第169話 設置場所
Side 五十嵐颯太
「颯太さん、ここがうちで用意した開園場所です」
「へぇ~、場所は今あるダンジョンパークと同じような場所ですね……」
「ええ、山の中腹辺りということでしたので、ここを選びました」
今、俺は、ダンジョン企画の社員である西城さんと宮崎に来ていた。
九州に開園する、ダンジョンパークの設置場所だ。
決して建設場所ではない、設置場所なのだ。
「周辺の町や村には、すでに許可を取っているのですか?」
「はい、この辺りの村でも歓迎されています。
ただ、建設会社からは、かなり睨まれているようですが……」
「ダンジョンパークは、設置するだけですからね。
建設する必要がないので、建設会社からは恨まれてもしょうがないですよ」
本当なら、道の整備というところを願いしてもいいのだが、入り口付近もダンジョンに含まれるためこちらでしてしまうため、頼むこともなくなる。
そのため、どうしても建設会社を頼らないダンジョンパークは恨まれる傾向にあるようだ。
ダンジョン内も、必要ないからな……。
「それで、もう設置してもいいんですか?」
「いえ、開園予定日の五日前に設置してほしいと言われています」
「ということは、開園日が七月の二十五日だから二十日に設置してほしいというわけですか」
「はい、どうでしょうか?」
「大丈夫ですよ。
今日が十二日、この場所にマーカーを設置しましたから、二十日にはダンジョンパークの設置ができています」
「そうですか、良かった……。
では、知事に挨拶して帰りましょう」
「分かりました」
今の宮崎県知事って、確か若い人だって母さんが言ってたな。
将来は、国政にうってでるとか何とか……。
車で移動して、県庁を訪ねるとすぐに知事室へと通される。
そして、そこには若い女性の県知事がいた。
「どうも、ダンジョン企画さん。
初めまして、宮崎知事の鹿島綾香です」
「初めまして、ダンジョン企画の西城です。
こちらは、助手の五十嵐君です」
「初めまして、五十嵐です」
ここでは、俺のことはダンジョン設置者とは紹介しない。
あくまで、西城さんの助手ということにしておいた。
まだ高校生だし、見習い的なことでいいのだ。
「どうでしたか? ダンジョンパークの予定地は。
いまだ建設にとりかかってないので、気に入らなかったのかと心配していたのですが……」
「いえ、こちらの条件をすべて叶えていただいた場所で安心しました。
すぐにでも開園に向けて建設する予定です」
「では、開園時期はいつ頃になるでしょうか?」
心配している表情だな。
無理もない、通常のテーマパーク建設には時間がかかる。
だが、ダンジョンパークは設置するだけでいいので、一瞬だ。
それに、ダンジョンパークの中は、設置しなくても弄ることができるからな。
「いえ、開園は予定通り今月の二十五日になります」
「そんな、いまだ手付かずなのに開園するだなんて……」
「ファンタジーダンジョンパークは、魔法が使える場所です。
つまり、魔法で何とかなるのですよ」
「は、はぁ」
あの表情は、半信半疑ってところか?
でも実際、ダンジョンパークは魔法を売りにしているところもある。
使えてもおかしくはなしか? いや、それでも時間が……。
って、ところだろう。
知事に挨拶した後は、帰るだけ。
しかも、高速を使わずダンジョン設置場所で、ダンジョンの一部を設置し、ダンジョン経由で帰ってくるのだ。
車で、入って出れば最初のダンジョンパークの出口である。
「いや、コレで高速代は浮くけど、何故か納得はいかないな~」
「まあまあ、早く帰れたんですからいいじゃないですか」
「……まあ、そうだけど、ね?」
「ああ、そこで止めてください」
俺は実家の側で、西城さんの運転する車を降りた。
「それじゃあ、俺は会社に帰るから」
「はい、ありがとうございました。送ってくれて」
「それじゃあ」
そう言って、西城さんの車は発進していく。
俺はそれを少し見送ると、家に帰っていった……。
▽ ▽ ▽
Side 五十嵐颯太
さて、第二ダンジョンパークを少し説明しよう。
第二ダンジョンパークは、最初のダンジョンパークと同じ十階層に分かれている。
これは、深さよりも広さを重視したためで、そこは最初と同じだ。
第一階層は、ダンジョンパークの玄関口となる始めの町が設置されて、そこから北へ行くと中央の町ではなく従魔の町へ到着する。
ここが、最初のダンジョンパークと違うところだろう。
今回は従魔との絆をメインにしているため、人が住む町や村はほぼこの二つだけだ。
後は、従魔を預かるための施設や売買するための施設に、引き取るための施設となっている。
また、最初のダンジョンパークとは、始めの町を東に行けば、転移の街道を通り、最初のダンジョンパークの中央の町と繋がっている。
もちろん、連れ歩くことはできないが見せることは可能で、そこは新しい魔道具の成果とだけ今は言っておこう。
さて、今回テイムをメインにするにあたって、先輩テイマーを用意した。
十人ほどではあるが、始めの町に住んでもらっている。
また、各施設にもアドバイザーなどを配置し、安全に従魔と過ごせるように配慮した。
それと、もし従魔が人を襲うようなことがあれば、ダンジョンマスターの権限で対処することになる。
また、ダンジョンの外へは出せないようにシステムを構築しておいた。
もし、ダンジョンの外へ従魔を出そうとすると警告ののち従魔は預かり施設へと強制転移される。
それと、テイムギルドでは、テイマーになるための講習を受けることも義務付けた。
まさに免許制度みたいになってしまったが……。
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