第230話 発表



Side 五十嵐颯太


「ところで、生まれてきた女の子はハーフエルフになるのか?」


エルフと他種族との間で子供ができた場合、ハーフエルフとなるのか?

それとも、どちらかの種族の子供となるのか?

確か、俺の記憶ではハーフと付く種族はいなかったはず……。


「いえ、生まれてきた子供はエルフになるはずです。

エルフは、他種族との間に子供を作ってもどちらかの親がエルフであれば、エルフが生まれてきます。

エルフとの間でエルフ以外が生まれるのは、ゴブリンとの子供だけですね」

「ゴブリン……」

「ゴブリンの種は、強いですから」


やはり、他種族と子どもを作るかゴブリンよ。

というか、そんなにゴブリンの種は強いのか……。


「とりあえず、河口さんには何か送ろうか?」

「そうですね、私たちの方から送っておきます」

「ああ、よろしくな」


親しい間柄でもないからな、過度な贈り物は向こうも困惑するだろう。

ダンジョン巫女からならば、喜んでくれるはずだ。


それにしても、このダンジョンパークで生活が成り立っている地球人というのも珍しい。

河口さんの過去のブログを見ているが、まさに異世界転生人のような生活だ。

奴隷を購入して、ダンジョンに潜り、様々な依頼をこなし、事件に巻き込まれる。


仲間とのイベントをこなして仲が深まり、奴隷解放、結婚、そして今回の出産。

ある意味、羨ましい生活かもしれないな……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


『ご覧ください! 今、北の大国の国境では戦いが繰り広げられています。

前の年に侵攻した大国が、今別の所から侵攻されているのです。

この町は、先週まで人がいましたが今、この町に住民はいません!

避難したわけではなく、虐殺されたとの発表がありましたが、どこまで信用していいのか分かりません……』


いつも見ている朝のニュースで、北の大国が侵攻を受けているとのニュースを聞いていた。たぶんこれ、ダンジョン関連の話だよな。

どうやら北の大国は、武力による防衛を選んだようだ。


どこまで、抗うことができるのか……。

でも、北の大国でこんな状況ということは、独裁国家の方は大変な事態に陥っているのか?

それとも、対処できているのか……。


「何だか、物騒なことが起きているのねぇ……」

「攻める側から、攻められる側に変わっただけだろう?

それに北の大国は、そんなに弱くはないだろうし対処して見せるだろう。

それにしても、北の大国を攻めているのはどこの誰なんだ?」

「さぁ~、その辺りは報道されないな……」


対処が、後手に回っているよな。

町の住人がいなくなって、初めて動いたって感じだ。

海から、ミサイルで攻撃をしているらしいけど効果がないらしい。


まあ、魔物にミサイル攻撃はあまり効果が無いことが判明した。

ミサイルの、爆発力で攻撃ってところか。

たぶん、決定打になっていないんだろうな……。


それに、障害物が多くてそれが邪魔になっているらしい。

報道も大変だ。

今も、テレビの向こうではミサイル攻撃が、町の建物に命中する映像が流れている。

味方の兵士も、町にいるだろうに……。



『次のニュースです。

ダンジョン企画が、この度発表したところによりますと、アメリカにできるダンジョンパークはフロリダでの開園が決定しました。

このことに、フロリダの州知事は喜んでいて……』


「お、ついに発表したか」

「でも、こんなニュースになるなんて、ダンジョンパークも知名度を上げたね~」

「まあな。

今や、国を挙げてのバックアップがあるからな。

ダンジョンパーク内への出店許可が、かなり来ていて大変なんだ……」

「私たちも、その仕分け作業で駆り出されているのよ~」

「社長や幹部役員まで駆り出すほど、申請が来ているのか……」

「お母さん、お父さん、ご苦労様です」

「ありがとう、麗奈」


そう言って、お母さんは麗奈に抱き着いた。

最近帰りが遅いのは、その辺りが関係しているのかな?


俺の方は、すでにアメリカ用のダンジョンの構築は終わっている。

日本のダンジョンパークのような感じではなく、ダンジョン都市を参考に構築したアメリカ用ダンジョンパークだ。


ダンジョン内の法律とかも、少し変えてある。

もちろん、日本と同じくダンジョン内だけで生活が成り立つようにもしてあるから、ダンジョン内で生活する人がいるかもしれないな……。




▽    ▽    ▽




Side ???


「大佐! 捕らわれていた住人を解放できました!」

「すぐに、後方に送れ!

二、五、十二部隊は、こちらの通りを進んで攻め込ませろ。

三、七部隊は、こちらからだ。急げ!」

「ハッ!」


町中に戦車を投入しての戦闘が行われているのに、一向に全容が把握できていない。

それに敵についてもだ。

上からの命令で防衛を任されたが、敵が確認できなければ対処のしようがない。


前線からの情報は、わけが分からないし……。

なんだ? その豚の化け物とか、小さな醜い化け物とか。

さらには、戦車ほどの大きな狼? さらには一つ目の巨人だと?

何なんだ? この戦場は……。


「大佐! 戦闘機からターゲットの指示を求めています!」

「前線からの映像を送ってやれ!

驚く顔が目に浮かぶ……」

「敵、三時の方向より来ています! その数十五!」

「守備隊に対処させろ!

それと、海の上の部隊にも、ターゲットの位置を教えてやれ!

今度は、外さないだろう!」


我が軍の命中精度が低い……。

こればかりは、何とかならないのだろうか。


「守備隊、対処しきれず!

大きいのが何体か向かってきます!」

「指揮車両、後退!」

「敵、地雷原突破!

こちらに向かってきます!

距離、二十!」

「衝撃に備えろ!!」




俺がそう指示を飛ばした後の記憶がない。


だが、今こうして病院のベッドの上で寝ているのだから、助かったのだろう。

看護師の話では、潰れた指揮車両の中から引きずり出されて人工呼吸をした後、ここに運び込まれたのだとか……。


戦闘は、今も続いているらしい。

化け物どもが、強すぎる気がするが……。

それにしても、体が怠い。


ここの空気が悪いからか?

それとも、戦場に近い病院だからか?

早めに、後方の病院へ送ってもらえるようにお願いしてみよう……。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る