第231話 ダンジョン都市



Side 五十嵐颯太


九月も終わりごろ、アメリカダンジョンパークの開園地が決まり整地作業が始まった。

ただ、ダンジョンパークは、山の中腹のトンネルなどを利用して開園しているため、フロリダの開園場所に山を作ってもらっている。


規模は、小高い山程度になる予定だそうだ。

で、その作業が終了するまでアメリカダンジョンパークの方は休みとなる。


また、ある国に仕掛けた制裁ダンジョンの実験は、膠着状態となった。

高濃度魔素の広がりが何故か停止し、ダンジョンからあふれ出た魔物が支配地域を広げなくなったのだ。


そのため、ダンジョンを中心にした三カ国に跨った魔物たちの領域は、立ち入り禁止地区とされ監視されるだけの地域となる。


これでは実験が進まないため、監視のみとし別のことを進めることにした。


それは、異世界側の魔王のダンジョンとの交易だ。


昨日、ようやく異世界側に放っていた虫ゴーレムが魔王のダンジョンに到達した。

そこで、虫ゴーレムを起点に転移魔法で俺たちは移動した……。



準備を整え、俺とミアとエレノアは、コアルームから転移魔法で魔王のダンジョンの近くの森へと転移する。

直接、魔王のダンジョンへ転移しないのは、魔王のダンジョンがダンジョン都市になっていたからだ。


森を抜け、街道に出るとすぐにダンジョン都市の門が見えた。


「はぁ~、でっかい門だな……」

「はい、かなり立派な造りをしている門ですね」

「あれが、魔王のダンジョンの周りにできた街の入り口とは思えないわね……」


歩いて門に近づくと、街に入るための列ができていた。

その一番後ろに、俺たちも並ぶ。


「ねえ颯太さん、並んでいる人たちって冒険者か何か?」

「ん~、そんな人が多いみたいだけど、普通の人もいるみたいだね」

「そうね、子供もいるしたまたまじゃない?」

「なるほど」


他愛もない会話をしながら、列に並んでいると後方から馬車が一台、走り抜けていく。

かなり急いでいるらしく、門の前にいる兵士たちの制止を無視して走り抜けていった。

ただ、走り抜ける時、ある紙の束を兵士に向けて投げていたようだけど……。


「隊長、この紋章は!」

「緊急事態だ! すぐに各ギルドへ知らせに走れ!」

「「「ハッ!」」」


五人の兵士が、紙の束から何枚か受け取り街の方へ走って行った。

もしかして、何か悪い知らせでも入ったのか?


「入場検査を続けるぞ!」

「はい!」


とりあえず、街に入るための検査は続けてくれるらしい。

そういえば、俺の身分証明って冒険者ギルドので良かったよな……。




「よし! 問題なし!

通っていいぞ。

ようこそ、ダンジョン都市デビルローグへ」

「デビルローグ?」

「この街の名前だ。

魔王のダンジョンがある町だからな。それなりの名前を付けてもらったんだよ」

「なるほど、確かにどこか迫力がありますね」

「だろ? 俺は結構気に入ってんだがな、改名しようって連中が多いんだよな~」

「隊長! 仕事してくださいよ~」

「お、すまんすまん。

それじゃあ、な!」


兵士の人と町の名前で話をするも、まだ街に入れていない人たちがいて他の兵士に文句を言われてしまった。

まあ、とりあえず街に入れたし、このままダンジョンに向かう……わけにはいかないか。


「颯太さん……」

「待った。姿を現すまで、待機」

「分かりました」

「とりあえず、冒険者ギルドに向かいながら宿を探そう」

「「はい」」


街に入って、ダンジョンに向かっていると後ろから誰かがつけてくる感覚になる。

周りの建物を確認するように、誰がつけているのか確認するも分からなかった。

そこで、姿を現すまでほおっておくことにした。


そして、俺たちは一軒の宿屋を見つけ、そこに入っていく。



「いらっしゃい~」

「泊まれますか?」

「お客さん、ダンジョンに行くのかい?」

「はい、そのつもりです」

「なら、一泊ずつ泊まってくれるかい?

ダンジョンに行く客は、帰ってこない時があるからね……」

「は、はい。では、一泊お願いします」


魔王のダンジョンに潜る人は、かなりいるが帰ってこない人もまた多いらしい。

そのため、こういう泊まり方をお願いしているのだろう。


俺たちは、一泊分のお金を払い宿の部屋に移動する。

もちろん、ミアとエレノアと同じ部屋だ。

別々の部屋にする理由がないからな。



二階の角部屋に入ると、すぐに窓の外を覗いた。

すると、二人の男が上を見上げている。

目が合うことはなかったが、どうやらこの二人が、俺たちを付けてきた者たちらしい。


それをミアとエレノアにも話すと、このままこの宿に泊まるか話し合う。


「どうしますか?

このまま、この宿に泊まるのはダメな気がしますが……」

「私も、ミアに賛成。

宿を見上げていたってことは、襲撃を狙っている可能性があるわよ」

「ん~、俺たちに心当たりはないんだが、ここはいったんダンジョンに戻るか?」

「それがいいでしょう」

「無理に、敵を作る必要はないわね」


三人の意見が一致し、すぐに転移魔法でダンジョンパークのコアルームへ移動する。

そして、部屋の監視を虫ゴーレムに任せて、様子を見ることにした。




その日の夜、深夜にもかかわらず部屋の窓を突き破って男が二人飛び込んできた。

それと同時に、扉を蹴り飛ばして中に入ってきた者もいた。


「!! コウジ様! 誰もいません!」

「逃げたか?!」

「まさか?!

宿の出入り口は見張っていましたが、あの三人が出てきた様子は……」

「何か、俺たちの知らないスキルでも使ったんだろう!

すぐに捜索させろ! 奴らの目的は、ダンジョンのはずだからな!」

「ハッ! 了解しました!」


そう返事をすると、窓から飛び込んだ男の一人が、蹴り飛ばされた部屋の入り口から出ていく。

どこかに、連絡をするのだろうか?


「コウジ様、やはり奴らは連絡のために?」

「だろうな。

魔王の考えることだ、我々勇者や人類を苦しめるために裏切り者を呼んだのかもしれない」

「まさか、人族に裏切り者など……」

「分からんぞ?

前も、貴族の中から裏切り者が出ただろう。

魔王は甘い言葉で、協力者を募るからな……」

「教会は、勇者様たちの味方です!」

「分かっている! とにかく教会に戻り次第、他の勇者に連絡をとる。

裏切り者が出たとな!」

「ハッ!」


そう会話を終え、二人も部屋から出ていった。

壊した窓と入り口のドアを直していけよ……。


それにして、教会関係者に勇者?

魔王関係は、面倒くさい相手が出てくるな~……。







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