第186話 犯罪者



Side ???


「か、体が、動か、ない……」

「クフフ、どうだい? 僕のテイムしたエリちゃんの得意技は!」

「な、何を、するの、よ。

いきな、り、こんな場、所で、からん、できて……」


この二人は、町で見かけてずっと狙っていたんだ。

僕のエリちゃんの得意技を使えば、こうして相手を動けなくすることができる。

後は……、グフフフ。


「ち、近づか、ないで……」

「さあ、まずは身体検査からいこうかな~」

「い、いやああぁぁ……」


僕が、彼女の大きな胸に手を伸ばし、あと少しで触れるといったとき、バチンと大きな音をたてて僕の手を叩いた。

……なぜ? なぜ、僕のエリちゃんが攻撃をするの?


『キキィ!』

「エリちゃん、なぜ邪魔をするんだ?

僕にとって、こんなチャンス滅多にないんだよ?!」

『キィー』

「エリちゃんは、僕の言うことだけを聞いていればいいんだよ!」

『キキ……』


エリちゃんが、すごく落ち込んでいる。

だけど、こんなチャンスはないんだ。

悪いね、エリちゃん。


僕は再び、彼女の大きな胸を揉む!

こ、こんなに柔らかいものなのか……。

女性の胸なんて、男が揉むためにあるといってもいいな……。

グフフフ……。




▽    ▽    ▽




Side エレノア


「あ、あの、ありがとうございました」

「もう大丈夫よ。

しかし、性犯罪、多すぎよね……」

「は、はぁ」


私たちの目の前で、自分の胸を揉みながら光悦な表情をする男が座り込んでいる。

そして、その側には男がエリちゃんと呼んでいた人面木の魔物がいた。


『キキー……』

「あなたも、変な主にテイムされたわねぇ」

『キキ』


じっと、主の醜態を見ているエリちゃん。

このまま、この男が醜態をさらし続ければ、この子も幻滅するのかしら?


「あ、あの、私たちはどうすれば……」

「ああ、ごめんなさい。

あなたたちには、この男をどうするか決めてくれないかしら?」

「どうって言われても……」


そう言って、二人の女性は今も醜態をさらす男を見て表情を曇らせた。


「そういえば、あなたたちは、どこに行こうとしていたの?」

「私たちは、あの山に行こうといていたんです。

山の中腹にいる聖獣と、テイム契約をしたくて……」


私は、彼女たちが指さした山を見る。


「確か、あの山の中腹ってホワイトタイガーがいたわね」

「はい、そのホワイトタイガーとテイム契約したかったんです。

モフモフを、手に入れたくて……」

「わ、私も……」

「それなら、これをあげましょう」


そう言って、私はブローチを二つポケットから取り出し、二人に見せた。

二人は、少し微妙な表情をすると質問してくる。


「これ、何ですか?」

「これは、テイム契約をし易くするものよ。

これを、テイム契約する予定の聖獣の象徴に見せなさい。

そうすれば、分かるわ」

「象徴、ですか?」

「聖獣にはね、その聖獣の象徴になる大人の聖獣がいるの。

そして、その象徴の聖獣がテイム契約をコントロールするのよ。

聖獣との契約に伴う試練とかは、その象徴の気分で難しさが変わると言われているのよ」

「へぇ~」

「そ、それじゃあ、これを付けていけば……」

「試練が優しくなるわね」

「あ、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「いいのよ、これはお詫びみたいなものだしね……」


そう言って、私はいまだ醜態を見せる男を横目で見た。

それに続いて、彼女たちも見てしまう。


「……ああ~、なるほど」

「……あの魔物、かわいそう……」

「そうね~」


じっと、男を見ている人面木の魔物。

その背中には、哀愁すら感じさせる。


「もう行きなさい。

それと、これからも気をつけてね?」

「はい、ありがとうございました」

「お世話になりました」


そう言って、二人は一礼して目的の山を目指していった。

そして、残された私は、醜態をさらす男を見る。


「グフフフ、さあ、今度は下も見せてもらおうかな……」

『キキー……』


私は、人面木の側に行き、声を掛ける。


「大丈夫?」

『キキキー、キキ』

「……そう、テイム解除をするの?」

『キキ……』

「そうね、それがいいかもしれないわね……」

『キ~、キ~』


人面木が、醜態を今もさらす主に声を掛ける。

だが、聞こえていないのか何も答えず、自身の身体を弄るのに忙しい男。


私は、懐からカード型の魔道具を取り出し人面木に貼りつけた。


「いいのね?」

『キッ!』

「分かったわ、【テイム解除】」


そう唱えると、人面木と男の身体が光り、結ばれていた赤い糸がプチンと切れた。

人面木に貼りつけたカードをはがし、声を掛ける。


「テイムは、解除できたわ。

テイムダンジョンに送るわね?」

『キキ』

「次は、もっといい主に出会えることを祈っているわね」

『キキ~』


私は人面木に触ると、転移魔法を使いテイムダンジョンへ送り返した。

一瞬のうちに、その場から消える人面木。

次こそは、いい主にテイムされることを祈りながら……。



「さて、こいつどうしようかしら?」


まだ、幻術が解けなくて服を脱ぎ始めた男。

マスターから、テイムフィールドでの犯罪を聞いてここに来てみたけど、ここのところ特に多い。

どうも、勘違いしてしまっている者たちが多いみたいだ。


テイムした魔物などを使っての犯罪。

罰せられないとでも、本気で思っているのか次から次へと起こっている。

ただ、そのほとんどが性犯罪なのは何故かしら?


日頃からの抑圧が、解放されたから?

そういえば、テイム魔物に欲情した奴もいたわね。

すぐに、そのテイム魔物からテイム解除されて逃走したらしいけど……。


はあ、マスターに私たちのような巫女を増やしてもらおうかしら。

とてもじゃないけど、手が回らないわ……。







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