第176話 あの手この手
Side 五十嵐颯太
「「おお~」」
そう感心して、俺と凛は父さんに対して拍手を送った。
いつになく、父さんがカッコいい!
あのスケベ政治家の秘書を、こんな形で追い返すとは……。
「颯太さんのお父様、ありがとうございます」
「いやいや、例には及ばないよ。
芹那から注意を受けていたからな、新庄という政治家について、な」
「それじゃあ、政治家の間でもあの政治家のことは有名なの?」
「ああ、俺の言った女癖の悪さは天下一品だそうだ。
政治家になったのも、女を好きしたいためじゃないかって噂されたほどだ」
「……なぜ、そんな政治家が当選しているのですか?」
「さあな、それこそ選挙区の連中が何も考えていないからだろ。
それに、最近じゃあ単独での当選は難しいらしいぞ?」
「……いろんな政治家がいるな~」
俺たちが、父さんの話を聞いて呆れていると、例の秘書が政治家と会って叱られている映像が流れてきた。
秘書に虫ゴーレムを付けていたが、想像通りの行動だな……。
『大国、例のことをチラつかせば逆らわないんじゃなかったのか?』
『逆らわないとは、申していません。
ですが、ダンジョン企画の社長が出て来ては……』
『クソッ、こうなったら手段を選ぶな』
『よろしいのですか?』
『構わん。あの女を攫ってこい!
こうなったら、絶対私のモノにしてやる!』
『……承知しました』
物騒な会話しているな……。
まあ、どんな連中が来ようと、ダンジョン内にいるかぎり俺の力の及ばない所はない。
必ず、ソフィアを守れる!
「どうしたの? 颯太」
「何でもないよ、凛。
バカがバカなことを考えて、バカなことをしそうだったからどう懲らしめようか考えていたんだよ」
「ハァ~、無茶はしないでね?」
「大丈夫、男として終わらすだけだよ」
「・・…まあ、あの政治家は女の敵だからしょうがないか」
「そういうことだな」
「すみません、マスター。私のために……」
「気にするな。
ソフィアを守るのは、俺の義務だからな」
「フフフ」
そう笑って、ソフィアは俺の腕に抱き着いてくる。
ソフィアの行動を見て、凛も同じように俺の腕に抱き着いてきた。
うむ、両手に花で滅茶苦茶嬉しいな~。
周りの男たちの目が怖いけど……。
▽ ▽ ▽
Side 渡辺陸斗
いよいよだ!
悟や恭太郎と一緒に、ギルドカードを使ってゲートを通過すると真っ直ぐ始めの町を目指した。
颯太によれば、この町にあるテイムギルドでテイムスキルを覚えると、テイム契約が対象との間で結べるのだとか。
そのことは、もちろん公式ホームページでも宣伝動画でも紹介している。
だからか、周りのみんなは迷いなくテイムギルドを目指している。
「陸斗、狐っ子の居場所は分かっているのか?」
「ああ、颯太から聞き出している。
従魔階層のフィールドに設置してある神社にいるそうだ」
「神社? もしかしてお狐様か?」
「そういうことだろ?
狐っ子は、聖獣になるらしいからな。
それで、祀られて神社にってことだ」
「……結構考えているな、颯太のやつ」
「あいつは、細かい設定を大事にするからな」
「お、あれがテイムギルドの建物じゃないか?」
「おお~」
待っていろよ、俺の狐っ子!
絶対、モノにして見せるからな!!
▽ ▽ ▽
Side 五十嵐颯太
何か、陸斗の気合の入れ方が尋常ではないのだが……。
でも、あの気合の入れようなら、ちょっとやそっとでは諦めないだろうな。
「どうしたの? 颯太」
「いや、先に入った陸斗の気合が尋常じゃなかったんでな」
「……気合の入れ方が違ったわね」
「ん?」
その時、俺たちの周りに黒いスーツを着た人たちが集まってきた。
そして、ソフィアを中心に囲んでいる。
そのため、ソフィアと俺と凛が孤立する形となった。
そして、一人の男が俺たちの前に出てくる。
「ソフィアさんですね?」
「ええ、そうですが?」
ソフィアのことを確認すると、男は懐から一枚の紙を取りだした。
そして、その紙を広げ俺たちの前へ見せる。
「入国管理法違反の疑いがあります。
我々と一緒に、来てもらえますか?」
「何のことだ?」
「ソフィアさんは、日本に密入国した疑いがあるということですよ。
分かりましたか? 彼氏さん」
ソフィアが、戦闘態勢をとると男たちも同じように構える。
「逆らわない方がいい。
ここにいる人たちは、特別な訓練を受けた者たちだ。
あなたがいくら強くても、敵うことはない」
「はあ、大国秘書の言うことを真に受けて動いたってわけですか? 木橋さん」
「!? 何故私の名前を……」
「何を言っているんですか、その紙に書いてあるじゃないですか」
「……ああ、これか。そういえば、私が署名をしたんだっけ」
「それよりも、密告者は大国って人ですか?」
「それは、守秘義務です」
「で、ソフィアを捕まえて新庄という政治家に渡して、あなたは出世とか?」
「そ、そんな取引はしていない!
私は純粋に、入国管理官として……」
「ダンジョンパーク内には、戸籍の持たないファンタジーの住人がいるんだ。
だから、治外法権とされているはず。
もし法で裁くなら、このダンジョンパークにある法で裁かれるはずですよ?」
「……」
「分かってて、来ているってことはやっぱり大国という秘書の……」
「捕まえろ!」
一斉に、黒スーツの男たちがソフィアに襲いかかってくる。
俺はすぐに懐から、魔道具を取り出しソフィアに渡した。
「ソフィア、使え!」
「はい、颯太さん!」
ソフィアは、その鞭型の魔道具を振り回し黒スーツの男たちを倒していく。
魔道具の名前は、痺れ鞭。
その名の通り、鞭で打たれたものは痺れて動けなくなるのだ。
ソフィアの鞭捌きは凄まじく、あっという間に黒スーツの男たちと木橋という男を痺れさせ、その場に倒してしまった。
「颯太さん、これ、癖になりそうです」
「……」
ソフィアのことは置いておいて、後始末をしないとな……。
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