第256話 爆発事故



Side ???


元独裁国家にあった空港は現在、朝鮮半島国際空港となっていて国連の調査部隊の飛行機の発着が優先されていた。

調査品を運ぶための飛行機が停泊しており、ちょうど調査品が運び込まれようとしていた。


「この木箱で最後だ!」


牽引車で運び込まれた大きな木箱は、爆心地から発見された巨大な宝石だ。

赤黒い色をしていて、見ているだけで何やら不快な感じがするが、これも研究材料の一つと思えばここまで運んできたのだ。


また、爆心地から発見された宝石にもかかわらず、ガイガーカウンターは正常値を示している。

放射能の影響を受けていないこの宝石は、何なのだろうか?


「フォークリフトで、運び込めるか?」

「重さは大丈夫だと思うが、とりあえず持ちあげてみよう」


そう言うと、運搬職員が、フォークリフトに乗り込み大きな木箱を乗せたパレットに歯を入れて持ちあげようとする。

しかし、どんなに持ちあげようとしても持ち上がらない。


「あれ? おかしいな……」

「ルベルトさん、これ、かなりの重さがあるんじゃないですか?」

「そんなに重かったら、ここまで運べないだろ?

牽引車で運べたんだぞ?」

「なら、何で持ち上がらないんだ?」


とその時、木箱の中からバチバチと電気がシュートする音が聞こえた。

さらに、木箱の中から放電が見えた。


「な、何だ?!」

「おい! 木箱から離れるんだ!!」

「フォークリフトから降りろ!」

「うわあぁあぁ!」

「おい、マジかよ!」


次第に、バジバジバジと連続で強い放電が起こり眩しくて近寄れなくなった。


「一体、何が起きてんだ……」

「全員退避だ!!

すぐに逃げろ!

もしかしたら、爆発……」


ひときわ光り輝くと、大きな木箱に入っていた宝石が爆発した!

周りのすべてを巻き込み、まるで核爆発のような威力の爆発が空港で発生した。


空港の周辺にあった建物の窓ガラスはすべて割れ、家屋はほとんどが爆風により倒壊。

空港は完全に破壊され、爆心地にはクレーターができていた。


この爆発事故は、大々的にニュースになり調査の在り方が問題となった。


また、当時空港にいた職員の中で、生き残りは何故かほとんどおらず死体も見つかっていない。

南朝鮮からの事故調査隊が、いくら調べようと分からないことばかりだった。

ただ一つ、爆発があったことだけはクレーターの存在から証明できたが……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


修学旅行を明日に控えた今日、俺はいつものようにコアルームでミアの報告を聞いている。

昨日の爆発事故にも驚いたが、そのことで報告があるそうだ。


「昨日の朝鮮半島の空港で起きた爆発事故ですが、原因が分かりました」

「ニュースじゃあ、テロじゃないかって言っていたけど?」

「いえ、テロではありませんマスター。

彼ら調査隊が運ぼうとしていたのが、爆発の原因です」


原因は、荷物?

そういえば、彼らは国連が送り込んだ調査隊だったな。

核爆発の爆心地を中心に、調査をしていたけど何の調査をしていたのか……。


「それで、彼らが運ぼうとしていたものは?」

「魔石です。

それも、核爆発の熱で一つに凝固した多数の魔物の魔石が原因でした」

「……魔石って、熱で溶けるのか?」

「はい、熱を加えれば形を変えます。

錬金術などは、これを応用して魔石の加工などを行っています。

ただし、扱い方を間違えれば今回のような大爆発を起こします」


な、なるほど。

調査隊は、扱いを間違えたため大爆発を起こし、大惨事を招いたというわけか。

でも、そんなに乱暴に扱っていたのか?


「今回運搬しようとしていた魔石は、核の熱で変形し多数の魔物の魔石が一つに固まったものでした。

大きさは……、そうですね軽自動車一台分といったところでしょうか。

重さも、その位のはずです。

それを木箱に入れて固定し、緩衝材を詰めていたそうです。

ですが、その魔石には核爆発のエネルギーの一部が封じ込められていたようで、あるキーワードによりそれが解放され爆発した模様です」

「よくそこまで調べられたね……」

「魔石による爆発は、魔力による痕跡が残りますので、それを調べればどうなって爆発したのか見てきたかのように分かるのです」

「へぇ~」


魔石の扱いか……。

それにしても、爆心地から魔石が見つかったということは、大きな魔石一つだけってことはないはずだ。

遺跡ダンジョンからは、かなりの魔物が出現していたからな。

魔石も、かなりの数が見つかるはず。


となれば、その魔石の扱いを間違えれば、調査隊の施設のあちこちで爆発事故が起きるってことか?

……大丈夫か?


「それにしても、キーワードか……」


まさか、例の有名な○○〇ではないよな?

男の子と女の子が手を繋いで、一緒に呪文を言ったら空飛ぶお城が崩壊したっていうアニメ映画。

あれ、何度も見たよな~。


「ミアは分かるか?」

「……残念ながら、そこまでは分かりません。

ですが、核爆発で倒された魔物の魔石です。

キーワードは、それに何かしら関係のあるものではないでしょうか?」

「ん~、確か、調査隊は宝石をかなり見つけていたよな」

「はい、あれは宝石ではなく魔石ですが……」

「じゃあ、その魔石が今回の爆発事故と同じキーワードを言ったりしたら……」

「それは大丈夫だと思います。

あの爆発は、あの大きさの魔石だからこそ起きたのです。

回収された魔石の大きさでは、そう大きな爆発は起きませんよ。

せいぜい、花火程度でしょうか」

「花火? どんな?」

「……ロケット花火、でしょうか?」

「……」


爆発することは、爆発するんだな。

そんな魔石を使って、魔道具を動かしているっていうのは、今さらながら少し怖いな。

でも、カセットコンロと同じようなものかな?


扱い方を気を付ければ便利だが、扱い方がまずいと爆発事故が起きる。

何事も、扱い方ってことなのか……。






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