第250話 アメリカダンジョンパーク開園
Side 五十嵐颯太
十月後半、フロリダにアメリカダンジョンパークが開園した。
当初から宣伝を一切行わなかったにもかかわらず開園式典には、一万人以上の参加者が集まった。
また、来園者の中には、日本のダンジョンパークに行ったことがある人たちもいたため、入り口ゲートをすんなりと通過した人達もいたらしい。
「ん~、宣伝していないのに、こんなに人が来るのか……」
「アメリカダンジョンパークは、まだ完成していないんですけどね……」
そう、アメリカダンジョンパークはまだ完成していない。
開園時の今、行動できる範囲は、第一階層にある最初の町。
そこから街道を通って行くことができる、十六のダンジョンだけなのだ。
日本にあるダンジョンパークのように、第二階層から第十階層が何かしらに使われているわけではない。
今後、第二階層に畑階層を、第三階層に牧場階層を造る予定で、それが完成後、第一階層に加工工場などを作る話があるらしい。
また、第二、第三の町を造って人を住まわせることも考えているとか。
移民大国のアメリカでは、今後受け入れる移民をダンジョンパークに住まわせてはという計画も議会で話し合われているとかいないとか。
まあ、ダンジョンパーク内は、異世界言語理解というスキルの影響で言葉の壁がなくなるから誰でも言葉が通じて、意思疎通がやりやすくなるだろう。
「問題は、アメリカダンジョンパークには、異世界人がいないということかな?」
「九州ダンジョンパークでも、異世界人が少ないようですが……」
「最初のダンジョンパークに、ほとんどいるからね」
新たな異世界人の難民も受け入れているけど、地球人との接触はさせていない。
もし接触させると、異世界と通じていることがバレるんだよな……。
「マスター、異世界と通じていること、まずは誰に話しますか?」
「ん~、誰に話すのがいいんだろうな……」
「難しいですね……。
地球から異世界へ通じるダンジョンパーク、大変なことになるのは目に見えていますね」
アメリカダンジョンパークの最初の町にある家の応接室で、俺とミアがソファに座って書類を見ながら話し合っている。
外では、ダンジョンパークの開園式典が開かれているが、俺たちは参加していない。
参加しているのは、ダンジョン企画の社長である父さんだけ。
今回は、ダンジョン巫女のミアやエレノア、ソフィアも参加させていない。
もちろん、セーラやルナも参加していない。
まあ、セーラやルナは九州ダンジョンパークでのクレーム対処で大変らしい。
やっぱり、クレーム処理のための人員が必要かな……。
「……もう、異世界に行けることを売りにしてもいいかもしれないな」
「マスター……」
「冗談だよ! 異世界に行ったとしても、命の保証はない。
それこそ、自己責任ということになってしまう。
だから、異世界に行けることを売りにはしない!」
「それが、賢明だと思います」
ファンタジーに憧れて、ダンジョンパークに来る人がこれだけいるんだ、異世界に行けると知ったら、どれだけの人が異世界に行きたがるか……。
そして、異世界では、自分の身は自分で守らなければならない。
それに、召喚陣で召喚されていくわけじゃない。
魔法が使えないまま、異世界に行ってどうなるか……。
仕方ない、異世界に行けることは、このまま黙っておくことにするか。
▽ ▽ ▽
Side 五十嵐太郎
『ではこれより、テープカットを行い、アメリカダンジョンパークの開園といたしましょう。
代表の皆様、壇上へお上がりください』
俺の出番だな。
アメリカダンジョンパークの開園式典に参加したが、やることは九州ダンジョンパークや最初のダンジョンパークの開園式典と同じだ。
お偉いさんの話を聞き、開園を現すテープカットではれて開園となる。
『では、ハサミをお入れください』
そう言われ、持っているテープにハサミを入れて切る。
他の人たちも、同じようにテープにハサミを入れて切った。
『これで、アメリカダンジョンパーク、開園です!』
司会者の宣言のすぐ後、ファンファーレが鳴り見に来ていた観客から拍手喝采が起こる。
そして、並んでいた入場者第一号が、入り口ゲートを通過した。
事前に、登録作業を終えてギルドカードを作っていたので、スムーズに入場できた。
最初の人が入場すれば、次々と入場していく。
登録カウンターにも、人が並んで登録作業が行われていく。
「ほう、登録カウンターに人が殺到するかと思ったが、ちゃんと並んでいるな……」
「社長、アメリカといえどちゃんと並ぶ人は並びますよ」
「そうか、俺の認識を改めないといけないな……」
よく、テレビなんかで日本人はちゃんと並んで礼儀正しいとか報道されることがあったため、外国では混乱しているのかと間違った認識をしていた。
「神田君、今日並んでいる人に子供連れが多いのはなんでだ?」
「さあ、何故でしょうか?
今日は平日ですし、子供たちが多い理由は分かりませんね……」
今俺の隣にいるのは、ダンジョン企画のアメリカ担当になったスタッフの一人だ。
何人かいるスタッフの一人で、町の設計に関わっていたらしい。
それで、案内役として俺の側にいるわけだが……。
「まあいいか。
それじゃあ神田君、町の案内を頼むよ?」
「はい、お任せください。
まずは、冒険者ギルドから行きましょうか」
俺は神田君と一緒に、最初の町に向かう。
ダンジョンパークスタッフ専用ゲートを通り、最初の町へ入っていった……。
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