第243話 アメリカダンジョンパーク



Side アリアナ


『もう十月ですか……』


朝の教室で、携帯に表示された時間を見て呟く。

今月の終わり、アメリカでダンジョンパークが開園すると知らせが来た。

しかも、どんな内容になるかも教えてくれた。


場所は、フロリダ。

周りを城壁で囲まれた人工の小山に、ダンジョンパークへのトンネルを造る。

トンネルを入った後は、日本のダンジョンパークと同じなのだが、最初の町から先が違っている。


アメリカダンジョンパークには、最初の町から街道沿いに行くと、十六の分かれ道が出現する。

そこからそれぞれの道を行けば、ダンジョン都市へと繋がる。

つまり、十六のダンジョン都市が存在することになる。


また、十六それぞれで特徴の違うダンジョンが人々の挑戦を口を開けて待っている状態だ。


例えば、迷路ダンジョンや推理ダンジョン。

映画のようなアトラクション満載のダンジョンや、筋肉ダンジョンなどといったものまである。


『筋肉ダンジョンって、誰得なのよ……』


他にも、遺跡のような古代ダンジョンや戦争ダンジョンなんてものもある。

どんなダンジョンか気になるけど、たぶん一兵士になってダンジョンという戦場で戦うといった感じなのかな?


遺跡のような古代ダンジョンでは、どこかの教授になって宝物を盗ったり守ったりするのだろうか?


他のダンジョンも、アメリカ人が好きそうな感じになっている。

よく考えられたものだ……。


また、日本のダンジョンパークにある換金システムも取り入れられているから、ダンジョンパーク内で儲けて、ドルに変換も可能とのこと。

アメリカダンジョンパークによる、アメリカンドリームも可能らしい。


また、ダンジョンパーク内に住むこともできるそうだし、避難場所としても提供されるらしく国も州も協力的なのだとか。

そして、ダンジョンパーク内は日本と同じように、銃の携帯ができない。


銃専門店ができるらしいから、売ってはいるけど町中で使えば捕まるらしい。

そこは、良いことかもしれないな……。


『……そういえば、今回もダンジョンパークのトンネル設置には、あの魔法使いの女の子が現れたって話題になっていたな……』


深夜の暗闇で、小山の中腹に魔法使いの女の子が現れて、ダンジョンパークのトンネルを魔法で出現させたとか……。

監視カメラに、ピースサインして笑顔で突然消えたとか……。


本当に、どうなっているのかしら……。




▽    ▽    ▽




Side ???


「それじゃあ、荷物の搬入を急ぎますね~」

「あ~い、よろしく~」


アメリカダンジョンパーク、最初の町ジョージ。

ここは、アメリカダンジョンパークの玄関口であり、象徴となる町だ。

大きな建物は少なく、町の中心には自由の女神像が建てられた。


さらに、数々の有名店が並び、あちこちで商品や荷物の搬入がおこなわれている。

今月の終わり頃のアメリカダンジョンパークの開園に向けて、急いでいるのだ。


「セビラ、その段ボールはこっちの倉庫だ。

それと、足元に注意しろよ~」

「分かっているわよ!

私は、そんなにドジじゃないわよ……ッと!」


段ボール箱を二箱も持っていたために前が見えず、足元に置かれた段ボール箱に引っかかってこけた。


「……いった~」

「だから注意したじゃねぇか、足元に気をつけろよと」

「これ、開いたなら早く並べなさいよ!

そのままで置いておくから、引っかかったのよ!」


自分の不注意を棚に上げて、男性スタッフを怒るセビラ。

男性スタッフは、言い返せばケンカになると、何も言わずに黙々と開店準備作業をする。


そんな男性スタッフの態度に、ムスッとしたままセビラも開店準備を急いだ。


店の外のトラックから、段ボール箱を店に入れて、商品を並べたり倉庫に在庫の段ボールを入れたりと忙しい。

どこの店でも、人手は足りていない様子だ。


「そういえばセビラさん、今日来るはずのスタッフ、来ませんね」

「え? 来ないわよ、スタッフなんて」

「ええ?! 募集したんですよね?」

「したわよ、でも来ないのよ!」

「何でですか……」

「ニーナ、周りを見てみろよ。

どこの店も、開店準備中だ。当然スタッフ募集もしている。

そうなったら、何が起きるか分かるだろ?」

「ああ、そういうことですか……」


何があったのか、ニーナは男性スタッフの言葉で理解した。

募集したスタッフは、より良い報酬の店に取られたのだ。

いや、取られたというより、より報酬の良い方に行ったというわけだ。


「まあ、募集はずっとしているから、いつか誰か来るでしょ」

「それまでは、私たち三人だけですか?」

「本店から、助っ人は来てくれるわよ」

「……ブラック職場……」

「アントニー! 言って良いことと悪いことがあるわよ!」

「へ~い」


軽い返事をして、アントニーは開店準備に戻る。

ニーナも、しょうがないと諦めムードで段ボール運びを再開させる。


セビラは、店の外を眺めてため息を吐く。

トラックに積まれた段ボールの多さと、他の準備中の店に横付けされたトラックの多さに呆れたのだ……。


アメリカダンジョンパークのトンネルができて以来、こんなことが続いている。




▽    ▽    ▽




Side ???


瓦礫の中から手が生えていた……。


その周りには、人影はなかったが二足で立っている猫がいた。

首を傾げて、瓦礫から生えている手を見ていた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る