第228話 怖い笑顔
Side ???
「主席! 報告のあった村の全滅が確認されました。
それと、例の遺跡から大量の化け物が周辺の地域へあふれ出ています。
すでに調査団は避難を終えて、軍が対応しておりますが数が多く、山間部ということもあり対処できておりません。
空からの対処をお願いしていますが……」
「私から命令しておく。
それよりも、周辺地域からの避難と封鎖を急げ。
もしかしたら、最終手段を使うかもしれんぞ」
「主席、それは……」
私は、ある書類を机の上に投げつけた。
これは、宇宙からの監視の報告書だ。
先ほど、私の所にも送られてきた書類に大変な事実が記載されていた。
報告に来た男は、書類を手に取り読み始めるとすぐに顔面蒼白になる。
「これは、事実なのですか?」
「監視衛星からの報告だ、間違いないだろう。
もはや事態は、我が国だけで対処できない事態に発展してしまった」
「……」
監視衛星は、遺跡からあふれ出た化け物たちの侵攻を、克明にとらえていた。
遺跡からあふれ出た化け物は、東西へ広がらず南北へと広がり始めていた。
北は、あの大国のはずなのだが、すでに一つの町が犠牲になり始めている。
軍の派遣は、すぐには無理だろう。
今は戦争中、どう決着をつけてこれに対処するのか……。
また南は、独裁国家だ。
国民の生活を犠牲にした軍事国だが、対処はできるのか?
ミサイルに頼っているようだが、対処できると思いたい……。
「……もしかしたら、南の独裁国家がミサイルで大元の遺跡に対して攻撃をするかもしれないな」
「ま、まさか!
そんなことをすれば、どうなるかは分かっているはずです!」
「国連軍が出るまでもなく、我が人民軍が蹂躙するだけだ。
だが、今回は事が事だ。我が国も、見逃す手はずはつけておこう。
すぐに、関係各所に連絡は入れておけ」
「……分かりました。
ですが、国民には何と説明をするつもりですか?」
そう睨みつけられるように、質問されるが私は毅然とした態度で答えた。
「今までと変わらん。
事が済んでから、説明すればいい」
「……失礼します」
男は一礼し、部屋を後にしていった。
独裁国家が、もてばいいが……。
それにしても、厄介な遺跡が発見されたものだ。
……もしかして、この厄介さから埋まっていたのか?
▽ ▽ ▽
Side ???
「大統領! お願いします、軍の派遣を!」
「今はできないといったはずだ!
半島とその周辺地域を、何としてでも手に入れなければ国民に説明がつかないだろうが!」
「それは、安易な考えで進攻した、あなたのせいでしょう!」
その場の空気が張り詰める。
護衛のために控えていた黒服の男たちが、息をのむのが分かった。
「きさま、本気で言っているのか?」
「処分ならいくらでも!
それより! 軍の派遣をお願いします!
すでに、町一つ落ちているのですよ!!」
「……いいだろう、日本へのけん制のために置いてある軍を使え。
それと、貴様の処分はおって知らせる。覚悟しろ……」
「……」
男は一礼すると、私の前からいなくなった。
私にああまで言って、軍の派遣をお願いするとはな。
これは、本当にまずい状況かもしれんな……。
私は、机の上にある受話器を取り、内線に掛ける。
「私だ、すぐに休戦に向けての話し合いを始めてくれ。
国内で問題が起きた」
『了解しました』
「頼むぞ……」
そうやりとりをして、受話器を置く。
町がすでに落ちている。
私の中で、その言葉が繰り返されていた……。
▽ ▽ ▽
Side 五十嵐颯太
九月も半ばが過ぎた今日も、俺はコアルームで仕事をしている。
ダンジョンマスターとは、本当に大変な地位だな……。
「マスター、こちらが魔素の広がりを図にした物です。
このように広がったのには、偏西風の影響があったものと推測されます」
「周辺に広がらずに、南北に広がるとはな……。
で、ダンジョンからあふれ出た魔物たちも南北に広がり始めたと」
空中に表示された映像に、地図が映し出され、そこに魔素の広がる映像と、ダンジョンから排出された魔物の分布映像が映し出された。
だんだんと、南北に広がり、国境を越えて広がる様子が映し出された。
当初の予想では、遺跡ダンジョン周辺で完結するはずだったんだが、今やかなりの勢いで魔素が広がりを見せていた。
「この濃さだと、ダンジョンの下層の魔物が出現してもおかしくないな。
日本への影響は?」
「ありません。
海が魔素の広がりを妨げているようで、影響は確認されていません。
ただ、朝鮮半島の北部がかなり影響を受けているようです」
たしか、独裁国家が北部にあったはず。
南とは休戦状態だったか?
この影響が、どう出るか分からないが、最悪の事態を考えないといけないだろうな。
あそこは、安易にミサイルを撃ちまくるようだし……。
「各国が軍を出して対処したら、魔物を一掃できるかな?」
「それは問題ないと思われます。
魔物に銃火器が効かないということはありませんし、たとえドラゴンでも、傷をつけることはできます」
「傷をつけることか……」
「マスターも分かっているのでしょう?
ドラゴン相手に、銃火器で対抗するには限界があると……」
銃火器では、ドラゴンに致命傷を与えることはできない、か。
まあ、ドラゴンの皮膚はタングステン並みというしな……。
そのうえ、魔法を纏って攻撃の威力を殺すから、致命傷を与えにくい。
止めを刺すには、かなり弱らせてから出ないと倒せない。
そう考えると、銃火器だけでは無理ということだ。
「まあ、ドラゴンが地上に出てくることはまだないだろう?
まだ階層の浅いところにいる魔物が、出てきているだけのようだし……」
「それも時間の問題ですよ、マスター」
「はあ~、こちらの思惑通りに広がらないものだな……」
「だからこそ、面白いのです」
ミアが、ニヤリと笑っている。
何だか、怖いんですけど?!
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