第257話 修学旅行 出発



Side 五十嵐颯太


学校に集合した後、バスに乗って駅へ移動して、今度は新幹線へ。

そして目的地、京都を目指すことになる。

そう、今日は修学旅行の初日だ。


「新幹線の車内では、大人しくしておくようにな。

車掌さんとかに、迷惑をかけるなよー」

「「「は~い」」」

「分かってますよ、先生」

「渡辺、お前らが一番信用できんのだが?」

「ひどい!」


担任の注意に、笑いが起きる。

今日のる新幹線は、修学旅行の団体専用車両だ。

クラス別に一車両が当てられ、みんなはしゃいでいた。


「それで、颯太は移動時間、どう過ごすの?」

「京都まで二時間ほどだっけ?

景色に飽きたら、本でも読んでるよ」

「あら、携帯で動画とか見ないの?」

「周りが五月蠅いからね。

それに、どんな動画を見ているかで揶揄われたくないし」

「ああ、確かに気になるよね~。

人が何の動画を見ているのか……」

「そうなのか?

かな恵も凛も、颯太が何の動画を見ているのか気になるのか?」

「そりゃあ、人が見る動画が面白かったら気になるじゃない?」

「それに、私だけ見なかったら、何か損した気分になるし」

「……それは、もう病気じゃないか?」


他人が見る動画が気になる。

まあ、俺も気にはなるが損した気分にはならないと思う……。


「そろそろ出発だぞ~。

自分の席に戻れ~」

「「は~い」」


ピロリロン、ピロリロン、ピロリロリ~ン。


『今日も新幹線をご利用いただきまして、ありがとうございます。

この電車はのぞみ号、修学旅行専用列車となっております……』


へぇ~、出発時のアナウンサーってこうなっているのか……。

修学旅行専用列車ということは、一般の乗客は乗ってないってことか……。


「あ、東京タワーが見えた」

「ええ?! どこ、どこ!」

「ああ~、もう過ぎちゃったよ」

「クッ、見たかったのに……」

「次は、富士山かな?」

「どっち側で見れるんだっけ?」

「え~と、この新幹線は新大阪行きだから、右側だな。

だから、今俺たちが座っている側だ」

「おお~」

「今度こそ見逃すまい!」


東京タワーが見えたのは冗談だけど、富士山は見たいよな。

新幹線から見る富士山は、またいいものらしいからな……。




▽    ▽    ▽




Side ???


「……こんな物が、爆発の原因とはな」


スーツを着た男は、天井の明かりに歪な形の宝石をかざして見ている。

時々、宝石をまわしているのは詳しく見るためだろう。


「あまり、弄らないでくださいよ?

それだけでも、この部屋を吹き飛ばすエネルギーが内包しているんですから……」

「おっと、それは怖いな……」


そう言うと、机の上の綿が入った箱の上にそっと置く。

言い方は軽いが、慎重になっているのは確かだ。


「それで、これの使い方が分かったって?」

「ええ、この宝石の内包しているエネルギーを取り出せないか研究しているんですが、もし取り出せた場合、現在の原子力発電所二基分の働きをするエネルギーが使えるようになります」

「ほう、二基分。

でも、何かデメリットがあるんだろ?

核と同じように扱いが難しいとか、火力のように環境に配慮しないといけないとか……」

「いえ、それがかなりクリーンなエネルギーのようなんです。

ここにある宝石、すべてのエネルギーを取り出すことができれば、向こう百年間。

今稼働中の発電所をすべて止めても、問題ないようなのです」

「そんなにすごい代物なのか……」

「私たちはこれを、エネルギーストーンと呼んでいます。

宝石とは別物のようなのでね」

「エネルギーストーンか。いいじゃないか?

だが、エネルギー問題がこれで解決できたとして、継続的に入手は可能なのか?」

「一番の問題は、そこなんですよね……。

今回のエネルギーストーンは、例の爆心地の周りから発見されています。

しかも、大量に、です。

ですが、いつまでも発見されるとは限らない……」

「ではどうするか、か……。

何か、代替えするものはないのか?」

「それは、現在捜索中です。

まあ今は、このエネルギーストーンからエネルギーを取り出す方法を考えないと……」


結局、エネルギーを取り出す方法が確立していない今から、使い方のことを考えるなど捕らぬ狸の皮算用ではないか……。

少し呆れたが、研究者とはこんな物なのかもしれないな……。


「……しかし、このエネルギーストーン、どこかで見たことがあるような気が……」

「陣屋さん、どこで見たか分かりませんか?」

「ん~、確かダンジョンパークに、似たような物がなかったかな……」

「ダンジョンパーク、ですか?

あそこに、そんなエネルギーストーンのようなものあったかな……」

「司君は、ダンジョンパークに行ったことがあるのかい?」

「ええ、半年前ですけど。

ファンタジー要素満載で、猫耳少女がかわいかったですね~」

「最初の宣伝動画か。

確かに、偽物というような感じではなかったな。

猫のようにピクピクと耳が動いていたし、尻尾も自然と動いていた」

「すごい技術ですよね~。

ダンジョンパークって、どうなっているんですかね?

研究者目線で観察していたんですが、さっぱり分からなかったんですよね~」

「確かに、不思議な場所だよな~」


司研究員と、ダンジョンパークの話で盛り上がったが、今はエネルギーストーンの研究を頑張ってほしいものだ。

日本にもたらされたエネルギーストーンの数は百個。


国連の調査隊に協力したからだということだが、あのような爆発事故を起こしてしまった後が大変だった。

また、あの爆発事故にもかかわらず、死体が見つかっていないのも話題になっている。


ニュースでは、コメンテーターがあることないこと推測で話しているようだが、本当にどこに行ってしまったのか……。


後、不思議なことといえば、北海道の礼文島で二足歩行で歩く猫を発見したとかニュースになっていたな……。







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