勇者を別けたらいいんじゃない?」

「そうね、それで魔王討伐組と天界門捜索組に分ければ同時に行けるじゃない。

これだけ勇者がいるんだもの、戦力は十分でしょ?」

「それは、教会としてはやめていただきたいのです。

勇者ミサキ様、勇者カナデ様、皆様はそれぞれ戦い方が違われるのです。

それに戦力を分散すれば、付き添われる神殿騎士や神殿兵士の数にも限りがございますれば……」

「……分かったわよ」

「教会の指示に従うわよ……」

「ありがとうございます……」


勇者ミサキと勇者カナデは、颯太の知っている二人ではなく別の時間軸の二人だ。

そのため、勇者召喚され教会を信じてしまっていて、魔王討伐を使命のように思っていた。


では、颯太の知る二人はどこにいるのか?

颯太と同じ世界にいるのか、それとも違う時間軸にいるのか……。



「勇者の皆様、お待たせしました。

では、今後の勇者様方の行動を決める会議をはじめましょうか」


会議室へ入ってきたのは、一人の女性だ。

三人の教会関係者を連れて、勇者が座る円形状のテーブルの空いている席に座った。


「では聖女エスリーナ様、天界門のある浮遊大陸の情報を開示いたします。

教会が総力を挙げて調べた情報でございます」

「お願いします」


聖者が笑顔でお願いすると、円形状のテーブルの上に大きな地図が広げられた。

そこには、浮遊大陸の絵が描かれていて、詳しくどこに何があるか記されていた。


「へぇ~」

「フム……」


勇者たちの関心する声が漏れる……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


俺たちは今、奈良のホテルの一室に泊まっている。

奈良の観光地を班ごとに巡り、奈良のホテルに到着しクラスごとに部屋を割り当てられ泊ることになっている。


もちろん、男女は階で別々になっている。


「奈良のホテルに泊まるんじゃないか~」

「癒着はなかったな、陸斗」

「まあ時間的に奈良観光の後、京都に戻れるわけないよな~」

「お前らな~、修学旅行の予定をホームルームでも話しただろう。

何を聞いていたんだ?」


陸斗と悟が、点呼に来た担任の先生に怒られている。

ホテルのロビーで、堂々とおかしな話をするからだ。

先生は、見ていたというわけだな……。


「しかし、東大寺の大仏はデカかったな……」

「うん、デカかった」

「でも、外国人の観光客が多かったな」

「確かに、他の学校の生徒もいたが外国人観光客が目立っていたな……」

「ああ、知らないことを質問されて焦ったよ……」

「そういえば、外国人観光客から話しかけられていたな颯太。

言葉とか大丈夫だったか?」

「それは問題なかったよ。

ただ、知らないことを質問されるのが困ったな……」


俺には、異世界言語理解というスキルがあるため、どこの国の言葉だろうと日本語にしか聞こえないし、喋るときは相手の国の言葉で返せるのだ。

異世界スキル様様だな。


だが、外国人観光客より日本のことを知らなかったということが、少しショックだった。

日本人なのに、日本のことを知らないとはな……。


「羨ましいな~。

颯太は、相手の母国語でぺらぺらと話せる見たいでさ~」

「確かに、羨ましい!」

「颯太、英語のテストの点数平均ギリギリなのに、何でそんなに喋れるんだよ……」

「か、会話と勉強は違うからじゃないか?

ほら、文法とか?」

「ん~、そうなのか?」

「試験英語と英会話が少し違うとかかな?」

「どうなんだろう……。

でも、話せるって羨ましいよな~」


うん、今日だけは異世界召喚にお礼を言おう。

召喚してくれて、ありがとう!







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る