第248話 侵入者
Side ???
「ニャー」
今日も、ベッドに寝かされている女の子の側に二足歩行をする猫がいる。
女の子は、今も意識を回復していない……。
「ごめんね? この子の熱を測らせてね?」
「ニャー」
「ん~、やっぱり私たちの言葉が分かるのかしら?」
「ニャー」
「……まさかね」
猫が見守る中、私は女の子の体温を測るために体温測定器をおでこにかざす。
そして、少しすればピッと音がして体温が測れる。
文明の利器だよね~。
「三十五度六分、平熱ね。
じゃあ、猫ちゃん。ありがとうね~」
「ニャー」
そう猫が返事をすると、私は電子カルテに女の子の熱を記載して病室を離れる。
この後は、もう一人の意識の戻らない女の子の病室に行かなければならないのだ。
それにしても、どっちも意識の戻らない女の子。
片方は、魔法を使ったとして大騒ぎとなり大学の教授や政府病院の先生とかが訪ねて来ていた。
もう一人は、瓦礫に長時間埋もれていたにもかかわらず、衰弱だけで助かった女の子。
ただ、その傍らには二足歩行をする猫がいる。
そう、さっきまでいた病室の女の子のことだ。
もしかしたら、その女の子も何かあるのかもしれない。
もう一人の女の子と同じように、魔法が使えるとか……。
コンコンとノックをして、魔法が使えるという女の子の病室へ入る。
すると、こっちにもいつの間にか猫がいた。
「ニャー」
「ニャー」
「……こっちは、二匹いるのね。
それにしても、最近は二足歩行の猫が増えたわねぇ~」
そう、最近は二足歩行をする猫が増えた。
それも、この町に限ってだが町中に二足歩行の猫がいっぱいいるのだ。
中には、人の言葉が分かる猫がいるだの、人の言葉を喋って会話する猫までいるらしい。
本当か、どうかは分からない。
だけど、二足歩行の猫が増えているのだけは分かっている。
「この子の熱を測りますね~。
猫ちゃんたちは、そこでおとなしくしていてね~」
「ニャー」
「ニャー」
魔法を使った女の子も、ベッドに寝かされたまま意識が戻っていない。
おでこにピッと、体温測定器をかざせばすぐに測ってくれる。
「はい、え~と、三十六度一分。平熱ね」
「ニャ~」
「ニャ」
「それじゃあ、ありがとうね~」
そう猫たちにお礼を言った後、私は電子カルテに測った熱の数値を記載する。
その後、病室を後にした。
病室を出て、パソコンやいろいろな機材の乗ったカートを押しながら病院の廊下を歩いていると、二足歩行の猫とすれ違った。
一瞬、私は見間違ったかと振り返ると、そこには靴を履いた猫が歩いている後姿を見た。
もう一度目をこすり、二足歩行で歩く猫を見たが、間違いなく靴を履いている。
どうやら、世界はおかしくなっているようだ……。
▽ ▽ ▽
Side 五十嵐颯太
「核の爆心地から北にある、北の大国の町で二足歩行の猫が増えている?
ミア、これってケットシーが生まれつつあるってことなのか?」
「それが、分からないのです。
このダンジョンにある資料に、ケットシー族関連の資料が見つかりませんでした。
他の種族は、わずかながら資料が残っているのですが……」
「俺たちが、異世界にいた頃もケットシー族は、絶滅の危機にあったからな~」
ケットシー族は、猫人族の一種類とされていたが、本来は別の種族である。
ケットシーは、猫が二足歩行したような姿であるのに、猫人族は人のような姿に耳、髭、尻尾など一部が猫のままという獣人だ。
また、繁殖力は猫人族が人族との間に子供を作ることができるのにもかかわらず、ケットシーは、同族のケットシーとだけ子供を作ることができる。
これこそが、ケットシー族を幻の種族とさせている原因だろう。
そんなケットシーが、この地球で生まれるかもしれない。
そんな状況になっていた。
「地球にダンジョンを出現させたら、幻の種族が誕生しました、何て笑い話にもならないな……」
「長靴をはいた猫が、実在することになりそうですね……」
「だが、その先に待っているのは、実験動物の仲間入りかな」
「ありそうで、怖いですね……」
ミアと、北の大国に現れた二束歩行の猫について話していると、ソフィアがコアルームに入ってくる。
何やら、焦っているようだけど……。
「マスター! アメリカダンジョンパークにある私たちの家に、ドロボーが侵入しました!
そして、階層の階段を下りていったみたいです……」
「それって、二階層へ降りていったってことか?」
「はい、今、エレノアが追跡していますが、捕まえた後どうしますか?」
「どうしますかって……」
アメリカダンジョンパークは、他のダンジョンパークと同じように全部で十階層に分かれている。
これが本来のダンジョンとして、別れている階層だ。
それとは別に、ダンジョン内に設置しているダンジョンは疑似ダンジョンといって、別空間に作ったダンジョンをダンジョン内に設置しているだけなのだ。
つまり、本来のダンジョンの階層に別のダンジョンを設置しているということだ。
ダンジョンパーク内は、本来階層間の移動を階段を使って行わなければならないことを、転移街道というダンジョン罠を使って階層を無視して移動させている。
だからこそ、ダンジョンパーク内のフィールドがめちゃくちゃ広く感じるのだ。
「アメリカダンジョンパークの二階層以降は、平地になっているだけの場所だ。
どこまでも草原が続き、中心部に下へ行く階段があるだけ。
それが九階層続いて、最後の階層の十階層は、コア神殿があるだけだ。
まあ、ダンジョンコアはダミーだから、壊されてもいいんだけど……」
「とにかく、侵入者をまずは捕まえないと……」
その時、エレノアから通信が入った。
『捕まえたわ! 侵入者の女性を!』
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