第254話 研究所の実験



Side ???


あの国にある生物・細菌研究所の一室。

ここでは、暴走する前の遺跡から出現した化け物を解体して保管していた。

その中の、光る宝石のような石を研究している……。


「ん~、この光は、この石自体が光っているみたいですね……」

「光る石? 化け物の体内から出てきたものだぞ?

何かの鉱石というわけではないのか?」

「違いますね。

鉱石というより、水が固まったもの、そうゼリーに近いと思います」

「ゼリー?」

「ええ。ちょっと、見てください」


研究員の女性は、もう一人の研究員の男性に顕微鏡を覗くよう促す。

研究員が顕微鏡を覗くと、そこには透明な光る石が見える。


「透明でしょう?

後、その石をこの串で突いてみてください」

「フム……」


女性研究員が、男性研究員に串を渡し、再び顕微鏡を覗きながら光る石を串で突く。

すると、光る石は串で突かれて形を変えた。


「石が、へこんだ?」

「そのまま見ていてください」

「………あっ、石が元に戻っただと?!」

「この石は、顕微鏡で見なければならないほど小さいですが、近頃国連の調査隊が見つけたそうじゃないですか?

光る石の大きい物を……」

「……そういえば、ニュースになっていたな。

まさか、アレを手に入れろというのか?」

「いいえ、あれじゃなくてもある程度大きい物を手に入れられないか、と……」

「ん~、上に掛け合ってみるが期待するなよ?」

「はい、ありがとうございます」


男性研究員は、どう交渉するか考えながら研究所を出ていこうとした時、あるものに目がいった。

それは、円柱状の透明な水槽なのだが、中身がおかしい。


「君、これは何だ?」

「あ、それは、化け物の幼生体です。

化け物の細胞から培養して、今この大きさになりました。

どうです? 人に近い形をしているでしょう?」

「だが、すごい醜い顔をしているな。

それに、体の色も緑色とは……」

「こいつ、ゴブリンというらしいですよ」

「ゴブリン? あのゲームやファンタジーに出てくる?」

「そうです。

……何やら、おかしいと思いませんか?」

「おかしい?」

「こいつは、あの遺跡から出てきた化け物の細胞から培養したものです。

ということは、あの遺跡からゴブリンが出てきたということ。

何千年前の遺跡からゴブリン……。

何かがおかしいとは思いませんか?」


男性研究員は、女性研究員からの指摘に真剣に考える。


歴史的遺跡から、ファンタジーのゴブリンが出現する?

確かに、おかしい。

確か、こんな話を読んだことがあるな……。


あれは、ラノベとかいうジャンルの本だったか?

異世界に行った人間が、チート能力を貰って好き勝手する話だったな。

そしてその中に……。


「もしかして、ダンジョン?」

「やはりその答えにいきつきますね!

そうです、あの遺跡は歴史的遺跡なんかではなく、ダンジョンだったんじゃないかってことなんです」

「まさか、この科学の進んだ地球で、か?」

「ええ、そのまさかです!」

「……俄かには信じられないが」

「これは、調べてみる必要があると思いませんか?」

「まあ、それは……」

「だからこそ、国連の調査隊が手に入れた光る石が必要なんです。

何とか、手に入れてください!」

「……わ、分かった。何とかしてみよう……」

「ありがとうございます!」


男性研究員は、ゴブリンの幼生体の入った水槽をじっと見つめた後、研究室を出ていった。

女性研究員は、ゴブリンの水槽に近づく……。


「フフフ、ゴブリン以外の化け物を作りだせるかもしれない。

これで、ノーベル賞も夢ではないわね……」


ゴブリンを蘇らせようとしている女性研究員。

蘇ったゴブリンが、どんな行動に出るか分かっていない。

彼女は、後々に後悔する。


ゴブリンの生態について、何故調べなかったのかと……。




▽    ▽    ▽




Side 魔法を使った部分的記憶喪失の女性


『ブギー、ブギー』

「クソ、大人しくしろ!」

「おい、そこを押さえろ!

お前は、そっちを押さえてくれ!」


北の大国の兵士たち五人が、大きな豚を押さえていた。

しかもその豚は、大きさもそうだが、前足と後ろ足が長い。


「……あの足の長さなら、二足歩行もできるかも」

「ん? 何だあんた、見てなかったのか?

あの豚が歩くところを」

「は、はい。さっき、聞いてきたばかりなので……」

「そうか、みんな驚いていたぜ?

何せ豚が、二足で歩いているんだからな……」


私の近くにいた、兵士が状況を説明してくれた。


今から一時間ほど前、犬たちが騒ぐので兵士たちが警戒していると、二足で歩く豚を発見した。

始めは太った侵入者かと思ったらしいが、服を着ずにうろつき、顔を確認すれば豚そのものだったため、人数を集めて捕縛したらしい。


ただ、捕まえようとした時、かなり抵抗され乱闘になったそうだ。

一人の兵士が、足を銃で撃ち抜き動けなくしたところを人数で今のように押さえつけているという。


なるべく生きたまま捕まえて、後方の研究所へ送るらしい。

二足歩行の猫や、オルトロス化、ケルベロス化した犬たちも後方の研究所に送られたそうだ。


その研究所では、何故動物が変化? 進化? したのか調べるとのこと。


「それじゃあ、今いる二足歩行の猫やオルトロスの犬たちは……」

「サンプルは二、三頭いればいいだろう?

何頭も、研究所は引き取ってくれなかったそうだから放置しているってことだな。

まあ、何か被害があったわけじゃないし大丈夫じゃないか?」

「はぁ……」


確かに、私の病室にも二足歩行する猫はいる。

何か危害を加えられたわけでもないし、二足で歩く以外普通の猫だしね……。


北の大国が研究をしているなら、他の国でも研究をしているのかな?







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