第177話 後始末



Side 五十嵐颯太


「く、ど、どう、なって……」

「木橋さん、このままあなたたちを警察に引き渡します。

罪名は、FDP法違反です。

確りと、大国という秘書の人や新庄代議士の命を受けたと喋ってください。

そうすれば、罪も軽くなるかもしれませんよ?」

「そ、そんな、こ、できる、わけが……」

「できますよ。

現在、新庄代議士は有権者からの支持率が低い。

ある人からの話では、次の選挙では当選できないだろうとのことです。

ですから、かばう必要もない。まして、利用することすらできない」

「……」

「それに、あんな政治家に従ってあなたに未来はあるんですか?

こんな事件の当事者にされてしまって」

「……」


木橋さんは、顔を逸らし目を瞑った。

痺れた体は動かせず、その場に倒れたままだ。

黒いスーツを着た男たちも同じ。


それからしばらくして、パトカーが何台も到着。

倒れている男たちに手錠をかけ、そのまま連行されていった。


「これから、どうなるんでしょうね……」

「ソフィアは気にすることないよ。

例の政治家は、父さんにお願いしたから、そのままお友達に知らされるだろうし」

「お友達って?」

「凛、うちの父さんと今の総理大臣は……」

「そうか、なるほどね」

「使えるものは、使わないとね」


新庄とかいう政治家もこれで終わりだろう。

与党の重鎮だろうが何だろうが、今の総理はそんな忖度するような人じゃないし、任せて大丈夫だよな……。



「颯太さん、ちょっとよろしいですか?」

「あれ、ミアじゃないか? 何かあったの?」

「ちょっと、問題が発生しました」

「……分かった、案内してくれ」

「こちらです」


突然、俺たちの前に現れたミア。

すぐに何やら真剣な表情のミアを見て、俺たちはミアについて行くことに。

一体、何があったのか……。


「ね、私もついて行っていいのかな?」

「構わないよ凛。ミア、構わないだろ?」

「はい、凛様であれば大丈夫です」

「……何があったんだろう」




▽    ▽    ▽




Side 渡辺陸斗


「すっげぇ~人だったな……」

「でも、とりあえず登録してテイムスキルを収得できたんだからいいじゃん!」

「だな! それじゃあ、行きますか!」

「「おお!」」


開園直後に、テイムギルドに到着したのにもかかわらず、テイムスキル習得するまで一時間もかかってしまった。

だが、こんなことで諦めるわけにいかない!


俺たちの狐っ子のために、がんばるのだ!


「悟、恭太郎、あれだ。

あの馬車に乗って、テイムできる魔物とかがいるフィールドに行けるぞ」

「よし! まだ人がまばらだ。

早速、乗っていこうぜ!」

「「おお!」」


乗合馬車乗り場に行き、テイムできるフィールドまで運んでもらう。

確か、魔物ならダンジョン、それ以外はフィールドにいるってことだったな。

もちろん、俺たちの目指す神社の場所は、颯太から聞き出しているから問題ない。


さあ、待っていてくれ! 俺たちの狐っ子ちゃん!!




▽    ▽    ▽




Side 大国秘書


「ムフフ、もうすぐだ。もうすぐ私のモノになる……」


新庄先生が、例の女を好きにできると妄想しながら笑っている。

総理のいるこの会合で、こんな態度でいられるとは、さすが大物政治家だ。


先生の命令で、あの女を攫えとのことだったが、もっと効率のいい方法はないか考えたところ、入管管理局にいる知り合いを使うことにした。

普段から、出世欲の強いあいつのことだ、政治家の先生からの頼みだと知れば無茶を承知でやってくれるだろう。


罪をでっちあげ、捕まえた後は、こちらに引き渡して先生のおぼえめでたく出世する。

先生ならば、いろんなところに顔が効くからな。

奴を出世させることなど、どうさもないだろう。


「失礼いたします」

「なんだね、君たちは……」

「警察です。こちらに大国徹という人物がいると聞いてきたのです」

「大国? 新城議員の秘書が、確かそんな名前だったな……」

「その方はどちらに?」

「あそこだ、あの端の方に席だ」

「失礼いたします」


そう入り口でのやり取りの後、私の方へ向かってきた。

警察と名乗っていたが、どういうことだ?


「大国徹さんですね?」

「はい、そうですが……」


私の名前を確認した後、その男は懐から紙を一枚取り出した。

ま、まさか!


「FDP法違反の疑いがあります。

署まで、ご同行願えますか?」

「な、何故私が……」

「木橋順二、という男をご存じですね?」

「え、ええ、知っていますが」

「入国管理官でしたが、職権乱用してFDP法違反を犯し逮捕されました。

その木橋が、あなたの指示で動いたと言いましてね?」

「わ、私はそんな指示を出したおぼえなどない!

第一、そのFDP法とは何だ! 聞いたことないぞ!」


クソ、あの男、しくじったのか?!

それに、FDP法何て聞いたことも……。


「あら、FDP法を知らないなんて、あなた、よく今まで与党議員の秘書なんてしていたわね」


山波芹那総理大臣!

な、何故、総理が……。


「FDP法、正式には、ファンタジーダンジョンパーク特別法よ。

ダンジョンパーク内の特別自治権を認める代わりに、それに見合う税金を支払うというもの。

さらに、特別自治権の中には日本の特権階級の権利などに左右されない取り締まりができることまで記載されているわ。

つまり、政治家だろうと総理だろうと、ダンジョンパーク内ではダンジョンパーク内の法が優先されるのよ」


な、なんという法律を成立させやがったんだ!

それでは、ダンジョンパーク内での法律が理不尽なものでも、助からないじゃないか!


「もちろん、救済措置はあるわよ。

それに、ダンジョンパーク内にも住民はいるのよ?

無茶な法を、認めるわけがないでしょ?」


クッ、何故、私の考えていることが分かった!


「そんなに表情に出ていたら、誰でもわかるわよ」

「大国徹、署までご同行してもらえますね?」

「……分かりました」


終わりだ……。

あんな女に関わらなければ、こんなことには……。


いや、そもそも新庄議員に関わったことが、間違っていたのかもしれないな……。







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