第185話 白い狼
Side 五十嵐颯太
――――トゥルルル、トゥルルル。
俺の携帯が鳴ったため、携帯を取り出し画面を見ると陸斗と表示されている。
確か、狐っ子の試練で出された甘味を聞いてきていたけど、うまくいったんだろうか?
このタイミングで掛けてきたってことは、うまくテイム契約できたのかな?
「はい、颯太です」
『……ん? これに話せばいいのかや?
了解じゃ。コホン、初めまして、陸斗と契約したアニュスと申す。
颯太殿には、陸斗が世話になったのう。
今度会ったら、お礼を言うのじゃ!
……これでよいのか?
……よう、颯太。
アニュスの声はどうだ? かわいいだろ?!』
「陸斗、お前何やってんだよ?」
『今、アニュスたちがいた神社の前だ。
これから、アニュスたちとダンジョンに行ってみようって話になってな?』
「もしかして、テイム魔物が出るダンジョンか?」
『そうそう、アニュスたちの強さが知りたくてな』
「おいおい、愛でるためにテイム契約したんじゃないのか?」
『もちろん愛でるためだが、気になるだろ?
九尾の玉藻さんの力を見たら、気になってしまってな』
「玉藻の?」
そうか、神社に住んでいる玉藻と会ったのか。
なら、このゲート入り口での騒ぎの原因は、玉藻の幻術か……。
相変わらず、妖狐の幻術はすごいな。
『なんだよ颯太、玉藻さんのこと知っているのか?』
「まあな、聖獣の九尾の狐の象徴だからな。
お願いするときに会っただけだが、きれいな狐だったな」
『……なあ、他にどんな聖獣と会ったんだ?』
「他か? 陸斗が興味あるところと言えば、どうだったかな……」
『……絶対、他にもいるだろう。
次に会うときは、必ずはかせてやるからな!』
「はいはい、それじゃあダンジョン、頑張ってな」
『おう!』
そう返事をすると、通話が切れた。
それにしても、テイム契約が成功してよかったな。
狐っ子が欲しいとか、あんなに騒いでいたからな……。
「マスター、何かありましたか?」
「ああ、ミア。
いやな、陸斗が狐っ子とテイム契約を結べたって連絡してきたんだよ」
「それは、おめでとうございます。
無事、赤い糸で結ばれたのですね」
「……そういえば、テイム契約の表現って赤い糸にしたんだったな。
まるで、運命で結ばれた者同士のようにって」
「はい、運命の赤い糸の表現を小説で見たとき、これだと閃きました」
本来のテイム契約は、派手な演出もなく淡々と終わるものなのだが、それでは飽きられてしまうとわざわざ表現方法を変えたのだ。
そして、表現を担当したのがミアというわけだ。
テイムをメインにしたダンジョンパークを造るにあたって、結構細かいところまでこだわっている。
後、テイムできる人数は実は決まっていない。
これには俺の意見が採用され、人数制限が無くなった。
テイムとハーレムは似ているな、と言っただけだったのだが……。
「そういえばマスター、いつの間に携帯が通じるようにしたのですか?」
「ん? どういうこと?」
「いえ、始まりの町以外で携帯電話が使えているようでしたので……」
「ああ、それは陸斗に頼まれてね。
携帯型の特殊なアンテナの魔道具を貸したんだよ」
ダンジョン内のどこででも、携帯が掛けられるようにしてくれとは……。
ダンジョンの仕様を変えるわけにもいかないし、苦肉の策で魔道具を作って陸斗に渡したんだよな。
小型のスーツケースに入っていて、使うときは地面においてスーツケースを開けて広げ、アンテナを立てるようになる。
まあ、よく軍関係の映画で出てくる衛星通信用のアンテナみたいな感じだ。
――――トゥルルル、トゥルルル。
また、着信だ。
携帯の画面を見ると、今度は知らない番号が表示されていた。
……誰だろう?
「はい、五十嵐です」
『あ、クラスメイトの佐々原かな恵です。
凛ちゃんから、番号を教えてもらって掛けています』
「ああ、それでどうした?
何かあったのか?』
これは珍しい、凛に番号聞いてまで俺に掛けてくるとは……。
『実は、お願いがあるんだけど、聞いてくれる?』
「聞いてみないことには返事ができないけど、それでも良ければ……」
『実は、テイムしたいの……』
「は?」
『だから、私たちもテイムしたいのよ!』
「私たち、も?」
『今ここに、恋ちゃんと唯花もいるのよ。
……こんにちは、長田恋です。……星野唯花です。
……それで、五十嵐君に頼めば、テイム支援してくれるって聞いたから』
「聞いたって、誰に?」
『渡辺よ。渡辺が、自慢げに話してくれたわよ。
狐っ子のテイムに、協力してあげたんでしょ?
だから、私たちのテイムにも協力してほしいの』
陸斗のやつ、アニュスとのテイム契約が成功したからってあちこちで自慢しているのか?
「……まあ、協力してもいいけど、何をテイムしたいの?」
『ホント! ありがとう!!
私はねぇ、子犬みたいな小さいオオカミがいいんだけど……。
そういうのいないかな?』
「ん~、それならフェンリルがいいかもしれないな」
「フェンリル? オオカミなの?」
「系統はそうだったと思う。
後、大きさは自在に変えられたはずだよ。
それと、知能が高いから主人の言うことは聞いたはずだから犬みたいな感じかな」
『色は? 全体の色はどんなの?』
「確か、銀色だったと思うけど?」
『……いいわね。
ねぇ、フェンリルはどうかなって。
フェンリルってあの? 神話に出てくる神殺しの狼? 大丈夫なの?
……ねぇ、恋ちゃんが神殺しがどうとかいっているんだけど?』
「ダンジョンパークに、そんな危ない聖獣を置くわけないだろう?
大丈夫だよ、力は抑えてあるはずだから」
『……フェンリルか~』
「北欧神話系がダメなら日本の神話の中にも狼がいるけど?
確か、おいぬ様って言ったっけか」
『おいぬ様? それどんなの?』
「確か、ヤマトタケルが道に迷ったときに現れた白い狼だったとか。
テイムできれば、狼系統は犬のように従順になるし、おいぬ様の毛皮は真っ白でふっわふわのもっふもふなんだよ」
『ふっわふわの、もっふもふ……。
決めたわ! 私たち三人に、そのおいぬ様をお願いします!』
それからの勢いはすごかった。
おいぬ様をテイムするために、協力することを約束されられ、いつテイムするかも決められてしまった。
明後日の日曜日、午前九時に最初のダンジョンパークの入り口ゲートに集合だそうだ。
そこから、テイムできる町を目指すのだとか。
……まあ、時間がかかりすぎるから、ダンジョンマスター権限で協力するか。
紹介した責任もあることだし……。
もちろん、陸斗たちにも責任をとってもらうが……。
確か、おいぬ様も聖獣扱いだったはず。
え~と、どの辺りに神社を造ったっけ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます