第239話 撤収
Side 五十嵐颯太
国連の議会を盗撮していた虫ゴーレムの映像を確認して、北の大国が核を二発撃ちこんだ事実を知る。
その後、ミアが北の大国から撃ち込まれたと報告してくれた。
「ダンジョン相手に核を使ってくるとはな……」
「マスターが作った遺跡の中にダンジョンを造りましたが、本来ダンジョン空間は別空間です。
核で破壊されるのは遺跡部分だけですね……」
「ダンジョンを消滅させるには、何の意味もないってことだな」
ダンジョンとは、出入り口のみがこの世界に繋がっていて、ダンジョンの中の空間は別空間となっている。
そうしなければ、異世界は穴だらけになってしまうのだ。
ダンジョンが、本当は魔物ではないかと説いた研究者もいたが、今は空間魔法を操る生物ではないかという説が異世界では主流らしい。
核の爆発により、すでに遺跡は吹き飛び、地形も変形してしまっただろう。
これ以上は、制裁も実験もできない場所となってしまった。
「ん~、ミア、これ以上は無理だな。
ある国への制裁も、地上に通常ダンジョン設置の実験も、核のおかげで立ち入り禁止の場所になってしまった。
これ以上は、設置し続ける意味がない。
引き上げてもいいよね?」
「……仕方ありません。
今までのことで、制裁したといたしましょう。
私も、時間とともに感情が落ち着き、実験の方が気になるようになりましたので……」
まあ、ミアは犠牲者たちの気持ちをくんで、制裁に走っただけだからな。
気持ちが落ち着けば、他人事になるんだろうな……。
「通常ダンジョンを引き上げるにしても、外にあふれ出ている魔物はどうなるんだ?」
「ダンジョンが消えると同時に、魔物も消えます。
ダンジョンの魔物は、野良化することはありませんし、繁殖もできないようになっていますので」
「それなら、早くダンジョンを引き上げるか。
今は核爆発の影響で、目視で分からなくなっているからな……」
俺は胸に埋め込まれているダンジョン核に、意識を集中すると頭の上から女性の声が聞こえてきた。
『設置したダンジョンを解除しますか?』
「はい、解除します」
『解除するダンジョンを選択してください。
ファンタジーダンジョンパーク
九州ダンジョンパーク
あの国ダンジョン』
なるほど、こういうふうに名称が決まっているのか。
アメリカダンジョンパークは、まだ設置していないからここには出てこない。
「あの国ダンジョンを解除」
『ダンジョンを解除します。
本当によろしいですか?』
「はい、解除します」
『………ダンジョンを解除しました。
ダンジョン核は空白に戻ります。
再び使用する際は、一から構築してください』
すると、あの国に設置したダンジョンが消滅する。
それと同時に、独裁国家やあの国、北の大国にいた魔物たちがフッときれいに消滅した。
ただし、魔素は消滅しないので、核爆発によって広範囲に飛ばされた魔素は、拡散を拒んでいたダンジョン壁が消滅したため、海へと流れて行ってしまった。
でもこれで、核によってダンジョンが消滅したようになるだろう。
遺跡も崩壊したし、放射能の影響がどう出るか……。
▽ ▽ ▽
Side ???
「大統領! 化け物たちが消えました!」
「……いきなりなんだ? 化け物たちが消えたとは、どういうことだ?」
国連からの連絡で、核に関して今後のことを話し合うようにとの要請が来た。
また、アメリカをはじめ、各国から首脳会談の話も来ている。
私の命令で、核を撃ち込んだとはいえ国連の各国の態度は同情的だ。
どうやら、ホブロフ国連大使がうまく立ち回ってくれたようだ。
「核による、目標の遺跡の消滅は衛星からの映像で確認が取れました。
かなり視界が悪かったようですが、何とか確認できました。
それに伴い、各地に出没していた化け物の消滅も確認されています」
「例の町に出現した化け物も、消滅したのか?」
「はい、消滅したと前線の兵から報告が入っています」
化け物がいなくなったのなら、やるべきことは一つだ。
すぐに、追加の兵を送り込み各地の治安維持をしなければならない。
「化け物がいなくなったのなら好都合だ。
すぐに各地の治安維持に兵をまわせ! ちょうど休戦したばかりだ。
南に送っていた兵をそっちに回すぞ」
「ハッ!」
これで、各国との話し合いをうまく片付けることができれば制裁解除も見えてきたな。
私が原因とはいえ、制裁を解除してもらえるなら我が国は復活する。
今回の件を、最大限に利用させてもらうぞ……。
▽ ▽ ▽
Side ???
「大統領、北の独裁国家が混乱しているようです。
アメリカからも要請を受けました。
すぐに、人道支援のために治安維持と食糧や医薬品を送れとのことですが……」
「導く独裁者がいなくなったらしいな」
「はい、偵察衛星からの映像で、国民に殺される映像があったとか……」
北の独裁国家で革命が起きた。
すでに、独裁者はいないし後継者もいない。
そして、町は大混乱に陥っているらしい。
米軍はすでに、沖縄から部隊を動かして海から人道支援のために侵入するらしい。
それに合わせて、我々も人道支援という名目での国境を越えろとの要請だ。
あの国に動きはない。
元独裁国家を見捨てたらしいとの見方があるが、本当は何を考えているのか……。
「アメリカからの要請は、断ることはできないな。
すぐに人道支援と治安維持のために、国境を越えて部隊を派遣しろ!」
「ハッ!」
さて、南北統一が実現するか?
それとも、国連主導で立て直しを図るのか……。
何にしても、あの国の動きが見えないのが不気味だな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます