第251話 開園の日、別の場所で



Side 渡辺陸斗


「うむ、このウエハースをチョコとやらで包んだお菓子もうまいのう~」

「たまには、こういうスナック菓子もいいだろ?」

「うむ、陸斗の言う通りじゃな」


今日は、九州ダンジョンの始まりの町にある駄菓子屋で購入した、スナック菓子をもってアニュスのいるこの神社に来た。

最近は、洋菓子に和菓子と手の込んだものをアニュスたちに与えていたが、お菓子とは手軽に食べられるものもあることを思い出し、スナック菓子を買ってきたのだ。


結果は、アニュスたちは気に入ってくれて今後は、俺の財布に優しくなった。


「そういえば陸斗、今日は、アメリカダンジョンパークの開園日じゃなかったっけ?」

「そうらしいな。

けど、悟、よく知ってたな。宣伝動画とか出してなかったのに」

「ダンジョンパーク関連の記事は、チェックしているからな。

他にも、わざわざアメリカダンジョンパークに行った日本人もいるらしいぞ」

「へぇ~、物好きだな~」

「物好きなのか?」

「それは物好きだろう? 恭太郎。

颯太によれば、アメリカダンジョンパークは成長型ダンジョンパークだそうだ」

「成長型?」

「そう!

まあ、要するに、面白くなるのはこれからってことだ。

今、アメリカダンジョンパークにあるのは、最初の町と十六のダンジョンだけだ。

他は、何にもない」


颯太によれば、ファンタジーダンジョンパークや九州ダンジョンパークのように、農作物を作っていたり、鉱物資源があったりするわけではなく貿易もしていない。

ファンタジー側の人々もいないし、まさに、面白ダンジョンで集客を稼ごうとしているだなのだ。


「でも、ネットの掲示板だと、面白ダンジョンのことが話題になっていたけど?」

「面白ダンジョン?」

「ああ、そうだ恭太郎。

アメリカのダンジョンパークにあるダンジョンには、面白いものがある。

例えば、筋肉ダンジョン!」

「「筋肉ダンジョン!?」」

「筋肉による、筋肉のための、脳筋ダンジョンだ!」

「「脳筋?!」」

「……何じゃその、いかにも暑苦しそうなダンジョンは……」


アニュスの言う通り、想像しただけで暑苦しそうだ。

俺は、絶対行きたくないな!


「あと、スネークダンジョンというのもあったな」

「スネーク? ヘビダンジョンってこと?」

「いや、正確にはスニーキングダンジョンだ。

敵の魔物に見つかることなく、ダンジョンを奥に進み宝物などを盗み出してくるというダンジョンだ。

スネークというのは、ゲームの主人公の名前らしい。

そういうスニーキングゲームで有名なものがあってな、それ以来スニーキングのことをスネークとネット界隈では呼ばれるようになったらしい」

「へぇ~」

「敵に見つかった場合は、どうするんだ?」

「戦うか逃げる。

戦った場合は、敵に警戒が厳重になるし、逃げた場合は一定時間厳重になるだけらしい」


このダンジョンは、ソロ推奨だがパーティーでも入れるらしい。

だが、下層に行けば行くほど、難易度は増すし敵が強くなる。


まあ俺は、挑戦したくないダンジョンだ。


「他には、どんなダンジョンがあるんじゃ?」

「えっと、後紹介されていた中には、反射ダンジョンというのがあったな」

「反社ダンジョン?」

「社会的にアウトなダンジョンじゃないぞ?

反射ダンジョン、つまり鏡張りのダンジョンってやつだ。

遊園地にあるだろ?

鏡の迷路、アレをダンジョン規模にしたものだそうだ」

「うわぁ~」

「絶対、気持ち悪くなるな……」

「それは、女子とかは入りたくなさそうじゃのう~」

「女子?

……なるほど、スカートの中が見えてしまうということか?!」

「「な、何だってぇ?!」」


俺が、アニュスの指摘にピンときて理由を言ってしまうと、悟と恭太郎が反応してしまった……。




▽    ▽    ▽




Side 大内凛


「ふ~、食欲の秋ねぇ~」

『ヒャン! ヒャン!』


白狼の子供と、草原でピクニックを楽しみながら、シートの上で私たちは焼き芋を食べている。

白狼の子供たちは、草原を駆け回りながら戯れているし、私たちはプチ女子会だ。


「町で買った焼き芋だけど、結構おいしいわね」

「蜜がじわっと溢れてくるんですよね~」

「あの焼き芋屋って、テレビで紹介されていた有名な店のダンジョンパーク支店でしょ?

普通、かなり並ぶらしいよ」

「じゃあ、私たちはついていたってことね。

並ぶことなく、買えたんだから……」


アメリカダンジョンパーク開園の今日、アリアナを誘ってテイムできる九州ダンジョンに私たちは来ていた。

本当なら、アリアナはアメリカに帰国してダンジョンパーク開園式典に出るはずだったらしいのだが、飛行機のチケットが取れずこうして私たちと一緒にいる。


「日本の焼き芋、本当に美味しいです」

「そうでしょう、そうでしょう。

これ、お通じも良くなるから便秘にも効果あるんだよ~」

「それは、素晴らしいですね!」


アリアナ、お通じに悩んでいるのかな?

でも、今は、私たちだけだからいいけど、町中では言わない方がいい。


「ねぇねぇ、これ見て!」

「ん? かなちゃん、さっきから携帯の画面に夢中になっていたと思ったら……」

「アメリカのダンジョンパークのことを調べていたのよ。

アリアナの両親、ダンジョン企画の関係でアメリカに行っているんでしょ?

どんな式典をしているか、気になると思ってね」

「ありがとうございます、かな恵」


携帯の画面には、アメリカダンジョンパークの開園式典が映っていた。

どうやら、中継をしているらしい。


「あ、壇上にパパが映っています!」

「え? パパ? どこどこ?」

「ここ、ここです!」


アリアナのお父さんは、背が高く隣にいる颯太のお父さんが子供に見える。

でも、颯太のお父さんの隣にいるなんて、結構重要人物なのかな?


『これで、アメリカダンジョンパーク、開園です!』


ファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が舞った。

アリアナは、笑顔で父さんを見ている。

カッコイイ姿を確認して、喜んでいるのかな……。







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